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    高殿円&蛇蔵が企画・原作!「愛するものが殺し合う」ダークファンタジー『傀儡戦記』

    2021年09月19日
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    黒田順子:講談社コミックプラス
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    傀儡戦記 1
    著者:高殿円 蛇蔵 白浜鴎
    発売日:2021年07月
    発行所:講談社
    価格:990円(税込)
    ISBNコード:9784065217825

    とんでもない漫画が始まった――。読み終わる前から、そう思いました。
    とにかく心がざわつくのです!!
    高殿円(たかどのまどか)氏と蛇蔵(へびぞう)氏が原作や原案を担当し、漫画家さん達がそれぞれ異なる話を描くアンソロジーは、どれもが心理描写に重点を置いているので、心にずっしりと響きます。

    第1話の主人公ジェミンは小さい頃から病弱で、迫り来る死を察しながらも自分自身に嫌気がさしていました。

    なんのために生まれたのかわからないまま
    なんのためにもならずに…
    死ぬ──!!
    せめて誰かの血肉になりたい

    その願いを聞いた「神器(じんぎ)」は、ジェミンを「王の器」に選びます。
    国王が死去して分裂した「弍(に)の国」は150年もの間、戦が続き荒れ果てていました。
    この状況を変えるには「神器」が選んだ「王の器」が北の玉座に座り、大樹王になるしかないのです。

    旅の途中ジェミンは胸騒ぎを覚え、反乱軍を率いるテグシンを助けます。傀儡戦記傀儡戦記実は、「王の器」は “二人”、そして大樹王になれるのは一人。

    テグシンは誰が見ても王に相応しく、「テグシンを大樹王にするために生まれて来た」と思ったジェミンは、命すら投げ打つ覚悟で献身的な働きをします。
    しかし、玉座を前にして「神器」が放った言葉は……、傀儡戦記傀儡戦記お互いを「半身」として認め合い、強い信頼と絆で結ばれた二人が殺し合わなければ、国や民を救うことができない。こんな残酷な選択に、心がえぐられる思いです。

    第2話でも、ふたりの「王の器」が選ばれます。
    口減らしのために捨てられた盲目の少年 “グ”と、生きるためなら平気で人を殺す大悪党のシン。傀儡戦記傀儡戦記しかし、シンがこんな人間になってしまったのには深い理由があり、それがあまりにも残虐で同情すら覚えます。

    1話も2話も、国を救うために重たい運命を背負うことになった「王の器」が描かれるのですが、ラストでは希望を感じます。だからこそ余計に切なくなるのですが……。

    こんな具合で、第3話は領主さまと武闘隊の一員だった女の子が、きらびやかでありながら、嫉妬や人間の業がうごめく奥の院での話。傀儡戦記

    第4話(前編)は、悪行を繰り返し高い位に上り詰めたものの、廃棄民の集落“ゴーム”で捨て子を育てながら生き延びた男が、「王の器」に選ばれた息子を擁して再び野心に火がつく話。傀儡戦記

    どの作品も、人の生死に関わることが出て来て、かなり残酷なシーンもあるのですが、それゆえに一層心に響き、生き抜くということ、生かされているということを深く考えさせられます。

    そしてこれらの世界観を見事に表現しているのが、『とんがり帽子のアトリエ』で海外でも数々の賞を受賞している白浜鴎(しらはまかもめ)氏が描く、冒頭の「承前」です。傀儡戦記同じ世界観なのに、アラビア風だったり中央アジア風だったり、漫画家さんが変わると絵や雰囲気がガラリと変わるところも、見どころです。

    第1巻は270ページほどあり、厚さもさる事ながら、内容も重厚で読み応え十分。
    「神の器 九つ」。つまり九つの国があるということなので、これからどんな「王の器」が現れるのか楽しみです。

    (レビュアー:黒田順子)


    ※本記事は、講談社コミックプラスに2021年9月3日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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