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人と本と書店をつなげる「今日は、本を読もう。プロジェクト」のメンバーのおすすめ本を紹介!
今回は、昭和40年に直木賞候補となった、傑作冒険小説です。
1923年、上海。
夜の街を歩くのは、破産したばかりだが身なりの良いひとりの美丈夫。
出会ったのは、顔の半分、焼けただれた部分を髪で隠した美しい青年。
それが紅真吾と葉村宗明の出会いだった……。
寝る前にこんな序盤を読んでしまい、気づいたら太陽が昇っていました。約30年前のことです。
今回ご紹介するのはハードボイルドの名手・生島治郎さんが手掛けた「紅真吾」シリーズ第1作『黄土の奔流』(光文社)です。冒険小説の金字塔と言っても過言ではありません。
驚くことに、これまで講談社→中央公論新社→光文社→KADOKAWA→双葉社という流れで、発行社の変遷を経ながらも50年以上もの間読み継がれ、現在は光文社文庫として刊行されています。
あらすじ
中国に渡って十五年、破産した紅真吾は、危機から救った大手商社の支店長・沢井から、儲け話に誘われる。揚子江を重慶まで溯り、豚毛を買い集めて帰ってくればぼろ儲けできるのだという。だが流域の治安は劣悪で、命の保証はない。一攫千金を狙う真吾は、短剣投げの名手・葉村宗明ら素性の知れない八人の猛者と出立する――。手に汗握る傑作冒険小説。
(光文社公式サイトより)
紅真吾と葉村宗明。このバディは互いを信用しきれない状況ながらも、一攫千金のために、武器を詰め込んだ小さな船に乗り込みます。その為に集められた同行者もみな一癖あって……。
誰が味方で誰が敵か。途中で明かされるメンバーたちの背景や目的も、知ってしまうと胸にくるものがあります。
そして葉村から真吾に提案された二つの賭け。
「あんたが俺の正体を見破れるかどうか」
「どっちが無事に上海へ帰れるか」
神出鬼没な敵からの襲撃。銃を構える真吾と、ナイフ投げの名手・葉村。幾多の危険を乗り越え、微かな光を見出してそれを掴み取り、ギリギリで生き延びる。そして次の戦いへと向かう男たち。
ラストに吐露される互いの信念と感情。ロマンチストと現実主義者が影響しあい、背中を預け、ニヤリと顔を見合わせる。
最後に向けられた銃口は、誰が誰を狙っているのか。
扱い慣れた拳銃を握る手が、友を前に震えているのは何故か。
かっこよすぎるんです!!!!!!
紅真吾が!!!!!!!!!!!!
皮肉に微笑む葉村が!!!!!!!
1965年に書かれたとは思えないスタイリッシュさ。
絶対、蟹を食べたくなります。用意しておいて下さい。余裕があるならレモンも用意して下さい。供えたくなります。
シリーズというだけあって、『夢なきものの掟』『総統奪取』『上海カサブランカ』と、続編があります。
しかし、残念ながらどれも絶版状態です……復刊してくれませんか……特に『夢なきものの掟』……。そして『上海カサブランカ』にいたっては文庫化されていないので……ネットで古本価格も高騰しております……。
『黄土の奔流』は冒険小説ですが、続編3冊はハードボイルド感が強くなります。普段は離れて生活しているのに、「大きな依頼」が入ると葉村を探して相棒に据える真吾。ろくな死に方はしないとわかっていても、信念だけは譲れない。
そんな男たちの生きざまを示すシリーズ第1作、『黄土の奔流』を是非ご堪能ください。
(文・月小路ひかる)
今日は、本を読もう。プロジェクト
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