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『人は話し方が9割』で、2020年ビジネス書年間ランキング1位(日販調べ)を獲得した永松茂久さん。6月3日発売の、母からの「教え」について書かれた『喜ばれる人になりなさい』も発売前重版となるなど、話題となっています。
飲食店経営の副業として本を書き始め、今では著者の支援業も手掛ける永松さんの書き手としてのルーツは、故郷の書店と母の存在だったそう。本を出すまでのいきさつから「町の本屋さん」への想いまで、永松さんにエッセイを寄せていただきました。
永松茂久
ながまつ・しげひさ。株式会社人財育成JAPAN代表取締役。経営、講演をはじめ、執筆、人材育成、出版コンサルティング、イベント主催など数々の事業を行う実業家。著作業では2020年、書籍の年間累計発行部数で65万部を達成し、『人は話し方が9割』の単冊売上で2020年ビジネス書年間ランキング1位を獲得(日販調べ)。2021年には、同書が「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にて、「特別賞/コロナ禍を支えたビジネス書」を受賞。
飲食店経営者から著作家に転身して5年。振り返ると私の人生にはいつも本と書店がありました。私は大分県中津市の新博多町というアーケード街で生まれ、偶然にも通りを挟んだ目の前が書店という環境で育ちました。実家は商売をしていたため、私の遊び場は、もっぱらその書店でした。
最初はその書店の片隅にあったおもちゃから始まり、絵本、漫画、そして文字の本に馴染んでいきました。大学の途中からバイトを始め、そのまま就職したのも出版社。営業に配属された私のメインの仕事は東京中の書店をまわることでした。
そして今から15年前、飲食店経営者として駆け出しの30歳のとき、九州から東京に出張し、篠崎という街で一風変わった書店に行きました。その店に集まった人たちが、店の片隅で車座になり宴会をしていたのです。しかもただの宴会ではなく、メンバーのほとんどが作家と編集者。そこで当時のゴマブックスの編集長と出会い、一作目の本を書くことになったのです。
最初は飲食店経営の傍ら、店のカウンターで本を書き始めましたので、完全に副業でした。しかし、導かれるように東京に足を運ぶようになり、出版という世界の魅力に取り憑かれ、私の飲食店グループの事務所は、気がつけば出版スタジオに。私と飲食店の店長たちは出版社の名刺を持ち、西日本の書店を営業して回るようになりました。
2016年、僕に本の楽しさを教えてくれた母が他界。その遺書に書いていた言葉をきっかけに東京に出版スタジオを移設し、著作業だけでなく、著者の支援業も手がけるようになりました。私のビジネスのリサーチ場所はまたもや書店になりました。本と書店を切り離して成り立つことはありえない人生のようです。
しかし、最近心配になることがあります。それは私が東京で出版社営業をしていた20年前にはその場所にあったはずの書店のシャッターが閉まっていたり、別のアパレルブランドなどに変わってしまっていることです。
町の書店が減っていくということは、当然ですが読者が本と出合うきっかけも比例して減っていきます。本と触れる機会が減るということは、知識の習得や思考の機会が減り、大きく言えば、今から150年前、世界一の識字率を誇ったと言われるこの日本の国力が下がってしまうことになります。今も昔も変わらず、仕事や人生、世の中に対する意識を高く持っている人は、ほぼ間違いなく、情報を本から取得します。これはいくらITが発達しても、変わらないでしょう。
そして人は本を通して、世の中の道理や歴史を知り、「公」という意識を育てます。これは私の主観になりますが、「個性が大事だ」と声高に叫ばれる今より、書店が繁栄していた20世紀後半の方が、よっぽど「個」というものが際立っていたと思います。それは町の書店が読者のアイデンティティーを支えていたからです。
現在私は著作家としてだけではなく、業界を盛り上げるための出版人コミュニティを主催しています。そこには著者、出版社だけでなく、思いを持った書店の経営者や店長たちが集まって未来を語っています。
もちろんスマートフォンの隆盛による読書時間の減少への対策や、時代に合わせた流通のしくみのイノベーションなど、取り組むべき課題はたくさんあります。しかし、やはりまず何を置いても大切なことは、「書店に行くことは楽しい」「読書って楽しい」ということを世間の方々に再確認してもらうことです。
そのためには書店、出版社、取次、著作家たちがバラバラに行動するのではなく、出版文化人としての共通認識のもとで書店を盛り上げていくことが何より大切なことなのです。出版人みんなで日本が誇る出版の文化を取り戻していきましょう。その拠点になりうる存在は、昔も今も「町の本屋さん」以外にあり得ないと私は思っています。
(「日販通信」2021年7月号「書店との出合い」より転載)
人生で大切なことは、母から繰り返し言われた「この一言」だった──3坪のたこ焼き屋から、口コミだけで県外から毎年1万人を集める大繁盛店を作り、2020年のビジネス書年間ランキングでも日本一に輝いた著者が贈る、母から学んだ、人生で大切な「たった1つ」の教え。学びあり、青春あり、涙あり、感動ありの成長物語。母と子、父と子、愛情、友情、師弟、家族、仕事の真髄が凝縮された、長編ノンフィクション。今の時代だからこそ読みたい、読むだけで自己肯定感が上がり、誰かのために何かをしたくなる、優しくて懐かしくて温かい一冊です。
〈すばる舎 公式サイト『喜ばれる人になりなさい』より〉
〉『喜ばれる人になりなさい』【1章無料公開】はこちら
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