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  • シリーズ化切望!現役弁護士が手掛ける本格リーガルミステリー|田村和大『正義の段階 ヤメ検弁護士・一坊寺陽子』

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    2022年03月09日
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    細谷正充:「小説推理」BOOK REVIEW
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    気鋭のミステリー作家にして、現役弁護士の田村和大が、本領を発揮した。

    ヤメ検弁護士・一坊寺陽子が、16年前に決着した事件の闇に踏み込んでいく。


    警察小説『筋読み』で、第16回「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞を受賞してデビューした田村和大が、いよいよ本領を発揮した。2021年の『消えた依頼人』、そして最新刊となる本書が、弁護士を主人公にしたリーガル・ミステリーなのだ。ご存じの人もいると思うが、作者は現役の弁護士でもある。だから自分の領域を舞台にした作品といっていい。本領を発揮したと書いた所以は、ここにある。

    検察官を辞め、郷里の福岡で法律事務所を開いてから12年。いわゆるヤメ検弁護士の一坊寺陽子は、司法研修所で同期だった桐生弁護士から、ふたつの依頼を受ける。ひとつは、桐生が懲戒請求を受けた事件だ。懲戒請求書の理由の欄には、「桐生晴仁が佐灯昇を殺した」と書かれていた。どうやら16年前に、引き籠りだった昇が両親を殺した件が関係しているらしい。桐生は昇の従兄弟であり、弁護を担当。一方の陽子は、検事として公判を担当していた。

    もうひとつの依頼は、17歳の少女が自分を虐待していた父親を殺した事件だ。桐生が担当しているが、懲戒請求の件でどうなるか分からないので、弁護を共同受諾してほしいというのである。桐生のペースに巻き込まれ、これを引き受けた陽子だが、事態は予想外の方向に転がっていく。

    現在の事件の真相は、早い段階で判明する。物語のメインは16年前の殺人事件だ。しかし後半になって、現在の事件が、思いもよらぬ形で活用される。陽子の過去も同様だ。登場人物にしろエピソードにしろ、本書には無駄がない。練りに練ったストーリーが楽しめるのである。

    しかも、リーダビリティが抜群だ。桐生の不可解な態度や、事務所に仕掛けられた盗聴器などで、読者の興味を強く惹きながら、陽子の調査を丹念に綴っていく。情報をくれた埼玉県警のOBを雇い、関係者を当たるうちに、意外な事実が次々と露わになる。桐生が陽子に依頼した理由など、適度にサプライズを入れながら、二段構えの大きな驚きまで導く手際が素晴らしい。

    ところで弁護士としては有能な陽子だが、私生活ではヒモ同然の市川史郎と、10年以上も同棲生活をしている。なんというダメンズ好きと思ったが、読み進めるうちに、単純にそういえない彼女の心が見えてくる。主人公のキャラクターの立て方も達者なものだ。だから、つい苦笑してしまうラストの後、陽子がどうするのか知りたい。それも含めて、シリーズ化希望である。

    正義の段階 ヤメ検弁護士・一坊寺陽子
    著者:田村和大
    発売日:2022年02月
    発行所:双葉社
    価格:1,925円(税込)
    ISBNコード:9784575244915

    「小説推理」(双葉社)2022年4月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載




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