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  • 猟奇的な連続殺人事件の真相を追え!民間の科捜研を舞台にした新シリーズ第1弾|中山七里『鑑定人 氏家京太郎』

    2022年02月03日
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    細谷正充:「小説推理」BOOK REVIEW
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    猟奇連続殺人事件の犯人が、3件目の犯行を否定した。氏家京太郎は、古巣の科捜研と対立しながら、事実を追う。

    中山七里、待望の新シリーズ第1弾だ。


    中山七里ファンにとって2020年は、お祭りのような年であった。なにしろ新刊の12ヶ月連続刊行という、とんでもなく嬉しいことを実行してくれたからだ。デビュー以来、怒濤の勢いで作品を発表している作者だが、それにしても凄いチャレンジである。さらに以後も、順調なペースで秀作を量産。そんな作者が、新シリーズの第1弾を上梓した。これは期待せずにはいられない。

    文京区湯島にある〈氏家鑑定センター〉は、民間の科学捜査鑑定所だ。所長の氏家京太郎は、警視庁科学捜査研究所(科捜研)のOBである。しかし古巣との関係は悪い。特に、科捜研の黒木康平副主幹とは、同僚時代の因縁があり、犬猿の仲である。そんな氏家が、旧知の吉田士童弁護士からの依頼を受けた。吉田弁護士は、3人の女性を殺し、死姦した後、子宮を奪取した猟奇連続殺人犯として起訴された、那智貴彦の弁護をしている。そして那智は、3人目の犯行は自分ではないというのだ。さっそく事件の試料の再鑑定をしようとする氏家だが、その先には思いもかけない騒動と真相が待ち構えていた。

    3人目の犯行は那智か、それとも別人か。科捜研に事件の資料が何ひとつなく、それどころか鑑定書も一切作成されていないことが判明した時点で、読者の興味が一気に増加する。さらに意外な事実が明らかになったと思ったら、畳みかけるように〈氏家鑑定センター〉が狙われる。京太郎と黒木だけでなく、吉田弁護士と事件を担当している谷端検事も過去の因縁があり、それがストーリーを盛り上げる。こうした物語の組み立ての巧さは、さすがというしかない。次がどうなるか気になって、どんどん読み進めてしまうのだ。

    また、事実の追究にこだわる一方、部下たちを鼓舞激励して育てようとする京太郎が魅力的。DNA鑑定担当の橘奈翔子を始め、部下たちも個性的なようだ。今後の活躍も楽しみである。

    そして終盤の法廷場面を経て、驚くべき真実が暴かれる。作者が中山七里だ。サプライズがあるのは当然と思っていたが、それでもビックリした。ミステリーの面白さも抜群なのである。

    また、中山作品は同一の世界を舞台にしていることで知られているが、本書では『逃亡刑事』の主人公の高頭冴子警部や、「ヒポクラテスの誓い」シリーズの天才法医学者・光崎藤次郎教授などが登場。こうした愛読者向けのサービスも、充実しているのだ。

    鑑定人氏家京太郎
    著者:中山七里
    発売日:2022年01月
    発行所:双葉社
    価格:1,760円(税込)
    ISBNコード:9784575244830

    「小説推理」(双葉社)2022年3月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載




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