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  • 【Vol.9:小佐野彈】編集者が注目!2022はこの作家を読んでほしい!

    2021年12月31日
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    ほんのひきだし編集部
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    2020年から続く新型コロナウイルスの流行で、人々の生活や価値観が大きく変化した2021年。一方で、本を開くだけで無限に想像力と世界が広がる「文芸書」が、身近なエンターテイメントとして再認識される年でもありました。

    ほんのひきだしでは「編集者が注目!2022はこの作家を読んでほしい!」と題して、各出版社の文芸編集者の皆さんから【いま注目の作家】をご紹介いただきます。

     

    新潮社編集者 藤本あさみさんの注目作家は「小佐野彈」

    小佐野彈(おさの・だん)
    1983年世田谷生まれ。慶応義塾大学卒。有名企業の創業者一族に生まれ、大学院進学後に台湾で起業、現在は台湾台北市在住。2017年「無垢な日本で」で第60回短歌研究新人賞受賞。2019年『メタリック』で第63回現代歌人協会賞、第12回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を受賞した。オープンリーゲイとして精力的に創作活動を続ける。他の著書に、小説作品『車軸』、『ホスト万葉集』(俵万智、野口あや子との共編著)など。

     

    カテゴライズしないことで見えるもの

    小佐野彈さんと初めてお会いしたのは、現代歌人協会賞を受賞した第一歌集『メタリック』が刊行された直後。礼儀正しくも親しみやすい口調で、初対面の人ともすぐに打ち解ける小佐野さんは、「歌人」というよりも「デキる経営者」という印象でした。

    しかし後日、『メタリック』を手に取って、小佐野さんの率直な歌に圧倒されました。身を焦がすような恋情も、絶対的な孤独も、濃密な感情が三十一文字の中に閉じ込められている――。短歌といえば中学時代の国語で止まっていた私が、短歌の持つ自由さ、紡がれる言葉の鮮やかさに、すっかり心を奪われてしまったのです。

    歌集でも小説でもなく、もっと自由で自然な形で、小佐野彈という才能を味わってもらうにはどうしたらいいか。小佐野さんと話し合ってたどり着いたのが、『伊勢物語』に代表される、現実と虚構、散文と韻文を自在に取り入れることのできる「歌物語」でした。

    『伊勢物語』の主人公といわれる在原業平よろしく、超セレブである小佐野さん自身の恋愛遍歴を描いてもらうはずだった原稿は、書き進めるうちに、表現のジャンルを超え、男と女、恋愛と友情の垣根を超え、一人の多感な少年が自分と向き合い、成長していく姿を追う物語へと変化していきました。

    「万葉集」の魅力を熱く語った流れで、今ハマっているBL漫画を教えてくれたり、台湾の事業が伸びているという話題に続けて、「でも、道行く男の子のレベルは、台湾より日本の方が全然高い」と笑う……。

    『僕は失くした恋しか歌えない』は、カテゴライズを否定して天真爛漫に生きる小佐野さんの魅力そのものを体現した作品です。同時発売の第二歌集『銀河一族』(短歌研究社刊)とのギャップを愉しむのもおススメです。

    (新潮社 出版部 藤本あさみ)

    僕は失くした恋しか歌えない
    著者:小佐野彈
    発売日:2021年11月
    発行所:新潮社
    価格:1,925円(税込)
    ISBNコード:9784103543114

    銀河一族
    著者:小佐野彈
    発売日:2021年11月
    発行所:短歌研究社
    価格:2,200円(税込)
    ISBNコード:9784862726933

     

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