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“なぞかけ”や“ひとりコント”などを武器に、女性芸人として独自の地位を築きあげている紺野ぶるまさん。
お笑い賞レースにおいても「R-1ぐらんぷり(現R-1グランプリ)」で2年連続決勝進出、「女芸人No.1決定戦THE W」で3年連続決勝進出を果たすなど、確かな実績を残しています。
そんな紺野さんが5月27日(木)に上梓したエッセイ『「中退女子」の生き方』には、高校を中退してからの堕落した生活や、芸人を目指すことになったきっかけ、芸人としての苦悩や現在に至るまでの思いが綴られています。
ほかにも、女性に対して鋭い視線で書かれた“人間観察”の話や、母に対する思いなど、紺野さんのさまざまな要素が詰まった本書についてお話をうかがいました。
R-1グランプリ、女芸人No.1決定戦THE Wの決勝戦常連として話題の芸人・紺野ぶるまが綴る初めてのエッセイ集。
「しくじり先生」や「アメトーーク!」などでも紹介された、高校中退後の引きこもり生活からピン芸人となるまでの知られざる半生とは?
その独自の恋愛観や、下ネタにこだわるお笑い論なども語ります。(廣済堂出版公式サイトより)
紺野ぶるま(こんの・ぶるま)
21歳で松竹芸能の東京養成所に入り、お笑い芸人の道へ。“なぞかけ”や“ひとりコント”で人気となり、「R-1ぐらんぷり」で2017年、2018年に決勝進出、「女芸人No.1決定戦THE W」で2017年、2018年、2019年に決勝進出を果たす。
――タイトルが『「中退女子」の生き方』なので、高校中退の話がメインかと思いましたが、芸人としての考え方や女性としての生き方なども書かれていて、いい意味で裏切られる内容でした。
もともと自己啓発本やエッセイを読むのが好きで、そういう本を自分でも書いてみたいと取材でお話ししたことがあって。それを見た出版社さんからお声をかけていただいたのが最初でした。
紙だと永遠に残るので、とことん自分と向き合って書こうと追求したらこの形になって、それを1冊にまとめさせていただきました。
――第1章で、高校を中退したことを後悔した過去や、一方で、中退しなければ芸人になっていなかったことが書かれています。「高校中退」というコンプレックスを払しょくできたのはいつごろでしょうか。
大きなきっかけとなったのは、「アメトーーク!」(テレビ朝日系)の「高校中退芸人」(2019年2月放送)に出演したことでした。
その少し前から、「中退していなければ芸人になっていなかっただろうな」とは思っていましたが、「アメトーーク!」で当時の制服を着てトークできたことで、「ちゃんといまにつながっていたんだな」と思うことができました。
いまでも、高校はもちろん卒業した方がいいと思っています。ただ、私の場合は、“どうしてこういうことが起きたのか”と向き合うきっかけになって、自分が生きやすい場所を見つけるきっかけになったかなと思います。
――第2章からは、お笑い芸人としての考え方や、「女芸人」という枠組みでの苦労についても書かれていました。印象的だったのは後輩のキンタロー。さんが売れていくことに対する思いを「天才子役に嫉妬してはいけない」と表現されていたところでした。
あのときのキンタロー。は本当にすごかったです。まさに“歩くたびに売れていく”という感覚でした。劇場でのお客さんのリアクションも、キンタロー。が出た瞬間、それまでの出演者のネタがすべてひっくり返されるほどのウケ方をしていました。
男芸人さんだったらフラットな目で「面白い」と見られるのでしょうが、同じ事務所の後輩で、しかも同じ女芸人の立場としては本当に怖かったです。
彼女は3年後輩でしたが、3か月で売れました。最初は、自分より経歴の浅い人に抜かれる悔しさはありましたが、R-1で堂々とネタをしている姿を見て、「こんなすごい人に無理して張り合わなくていいんだ」と思うようになりました。それからは「経歴と実力は比例しない」、つまり「天才子役に嫉妬するようなものだ」と割り切ることができてラクになりました。
そのあとゆりやん(ゆりやんレトリィバァ)など、他事務所のすごい人たちに出会いますが、その前に免疫ができてよかったなと思いました。彼女たちと自分は違う、張り合ってはいけないと、自分のできることを探せたので。
自分が彼女たちと同じ時空でお笑いをできていることが奇跡で、ありがたいです。賞レースやラップバトルの時など、戦う時はリスペクトを込めてとことん殴りに行きますけど。
――紺野さん自身も、賞レースの決勝に何度も進まれていて、現在の活躍は素晴らしいものがあります。第4章で、当初は芸人の仕事に否定的だったお母様が、紺野さんのなぞかけネタを認める描写がありました。その描写はここでは書けないですが、とても秀逸な返しで、お笑いのセンスを感じました。
この本を渡したときも、母は「つらくて読めません」って言っていたくせに、「映像化した時のお母さんの役は、室井滋さんか、余貴美子さんでお願いします」と言い始めて。「そんな話はないよ」と言っても、「黒木瞳さんでもかまいません」って(笑)。
――そのエピソードだけでもユーモラスな方だとわかりますね(笑)。この本を読んでいると、お母様との過去にも触れられていて、お母様に向けて書いている部分もあるように思えました。
たしかに、書いている途中からそういう部分は出てきた気がします。本に書いた私の胸の手術痕についても、「私は本当に気にしていない」ということをここに書くことによって、母に「本当に気にしていなかったんだね」と思ってもらえました。
言葉にしないと伝わらないことはありますし、明日死んでしまうことがあるかもしれないと思うと、本で伝えることができたのはよかったと思います。
――第4章以降では、女性としての考え方や、結婚についても書かれています。結婚する前と後では、仕事面での変化はありましたか?
やはり独身時代のほうが、彼氏の話や、少し世間を斜めから見てるポジションが取りやすかったなと思います。
いまでも性格や感覚は変わっていませんが、自分に対して「こいつ不満ばかりいって尖ってるけど、結局は結婚っていう丸くてあたたかい生活してんじゃねえか」と、整合性を求めて苦しい時がありました。
「結婚したからこうしたほうがいいのかな」と悩みましたし、それに疲れたという時期もありました。
ただ、ライブでネタは相変わらずできているので、今後もそこはバランスを取りながらやっていきたいと思っています。
また、いまやらせていただいているエッセイのお仕事のほかに、小説も書き進めているところです。執筆をしていると行き詰ることもあるのですが、最近よく読む『思考の整理学』という本に助けられることが多いです。
その中に「とにかく書いてみる」というページがあって、頭の中にはたくさんの表現がすでにあるから、とにかく書き出すことで整理できるということが書かれているのですが、本当にその通りで。
“頭の中で絡まっている思考”は書くことでしかほどけないので、書いてみて、それがかたちになった時はすごく嬉しいですね。
――最後になりますが、「ほんのひきだし」は「人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア」ということで、紺野さんの「本や本屋に関するお話」をお聞かせいただけますでしょうか。
本を読むのが好きなので、エッセイから自己啓発、小説もいろいろ読んでいます。
その中でも好きなのが、益田ミリさんの本ですね。最近では『スナックキズツキ』という本がとても面白かったです。
旦那さんのお父さんが本をよく読む人で、先ほど挙げた『思考の整理学』は、一緒に本屋さんに行ったときにお義父さんがプレゼントしてくれたものでした。
以前に読もうとしたけれど読み進められなくて諦めていたのですが、いま読んでみるとためになることばかり書かれていて、いいタイミングでまた出会えたなと思いました。
ひとりで本屋に行くと、自分の知らない本をパラパラとめくって、1行でも気に入った文章があれば衝動買いするようにしています。それも、以前に読んだ本に書いてあったので、そうしているんですけれど(笑)。
何かに迷ったときは手に取った本をめくってみるのですが、不思議とその時の自分にぴったりなことが書かれていることが多いです。そういうことがあると、読書っていいなと改めて思いますね。