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    人気声優・池澤春菜さんが語るSFの魅力「SFだから届く、物語がある」

    2016年07月04日
    楽しむ
    日販 ほんのひきだし編集部 「新刊展望」担当
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    SFは目的でなく、“自分が書きたいもの”を届けるための手段

    ―SFというと、ハードルが高いと感じる読者も多いと思います。

    池澤:SFを読まない方に「どうして?」と聞くと、「難しいし、理科や科学はわからないから」とおっしゃることが多いです。でも、例えば江戸時代の話を読んでいて、当時の文化がすべてわかるわけではない。『大草原の小さな家』に出てくるバターミルクが何かわからなくても楽しく読める。同じようにSFもわからないところがあっても、異文化の中でがんばっている人たちがいる。そう捉えると、舞台がアメリカ大西部でもアルファ・ケンタウリでも、そんなに変わらない気がするんです。

    SFは、フィクションの、さらに枷をはずしてくれるもの。普通にフィクションを書くとすると、時間と場所は超えられます。でもそれをSFにしたら物理法則すらも全部取っ払える。違う星の話にしてもいいし、地球外生物も出せる。時間の枠も一気に何十億年、何百億年と飛び超えられます。距離もそうですよね。「この中でお話を作ろう」という箱庭の枠が一気に広がる。自由度が大きいんです。

    ―そのあたりは、まさにSFだからこそできることですね。

    池澤:SFは目的ではなくて、何かを書くための手段だと思うんです。自分が書きたいものがここにある。通常のアプローチの仕方だと届かないけれど、SFだったらさまざまな行き方で届けることができます。

    ―手段ではなく、何を届けるかが大事なのはどんなジャンルのフィクションにも共通しますね。

    池澤:そうなんです。サイエンス・フィクションでもあり、ステキなフィクションでもある。なので、食わず嫌いをせずに、ぜひ読んでいただきたいなと思います。

    ―とはいえエッセイで紹介されているだけでも、読むべき、読みたい作品が目白押しです。初心者はどこから手を付ければいいか、アドバイスをいただけますか。

    池澤:読書って、ピアノと同じで練習をしないと弾けない、読めないものだと思います。ピアノを弾けない人がいきなり「エリーゼのために」を弾けと言われても、手は動かないし、譜面も読めない。ピアノの練習はつらい、嫌いとなってしまう。でも弾ける曲から少しずつ練習していくと、一歩ずつ楽しみながら進んでいける。本もいきなり難しいものではなく、自分が読みたい、読みやすいものからでいいと思うんです。

    私はいつも、読書の入口として児童文学をお薦めしています。児童文学は、子ども向けに簡単に書かれたものではなくて、子どもでも大人でも同じようにわかるように書かれたもの。そこから入っていって、少しずついろいろなものにチャレンジしていくと、本を読むスキルが磨かれていきます。同じようにSFも、最初から難解なハードSFではなく、SFが手段になっているものを選んでもらうといいのでは。

    今はアニメーションやゲームなどにもSF的な要素が当たり前のように入っています。意外と何にでも馴染んで溶け込んでしまうので、そんなにSF色が強くないものから徐々に手にしてもらうと、違和感なく楽しめるのではないでしょうか。

     

    本はいくら読んでも足りない

    ―お父様である池澤夏樹さんの本棚でSFと出合われたとか。

    池澤:父は、『やがてヒトに与えられた時が満ちて…』といったSF作品も書いていますし、意外と好きだったみたいです。いまの父はSFだけ読むわけにはいかないので、逆に「最近何かおもしろい本ある?」と聞かれます。お互い読まないジャンルの本を薦めあっていますね。

    やがてヒトに与えられた時が満ちて…
    著者:池澤夏樹 普後均
    発売日:2007年11月
    発行所:角川書店
    価格:817円(税込)
    ISBNコード:9784043820016

    ―池澤さんは一年に300冊以上の本を読まれるそうですね。

    池澤:最初は母が読み聞かせをしてくれていたのですが、あっという間に自分で読みはじめて。そこからはもう完全に活字の虜、いくら読んでも足りないんです。小学生のときは一日3、4冊図書館で借りて、夜までに読み切ってしまう。家には父の書庫もあるし、いただいた献本もたくさん廊下に積んである。大人向けの本ばかりでしたが、私はそこから抜いて読んで、良いなと思ったら自分の本棚に入れる。今考えると、本読みにはとても贅沢な環境でしたね。

    ―まさに小さな新刊書店ですね。

    池澤:そうですね。発売になる前に家にある(笑)。本屋さんには、ふらりと行って、手に取る楽しみがあります。平積みになっている本やフェアでその本屋さんの個性が見えたりと、「本が好きな人たち」の情熱が伝わってきます。

    本屋さんに行くこと自体が経験としてもっと楽しくなるように、今後は読書へのいろいろなアプローチの仕方なども提案していきたいですね。

    (2016.5.9)


    池澤春菜さんプロフィール

    池澤春菜 Haruna Ikezawa
    ギリシャ生まれ。声優、歌手、エッセイスト。声優として「ケロロ軍曹」「とっとこハム太郎」など数多くの作品に出演。また「本の雑誌」「SFマガジン」「ロボコンマガジン」に連載を持つなど、文筆家としても活躍中。本を年間300冊以上読破する活字中毒者でもある。日本SF作家クラブ会員。父は作家・池澤夏樹、祖父は作家・福永武彦。


    (「新刊展望」2016年7月号より転載)

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