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  • 仕事中の妻と監禁された夫。交互に描かれる2人の恐怖と不安と疑念の先に待ち受ける、圧倒的なクライマックスに戦慄せよ!|秋吉理香子『監禁』

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    2021年10月03日
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    細谷正充:「小説推理」BOOK REVIEW
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    看護師の由紀恵は、今日を最後に仕事を辞める。だが、家で子供の面倒を見ていた夫が、何者かに監禁された。

    秋吉理香子の生み出すサスペンスは強烈だ。


    ミステリーの書評は難しい。なぜなら他の小説以上に、ネタバレを気にかけなければならないからだ。どこまで踏み込むことが許されるのか。秋吉理香子の最新刊は、常にそのことを考える必要があった。

    看護師の三田由紀恵は、育児と仕事の両立に疲れ、病院を辞めることにした。クリスマス・イブの今日が、最後の仕事日だ。夫の雅之は、家事と育児を手伝っているつもりだが、由紀子から見れば不満が多い。夫婦関係もギクシャクし、半年前からセックスレスになっている。さらに病院では厳格な師長から、パワハラめいた言葉をぶつけられていた。いつもと同じように病院の仕事に追われる由紀恵だが、それも今日で終わりだ。

    一方、1歳児の舞衣子の面倒を見ていた雅之は、ゴミを捨てるため外に出たところ、何者かに襲われる。どうやら由紀恵に、ストーカー行為をしていた柿沼という男に捕まったらしい。見知らぬ部屋に監禁された雅之は、凶暴な柿沼と対峙しながら、必死に生き延びようとするのだった。

    という粗筋は、本書を読みながら、頭の中で組み立てたものだ。しかし後半の驚愕の展開で、この粗筋を訂正したくなった。ただし、真っ正直に書いたらネタバレだ。恐るべきサプライズから浮かび上がる、物語の真の姿を堪能してもらいたいというしかない。

    もちろん、サプライズに至るまでのストーリーも面白い。本書は病院と監禁の、ふたつのパートを、交互に描きながら進行する。病院のパートは、お仕事小説として楽しめた。心が触れ合う患者がいれば、セクハラする患者もいる。忙しく働く中で由紀恵は、厳格な師長の素顔を知り、あれほど辞めたいと思っていた仕事に対する意識が変わっていく。単なるお仕事小説にしても、十分に通用すると確信できるほど、病院パートの物語が面白いのだ。

    では、監禁パートはどうか。とにかく、緊迫感に満ちている。男ふたりの、二転三転する攻防戦に、胸の鼓動が速くなった。しかも、舞衣子がひとりで部屋に取り残されていることを、読者は分かっている。成長の速度に差はあるが、一歳児の行動は想像以上に激しい。だから、舞依子に関する描写がないため、嫌な予感が強まってしまうのだ。この、書かないことによってサスペンスを盛り上げる手法は、大いに感心した。

    その他にも電話の扱いなど、読みどころは多い。さまざま魅力を詰め込んだ秀作だ。

    監禁
    著者:秋吉理香子
    発売日:2021年09月
    発行所:双葉社
    価格:1,650円(税込)
    ISBNコード:9784575244403

    「小説推理」(双葉社)2021年11月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載




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