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  • リアルな「箱の中」に引きこもる箱入り娘と王子のボーイミーツガール物語|『引きこもり箱入令嬢の結婚』

    2022年04月03日
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    中野亜希:講談社コミックプラス
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    ヒロインは引きこもり。どこに? 箱(物理)に!

    「箱入り娘」とは「お嬢様の一類型で、極力他人に接触させずに(家の中などで)育てられた娘。または深窓の令嬢」のこと。大事に育てられ、世間ずれしていないお嬢様のことですね。一方、本作『引きこもり箱入令嬢の結婚』のヒロインは「箱(物理)の中の部屋」に引きこもる、いわば箱入ガチ勢。そんな箱入令嬢と、好奇心旺盛な王子様が出会ったら……?

    17歳を迎える貴族たちが集まる成人会。華やかなパーティ会場に置かれた、場と不釣り合いな謎の木箱。誰もが見て見ぬフリ状態のその箱に、王国の第2王子・サイフォンは興味津々。揺さぶってみると、箱の中から人の声が!

    人が入っているなんて想定外……! 聞けば、箱の中の人も新成人。対人恐怖症のため、箱の姿でこのパーティに出席していると言います。相手が箱(!)でも、すぐに非礼を詫びることのできるサイフォン王子が素敵です。紳士だなあ。

    気を取り直して、中の人に食事を勧めるサイフォン王子。しかし、中の人は箱から出てきません。

    箱の上に料理の皿を置くだけで、中の人は食事ができるようなのです。さらに、パーティに仕掛けられたある罠を箱の中にいながら見抜いてみせます。どうなってんだ、この箱……! 好奇心旺盛なサイフォン王子は、もう社交そっちのけで箱に夢中。

    中の人は、ドリップス宰相の娘・モカ。彼女は「これまで一度も公の場に出てこない箱入り娘」として噂の存在でした。そして、モカは箱の中から、外で起きていることが見られるようです。自分の話している相手がサイフォン王子であることも。

    実は、この世界に生きるものはそれぞれに不思議な力を持っていて、モカにとってはこの「箱」そのものが魔法。
    モカは、あれこれ知りたがる王子を、箱の中に招きます。

    箱の中は、その外観からは想像できない広さで快適そう!モカもきちんとドレスを着ています。ただし首から上は……。

    よりによって「馬」! 他にもっとあるでしょ、と私だけじゃなくサイフォン王子も思ったはず。でも、本当に恥ずかしそうな様子のモカに「気にするな」と言うサイフォン王子がカッコいい!! イケてる顔面に乗じて好奇心を爆発させ、グイグイいくのかな……と思いきや、距離感を大事にしてくれる。対人恐怖症だというモカに安易に「顔を見せろ」なんて言わない。これは好きになるわ……。

    「ありがとう、楽しかった」
    王子が帰った後、何度もその言葉を反芻してキュンキュンするモカ。モカの箱は、起きた出来事をあとから再生する機能をはじめ、わりと何でもできるのです。サイフォン王子が知ったら、もっと長居したかもしれません。それにしても、箱→馬からの恋する乙女の顔がかわいい! 早くまた、王子に会えるといいね!

     

    箱入令嬢、「箱」を獲得する

    モカは子どもの頃から大人びた賢い子でした。しかし、他人はちょっと苦手。そんな彼女に両親は、1冊の本を与えます。

    箱の中の世界への憧れを募らせる彼女に転機が訪れます。7歳を迎えた子供が魔法を授かる「魔性式」です。魔性式にしぶしぶ出席したモカは、ある理由から平民と勘違いされ、嫌がらせを受けてしまいます。

    知らない人から受けるひどい仕打ち。モカの人嫌いが加速します。そのせいか、彼女が目覚めさせた魔法の特性は

    なんと、箱!
    「箱」って……。聞いたこともない属性で頭がいっぱいのモカに、またしてもあの子が絡んできます。

    「自分の授かった魔法の属性を気軽に人に話してはいけない」。その教えを守り口を閉ざすモカを、彼女はさらに攻撃します。
    そこに助けに来てくれたのは、サイフォン王子!

    モカが「箱」の属性を得た転機の日。この日はサイフォン王子との最初の出会いの日でもあるのでした。

     

    最初のページに戻りたくなる!

    王子と箱のボーイミーツガール。それだけでも十分興味をそそります。でも、こんなに好奇心の強い陽キャのサイフォン王子と、人嫌いで引っ込み思案のモカが恋に落ちたりするんだろうか。少し不安にもなります。
    しかし読み進めればわかります。モカはただ受け身な引きこもりじゃないのです……! 1巻ラストまで読んだ私は、思わず最初のページに戻って読み直し「そうか、確かに……」とうなりました。この静かな急展開は、是非コミックスで!

    (レビュアー:中野亜希)


    ※本記事は、講談社コミックプラスに2022年3月25日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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