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  • 消えた謎の患者!殺された男の匕首の血!理想の医者を目指す新吾が巻き込まれた事件とは?|小杉健治『蘭方医・宇津木新吾 恐喝』

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    2021年10月02日
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    細谷正充:「小説推理」BOOK REVIEW
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    小杉健治の人気時代ミステリー・シリーズの、第13弾が刊行された。

    蘭方医・宇津木新吾は、刀傷を負った男の素性を探り、騒動に巻き込まれていく。


    読みごたえのあるミステリーを堅実なペースで発表する一方、文庫書き下ろし時代小説の世界で活躍している小杉健治の新刊が刊行された。理想と現実の狭間で悩みながら成長していく蘭方医・宇津木新吾を主人公にした、時代ミステリーの第13弾だ。

    長崎帰りの宇津木新吾は、江戸で理想の医者を目指して働いていた。しかしその道は平坦ではなく、何度も騒動や事件に巻き込まれている。曲折を経て、松江藩のお抱え医師に返り咲いたが、やはり身辺に騒動が絶えない。大店『西国屋』の主人の香右衛門から、大旦那を診てほしいと頼まれたが、これは口実。店に隠れていた、刀傷を負った河太郎という謎の男を診察することになる。刀傷は河太郎が、刃物で自害しようとした妹と揉み合ったときに、誤ってついたという。

    だが、香右衛門を始めとする、人々の態度がいかにも怪しい。旧知の南町奉行所同心・津久井半兵衛からは、殺された男の握っていた匕首に、血が付いていたと聞いた。河太郎が犯人なのか。その後、診察を断られ、さらに『西国屋』から河太郎の姿が消えた。患者のことを心配する新吾は、河太郎の行方を追い、騒動に巻き込まれるのだった。

    河太郎は何者なのか。本当に人を殺したのか。香右衛門たちの不審な態度は、どういうことなのか。幾つもの疑問をちりばめた物語は、サスペンス色豊かに進んでいく。新吾の行動によって、しだいに見えてくる、一連の騒動の構図が面白く、夢中になって読まずにはいられない。

    そうした流れの中で特に注目したいのが、騒動に松江藩が絡んでくる点だ。公儀隠密の間宮林蔵が、シリーズを通じて松江藩にこだわっていた理由が、ようやく判明。また、新吾の師である村松幻宗の、新たな過去の一端も明らかになるのだ。シリーズのファンにとって、興味の尽きない内容になっているのである。さらに終盤の意外な展開に、黒幕の正体と、ミステリーの面白さも盛りだくさん。冒頭からラストまで、一気読みの作品なのだ。

    また、新吾の成長も見逃せない。河太郎を治すために奮闘する、純粋な想いはシリーズ開始時と変わらない。だが、騒動に関しては正義を貫くことなく、状況を見極めて妥協する。自らの汚れを意識しながら、現実的な選択をするところに、主人公の成長があった。したたかな立ち回りのできるようになった新吾が、これからいかに理想を追求していくのか。シリーズの今後が楽しみだ。

    恐喝
    著者:小杉健治
    発売日:2021年08月
    発行所:双葉社
    価格:737円(税込)
    ISBNコード:9784575670653

    「小説推理」(双葉社)2021年11月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載




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