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  • 小学生と人気絵本作家の感動作『二平方メートルの世界で』が「親子で読んでほしい絵本大賞」受賞

    2022年03月18日
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    ほんのひきだし編集部 猪越
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    2022年3月15日(火)、JPIC読書アドバイザークラブ(略称:JRAC ジャラック)は、第3回「親子で読んでほしい絵本大賞」の贈賞式を開催しました。

    「親子で読んでほしい絵本大賞」は、司書、読みきかせボランティアなど、子どもに絵本を手渡す経験が豊富なJRAC会員が、過去1年間の新刊絵本400冊の中から、「親子で読んでほしい絵本」を投票で選考し、表彰するもの。

    第3回大賞には、『二平方メートルの世界で』が選ばれました。

    二平方メートルの世界で
    著者:前田海音 はたこうしろう
    発売日:2021年04月
    発行所:小学館
    価格:1,650円(税込)
    ISBNコード:9784097251040

    札幌に暮らす小学3年生の主人公は、生まれたときから脳神経の病気で入退院を繰り返している。入院するとしばらくベッドの上での生活となる。お母さんは一緒にいてくれるが、放射線を使った治療のときは、ガラスを隔てて別々になる。家ではお兄ちゃんが鍵っ子になる。申し訳ない気持ちだ。どうして自分だけが病気なんだろう……。そんなある日、海音ちゃんは、病室で大発見をする。わたしはひとりぼっちじゃなかった!

    〈小学館 公式サイト『二平方メートルの世界で』より〉

    『二平方メートルの世界で』は、第11回「子どもノンフィクション文学賞」(北九州市主催)小学生の部大賞を満場一致で受賞した前田海音(まえだ みおん)さんの作文に、絵本作家のはたこうしろうさんが絵をつけた作品です。

    贈賞式では、受賞者である現在小学5年生の前田海音さん、はたこうしろうさんが登壇。本作の編集を務めた小沢一郎さんを聞き手に、創作の過程や受賞作への思いを語りました。

    はたさんが札幌に住む前田さんを訪ね、前田さん本人はもちろん、家族や学校、病院の先生などに取材をし、さまざまな風景を目に焼き付けて描かれたという本作。はたさんの絵を見て、前田さんは「はたさんは私の入院生活を見たことがないのに、私の心の中まですごくきれいに描かれている」と驚いたといいます。

    また、本作を読み返してみて絵本の中に季節の移り変わりがあることに思い至り、「命をつなぐことの美しさ、季節の流れていくはかなさが鮮明に描かれている。病気というどうすることもできない現実を理不尽だなと思うこともあるけれど、流れていく季節が救ってくれることに気がついた」そうです。

    そんな小学5年生の、洞察力の高い感想を聞いたはたさんからは、「的確に感じ取ってくれてうれしい。季節を描くのは自分にとってのテーマ。新緑を見たときに、美しさと命のエネルギーを感じるように、季節のめぐる様子がまた命の希望へと変わっていくのではないかと思う。本作も冬のシーンから始まるので、最後は初夏で終わるように季節をめぐらせている。そのことに気づいてくれたことに感動している」と喜びのコメントがありました。

     

    受賞者コメント

    前田海音さん「私が二平方メートルの世界で過ごした、名前も知らない誰かの言葉から勇気をもらったように、みんな誰かを支えているのだと思います。思いが人と人をつないで、つながることでまた思いが広がっていくということを、この絵本ができたことで学びました。

    たくさんのお力をくださった小学館の方々や、この絵本を選んだくださった方々に深く感謝します。また私を支えてくれる家族、私にメッセージを託してくれた、病とともに生きる仲間たちにも感謝を伝えたいです」

    はたこうしろうさん「この本に出合えたことが本当にうれしい。自分もいろいろなことを考えさせてもらいました。たくさんの人が同じように発見をされると思うので、多くの人に読んでもらいたいと思います」

    なお、全国の書店にて2022年4月下旬以降に受賞作のフェアが実施される予定です。また、入賞12作品は、全国で読書推進活動を展開するJRAC会員により、今後おはなし会などで紹介されます。

     

    第3回「親子で読んでほしい絵本大賞」入賞作品

    大賞:『二平方メートルの世界で』(前田海音/文、はたこうしろう/絵、小学館)
    2位:『ぼくは川のように話す』(ジョーダン・スコット/文、シドニー・スミス/絵、原田勝/訳、偕成社)
    3位:『お月さんのシャーベット』(ペク・ヒナ/作、長谷川義史/訳、ブロンズ新社)
    4位:『まどのむこうの くだもの なあに?』(荒井真紀/作、福音館書店)
    5位:『うちのねこ』(高橋和枝/作、アリス館)
    6位:『とっています』(市原淳/作、世界文化社)
    7位:『ねたふりゆうちゃん』(阿部結/作、白泉社)
    8位:『パパとタイガの とびっきりキャンプ!』(セバスチャン・ブラウン/作、聞かせ屋。けいたろう/訳、教育画劇)
    9位:『ごちそう たべに きてください』(茂市久美子/作、しもかわらゆみ/絵、講談社)
    10位:『おじいちゃんのたびじたく』(ソ・ヨン/文・絵、斎藤真理子/訳、小峰書店)
    11位:『梨の子ペリーナ』(イタロ・カルヴィーノ/再話、関口英子/訳、酒井駒子/絵、BL出版)
    11位:『うごきません。』(大塚健太/作、柴田ケイコ/絵、パイ インターナショナル)

     

    第3回「親子で読んでほしい絵本大賞」概要

    【選考方法】
    JRAC会員50名からなる選考委員が、季刊誌「この本読んで!」2021年春号から冬号で紹介された400冊の新刊絵本(2020年9月から2021年8月までに刊行された絵本)の中から入賞作品12冊を選出。その12冊をJRAC会員が読んで、「親子で読んでほしい絵本」1位から3位を選んで投票。1年をかけて選考した投票結果を集計し大賞作品を決定。今回、最終選考の投票には103名の会員が参加。

    投票結果、選考理由などは、「この本読んで!」(2022年春号)に掲載。

    この本読んで! 82号(2022年春号)
    発売日:2022年03月
    発行所:出版文化産業振興財団
    価格:1,100円(税込)
    ISBNコード:9784802155458


    【JPIC読書アドバイザークラブ(JRAC)とは】
    一般財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)では、読書活動を推進するために、1993年より「JPIC読書アドバイザー養成講座」を開設。JPIC読書アドバイザークラブ(JRAC)は、この講座の修了生有志による自主運営組織。会員は全国に約600名が在籍し、図書館、出版社、地域のおはなし会などで読書推進活動を展開している。

     

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