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  • 赤ちゃん化したバットマンをジョーカーがワンオペ育児!? 極悪育児コメディ『ワンオペJOKER』

    2021年08月29日
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    花森リド:講談社コミックプラス
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    ワンオペJOKER 1
    著者:宮川サトシ 後藤慶介 DC COMICS
    発売日:2021年06月
    発行所:講談社
    価格:748円(税込)
    ISBNコード:9784065236789

     

    メイクする暇もないジョーカー

    育児をはじめた友達はみな変化する。女子会の開催地だって今までは外苑前のフレンチや新宿三丁目の肉バルとかだったのが急に郊外の「ららぽーと」一択になる。そもそも女子会の頻度がガクンと下がった。会う機会が減ったことそのものが奮闘ぶりの証拠だ。育児にまだ突入していない私にも伝わってくる。

    だから『ワンオペJOKER』にめちゃくちゃ笑った。バットマンの宿敵・ジョーカーが、諸般の事情よりワンオペ(=ひとり)で育児を始めたとしたら、どうなるのか。ぜんぶ神回だ。

    メイクする時間もなくすっぴんで来客を迎え、

    いつものノリで遊びに来ちゃったハーレイ・クインに「ちょっと迷惑だな……」と困り、

    保育園の申請で混み合うゴッサム市役所でライバルの親たちを見て「できればこの場で全員ぶち殺してぇぜ」と思う。ちゃんとメイクして市役所に来ているのが面白い。絶対に保育園に入れたいという彼の意気込みが伝わってくる。

    それにしても、稀代のヴィランすらこんなになっちゃうのか。とんでもないな育児ってやつは。

    赤ちゃんのパワーってすごい。ジョーカーでもちゃんと刃物は安全な場所に置くんだ!? まとも! どうしちゃったのジョーカー!? ほんと、育児ってとんでもない。

    ちなみに本作はちゃんとDCコミックス監修済みだ。育児あるあるネタを散りばめたギャグ漫画でありつつ、みんなが期待する「ジョーカーっぽさ」を保ったきわどい漫画でもある。その味わい深さも紹介したい。

     

    お前がいなくなったら生きるのが退屈になっちまう

    そもそもなぜジョーカーがワンオペ育児に励むことになったのか。ことの始まりから見ていこう。

    その日もジョーカーはバットマンとしっちゃかめっちゃかの戦いに明け暮れていた。

    いつものようにのけ反って高笑いをして反りすぎちゃった結果、バットマンが化学薬品のタンクに落ちてしまう。ここでジョーカーの粘着質かつ歪んだ性格がモロに出る。

    そう、死なれちゃ困るんですよ。「お前がいなくなったら生きるのが退屈になっちまう」って、言い方はともかく親みたいなセリフだ。で、薬品タンクに沈んだバットマンを引き上げると……、

    バットマンは赤ちゃんに変わっていた。ほっぺも手もぷくぷくだ。「正義の脆さを証明するためにバットマンが必要」なジョーカーは、この赤ちゃんを正義のバットマンに育て上げることを決意する。歪んでるけども筋が通ってる。

    ちゃんと育てると決めたからには沐浴だってこの通り。ときどき差し込まれるジョーカーの心の声が渋い。そして泡で出るタイプの無添加ベビーソープをきちんとチョイスしてるあたりに、これまで周到な計画を立ててバットマンを苦しめてきた男の面影がうかがえる。几帳面なんですよ、彼の育児。離乳食も手作りだし。

    ということで、屈折しまくった強い意志によって始まった極悪ワンオペ育児は、ジョーカーの日常を暴力的な勢いで変えてしまう。C4爆弾を扱うマインドで「背中スイッチ」と対峙し、ハーレイ・クインと夜毎繰り返してきた破壊活動もやめ、保育園に落ちた怒りをゴッサムシティの片隅から世界に向かって絶叫する。

    この苦悶に満ちた表情を見よ。もう本当に大変。育児によって変わっていく自分と、その現実に追い詰められる過程がゴリゴリに描かれている。私も友達に「親になって変わったよね~」とか気軽に言うの絶対にやめよう……。

    でも10のうち9が「大変」だとしたら、残りの1の「喜び」もジョーカーは体験するのだ。

    赤ちゃんの圧倒的成長。ジョーカーの素の反応がリアル。

    ジョーカーの「何」が止まらないかは、読んで噛み締めてほしい。

    いい場面だ。抱っこ紐でよれたスーツがいとおしい。

    前情報なしで読んでも楽しいですが、ホアキン・フェニックスがジョーカーを演じた映画「ジョーカー」を観たあとにこちらを読むと、より楽しめると思います(当たり前なんですけどノリは全然違います。でも、服装やシーンで「アッ!」と嬉しくなるんですよね)。

    試し読みはこちら

    (レビュアー:花森リド)


    ※本記事は、講談社コミックプラスに2021年7月24日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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