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  • 地球人の青年と、性別のない宇宙人――恋を知らない2人が「生き物観察」を通じて見つけるものは? 『Q、恋ってなんですか?』

    2021年10月17日
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    黒田順子:講談社コミックプラス
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    Q、恋ってなんですか? 1
    著者:Fiok Lee
    発売日:2021年08月
    発行所:講談社
    価格:748円(税込)
    ISBNコード:9784065243763

    心にスーッと入って来て、ポワッと明かりを灯してくれる、そんな優しさを感じるお話です。
    ――『Q、恋ってなんですか?』――
    このタイトルは、何気ない耳慣れた言葉ではありますが、読み進めるうち、実はとても深い意味があったことに気付かされます。

    ごくごく普通の会社員である青井は、食事会や飲み会の誘いより、公園のベンチで1人ビールを飲むのが至福の時間。
    決して人嫌いではないのですが、人の顔色を気にし過ぎる性格なので、恋愛からも遠ざかっていました。

    ある日、蝶を捕まえるため突然現れた人が、元の世界へ戻る扉をくぐり抜けようとしたとき、思わず青井も後を追います。

    その人の名はQ(キュー)。性別はなし。地球の“あらゆる”生き物に興味があり、宇宙船の「休眠室」に採集したものをコレクションするため、地球にやって来たのでした。

    成り行きで、ベネズエラ・ボリバル共和国に棲息する「モルフォチョウ」の採集に同行した青井は、蝶の交尾後に生まれた、「雌雄(しゆう)モザイク」の蝶を目にします。

    「雌雄モザイク」とは、雄の遺伝子と雌の遺伝子が左右に混在する生物。
    私自身、初めてこの言葉を知ったのですが、本当にこんな生き物がいるんだ!!!! と驚きました。世の中、まだまだ知らないことだらけです。

    青井が地球に戻る時間が近づいたとき、Qは青井の記憶を消すつもりでいました。ところが……、

    感謝の伝え方を間違えて覚えてしまったQ。実は指切りの方法も間違えて覚えたので……、

    一生懸命、人間のことを、青井のことを知ろうとするQがメチャクチャ可愛い!!!!

    2人はその後も、海底のマダコ、南極のコウテイペンギン(別名・エンペラーペンギン)、インドのベンガルトラと、ちょっとやそっとじゃ行けない所を訪れ、生物の営みを知り、採集を行います。

    それが毎回、くじ引きでどこに行くかを決める→探検用の服に着替える→雄と雌の交尾観察→時間のコントロール→生命の誕生→宇宙船に持ち帰り「休眠室」で保存、とパターン化されているので、今度は何が来るのかと想像する楽しさもあります。

    さらに新しい知識が増える度に「へぇ?」と驚き、漫画で読む生きもの図鑑、楽しい!!!! とパターン化に慣れたところで、急に予想外の展開が……。
    それで思い出しました。この漫画のタイトルが、『Q、恋ってなんですか?』だったことを。

    ここで初めて、今まで出てきた生き物たちのエピソードが伏線であったことに気づき、そういう事か! だからこのタイトルなのか! と腑(ふ)に落ちました。

    例えば、ペンギンの卵を温めるのがメスではなくオスだということ。
    いかに、子供を育てる=母親という先入観に囚われていたかを思い知らされました。
    私たちが何の疑問も持たず、当たり前だと思っていることも実は当たり前ではなく先入観によるものだと、さりげなく提示してくれていたのです。

    ほかにもオスとメスが混在する体もあるということ、そしてQが男でも女でもないのに、それでも青井がQに惹(ひ)かれていくこと。
    まさに恋って何だろう? ということに繋がっているわけです。

    実は、青井がQと探検をともにすることになったのは、ただ生き物が見たかったからではありません。
    Qが地球にやって来た理由も、生き物の採集だけが目的ではなさそうなのです。

    そのあたりの2人の微妙な心の動きや、心の奥底に仕舞い込んでいる寂しさも静かに伝わって来て、じわじわと沁みてきます。
    そしてそれが押し付けがましくないところも、この作品の良さです。
    『Q、恋ってなんですか?』を読めば、癒されること間違いなし!!!! 温かい気持ちを欲している人にも、オススメしたい作品です。

    (レビュアー:黒田順子)


    ※本記事は、講談社コミックプラスに2021年9月23日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。



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