• fluct

  • 高野秀行×宮田珠己のゆるくも鋭い爆笑対談「ブータンと、うりゃうりゃの旅」

    2016年06月23日
    楽しむ
    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当
    Pocket

    どこで読んでも笑えるエッセイ『日本全国津々うりゃうりゃ』

    高野:では、宮田さんの『日本全国津々うりゃうりゃ』の話を。こういうおバカ旅エッセイは久しぶりじゃないですか。

    日本全国津々うりゃうりゃ
    著者:宮田珠己
    発売日:2016年06月
    発行所:幻冬舎
    価格:759円(税込)
    ISBNコード:9784344424821

    諸君! 明日のことは旅行してから考えよう。日光東照宮では《眠り猫》よりも幻の《クラゲ》探しに精を出し、しまなみ海道では大潮の日に山のように盛りあがる海を求め船に乗る。名古屋で歴史ある珍妙スポットを続々と発見したかと思えば、なんと自宅の庭一周の旅まで! どこに行っても寄り道と余談ばかり。これぞ旅の醍醐味! 爆笑の日本めぐり。

    幻冬舎『日本全国津々うりゃうりゃ』より)

    宮田:そうですね。

    高野:まあずっとおバカと言えばおバカでしたけど、ここまで「もういいや」と投げてる感じは久しぶりだと思いました。

    宮田:最近はわりとテーマをぐっと追って書いてたんですけど、そろそろそのスタイルにも飽きてきて。

    高野:テーマを追うというのは、ジェットコースターとか大仏とか?

    宮田:そういうのにぐーっとのめり込むんじゃなくて、ふわふわっと楽に旅行したいなと思って。根を詰めるのにちょっと疲れちゃってさ。

    高野:根を詰めてたんだ(笑)。

    宮田:それで、ちっちゃなネタで、なんとなく気になるけどほったらかしていた、みたいなところに一つ一つ行ってみようと思って。本で読んでずっと気になっていた「日光東照宮の中にクラゲがいる」とか。

    高野:かなりレアなネタですよね。誰も知らないし、そんなの。

    宮田:本にそう書いてあったので。それで行ってみたら、いたんですよ。クラゲどころか海の生き物がいっぱい。

    高野:読んでて、どこまでが本当の話なのか全然わからない。最後は「そこらじゅうにいる」なんて、思わず信じそうになった(笑)。

    宮田:本当にいるんですから!

    高野:僕はこのエッセイをウェブ連載時にソマリアで読みました。ソマリアの首都モガディショのホテルの部屋で。モガディショでは、一人で外に出られないんです。出るときはボディガードを雇って、車も2台用意しなければいけなくて、通訳もつけると1日400ドルくらいかかる。それで金が尽きてしまって、しょうがないからホテルの部屋にこもっていた。ただ、ネットはよく通じるから、「日本全国津々うりゃうりゃ」を読んでいたんです。外の銃声が時々聞こえてくるような状況なんだけど、読んでゲラゲラ笑い転げてました。あんな状態でも、宮田さんのエッセイはちゃんと笑えるのがすごいですよね。どこでも同じように笑える。

    宮田:それはうれしいです。

    高野:どこにいても現実にリンクしないという(笑)。

    宮田:前に高野さんが書いていましたよね、僕は風刺をあまり書かないと。自分でもそうだなと思って、なんでそうなのか考えてみたんです。政治的な意見とか、右だとか左だとか、この経済政策に反対だとか、そういうのは見方によってどうにでもなる。自分も、あるときは反対だと思っても、こういう見方で見れば賛成かな、みたいに揺らいでしまう。そういうことが最近多くて、政治的なことを自分から言うと、後で気が変わった時に困るかなと。だからそういうのをだんだん避けるようになってきたんですよね。

    高野:だんだんというか、前から書いてないじゃないですか。

    宮田:書いてない。

     

    バックグラウンドを気にせず「表面」で捉える面白さ

    高野:宮田さんのスタンスって、変化はあっても一貫した部分があるでしょう。それは、対象物をあくまでも「形」や「色」のおもしろさで見ようとすること。そこにある歴史とか生態とか性質だとかは全く無視しようという。

    宮田:表面でいこうというのがあるんですよ。

    高野:蓮實重彦氏が映画について「表層批評宣言」なることを言っていて、それは映画を表面だけで観ようと。監督の生い立ちやその映画の撮られた時代背景とかそういうことは一切考えず、映画の中のことだけを語るべきだと。宮田さんのスタンスはそれとすごく近いと思うんです。

    宮田:そんな深いものだったんだ。

    高野:でも宮田さんの場合は批評しないから、「表層批評宣言」じゃなくて「表層無批評宣言」。さらに宣言もしてないわけですよ。

    宮田:何もないんですね。

    高野:じゃあ何かと考えて、わかったんですよ。宮田さん、夏休みがすごく好きでしょう?

    宮田:はい。

    高野:「夏休み原理主義」なんじゃないかと僕は思う。

    宮田:何だ、それ?

    高野:海とか遊園地が好きで、とにかく遊びたいという異常な欲求がある。そして、ものの表面しか知りたくない、バックグラウンドを知りたくないというのは勉強が嫌いなんだと思うんです。

    宮田:勉強、嫌いです。

    高野:勉強が嫌いで遊ぶのが大好きと言えば、夏休みじゃないですか。

    宮田:なるほどね。

    高野:それを徹底して進めて、ほかのものを全力で排除している姿が原理主義なんですよ。

    1 2 3
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下

  • GoogleAd:007

  • ページの先頭に戻る