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  • “ペア読書”は絶対に積ん読のままにならない読書法! hontoのオンライン読書会「ペアドク」取材レポート

    2021年05月25日
    楽しむ
    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    オンライン読書会「ペアドク」 コロナ禍で参加者が約4倍に急増

    ハイブリッド型総合書店「honto」が2019年11月から継続的に開催しているオンライン読書会「ペアドク」が、これまでに計16回開催、のべ約1,300人が参加するなど好評です(2021年5月現在)。

    「ペアドク」は簡単にいうと、ある本を30分間読み、次の30分間で考えや感想をシェアする読書法(ペア読書)に加えて、著者や編集者などの“書き手・作り手”に直接話を聞くことができる時間を設けたイベント。『いつか別れる。でもそれは今日ではない』を読み、人生や人間関係について語った第1回を皮切りに、ピョートル・フェリクス・グジバチさん(連続起業家、投資家、経営コンサルタント)、三浦崇宏さん(GO代表取締役)、阿部広太郎さん(コピーライター)、山口周さん(独立研究者)、尾原和啓さん(IT批評家)、八木仁平さん(Meee代表取締役)など、幅広い著者がゲスト登壇してきました。

    今回取材したのは、第15回となる「立ち止まって自分に大事なことを考える2時間」(3月5日(金)19:30~)。ゲストは『嫌われる勇気』などのベストセラーがあり、1月にエッセイ『数えないで生きる』を上梓した岸見一郎さん。イベントには、年齢・性別・居住地もさまざまな109人が参加しました。

    数えないで生きる
    著者:岸見一郎
    発売日:2021年02月
    発行所:扶桑社
    価格:1,540円(税込)
    ISBNコード:9784594087142

    当日のタイムスケジュールは、大まかに下記のとおり。ガイダンスのあと、『数えないで生きる』を30分間読み、共有チャットに5分間でアウトプットして、その後25分たっぷり使ってグループ対話を行ないます。

    参加費はフル参加(参加者同士の対話、著者への質問あり)、視聴のみの参加どちらも税込1,000円で、今回に限らず、honto「ペアドク」の参加料は1,000円前後だそう。書籍は参加者が各自事前に購入しておくという形式でした。

    「ペアドク」タイムスケジュール
    ・19:30~ ガイダンス(10分)
    ・19:40~ 本を読む(30分)
    ・20:10~ グループ対話(30分)
    ・20:45~ 岸見一郎さん登場。著者による解説と質疑応答(40分)
    ・~21:30 読書会終了

    なお読書会には参加者とゲストのほか、過去に参加経験のある有志の運営メンバー(=サポーター)がおり、イベント進行やツール操作に関する参加者からの質問に答える役割を果たしています。

    グループ対話はランダムに決定された3人組を基本に、話題を振る役割とそれに応えて話す役割を、時間を決めてローテーションしていきます。使用ツールはZoom。グループ対話にはブレイクアウトルームが使用され、メンバー外には対話のようすが見えない、クローズドな状態で行なわれます。タイムキープは、サポーターによる全体チャットへの投稿で行なわれていました。

     

    ペア読書は「絶対に積ん読のままにならない」読書法

    そもそも読書会にはさまざまなやり方があります。「全員で同じ本を読む」「共通テーマのもとで好きな本を選ぶ」「テーマも読む本も自由」と、何を読むかだけでも3パターン。さらに「その場で輪読する」「事前に読んでおき議論する」「読んできた本について発表する」など、事前準備や会の進行についてもいくつかのパターンがあります。

    ペア読書は「同じ本を」「当日読んで」「それぞれが、自分の読んだ部分について考えを共有する」という方法で行ないます。本にもよりますが、読む時間が30分と限られているので、その場で読了できない場合がほとんど。そのため参加者は、読み切ろうとせず、そのときに読んだ部分の内容から2~3つ、印象に残ったことやもう少し考えを深めたいことを、読みながらメモしておきます。

    また、その本のどこを読むかは参加者の自由なので、まえがきから通して読む人も、目次をチェックして気になった章から読む人もいます。その後のグループ対話で、印象に残ったことや考えをシェアすることで、「えっ、そんなことも書いてあるんだ」「私が読んだ章に、それに関連することが書いてあった」と、まだ読んでいない内容についても考えを深めることができます。

    いずれにしても、30分と時間が決まっており、その後に対話という“アウトプットの場”があるのがポイント。準備なしで気軽に取り組め、自分以外の誰かの考え方を自然に知ることができるのが、ペア読書の特徴です。短時間とはいえ必ず「読み始める」ことができるので、買って終わりにならないのも罪悪感を軽くしてくれます(笑)。

    それから、対話において「本の内容が理解できたか」ではなく「自分はどう思ったか」が中心に語られることもポイントです。「こう書いてあったけど、私にはよくわからなかった」というのも立派な感想。「なぜわからなかったか」を見つめることも、その本や著者との対話です。

     

    「ペアドク」参加のきっかけは? 参加者に聞いてみた

    参加満足度が98%にものぼる(※)という「ペアドク」(※honto実施の参加者アンケートより)。イベント終了後、初めて「ペアドク」に参加したというおふたり(みーさん、まりさん/いずれも仮名)にお話を伺うことができました。

    みーさん「hontoのメールマガジンでたまたま『ペアドク』のことを知り、あの『嫌われる勇気』を書いた岸見一郎先生が実際にお顔を出して参加されるということで、これはいい機会だと思って参加しました。本は何日か前に買っていましたが、こういうイベントに初めて参加するので、せっかくなら予習なしで楽しもうと思って、本当に何も準備せずに参加しました。本を読む30分とグループでシェアし合う30分、どちらもあっという間でした。グループの皆さん初対面でしたが、難しさは感じませんでした」

    まりさん「私も、たまたまhontoのメールマガジンが目に留まって参加しました。以前から読書会に参加してみたいなとは思っていたんですが、集団に身を置くことに対して少しハードルが高いなと感じていたんですよね。どの読書会が自分に合いそうかとか、一度参加したら退会しづらそうだなとか……。今回のペアドクはオンラインだったので気楽に参加できそうだったし、著者の方から直接お話が聞けて、質問もできるということで、いいきっかけだなと思って参加しました。読んだ感想を共有するだけじゃなく、そこから会話が広がっていくのも楽しかったです。私もあっという間に感じました」

    「今後『ペアドク』を開催してほしい本のジャンルはありますか?」との質問には、小説のほかに、詩の本や、画集・写真集などアートの本を取り上げてみてほしいという回答が。理由を聞いてみると「普段あまり読まないジャンルの回にあえて参加して、そのジャンルを好きな人、読み慣れている人と会話してみたい」とのことで、“読む”ことのハードルを下げるペアドクは、読書の幅を広げるいいきっかけになりそうです。

    ちなみにゲストの岸見一郎さんも、イベントのなかで「僕も(グループ対話の)メンバーに加わりたい」と、「ペアドク」に興味津々のようすでした。

     

    ペア読書を楽しむコツは? 主催者に聞いてみた

    後日、hontoで「ペアドク」を立ち上げ、企画・コーディネートをつとめている松原嘉哉さんにお話を聞くことができました。

    松原さんは、自身がプライベートでペア読書を体験し、その楽しさを発見したのをきっかけに、勤務先であるhontoで企画を立ち上げました。イベントを主催する傍ら、現在も、多いときは週に5回もプライベートでペア読書をしているのだそうです。

    ここからは、そんな松原さんに伺った「ペアドク」のコツや、今後の展望などをインタビュー形式でお届けします。

    ――「ペアドク」では大勢の参加者をランダムにグループ分けしているので、初対面の相手と組む場合がほとんどだと思います。松原さんは、普段はどんな相手とペア読書をしていますか?

    会社の同僚たちともしますし、妻ともしますよ。友達やパートナーとやるのもおすすめです。

    気を付けたいのは、実際の仕事や利害関係からできるだけ意識を離すこと。意識が仕事に直結していると、先輩が後輩に知識を教えたり、お互いの課題を指摘し合ったり、「できていないことをできるようにしよう」という方向に議論が向かいがちで、ペア読書本来の目的である“考えの共有”からそれてしまいます。もちろん「仕事に役立つ本をみんなで読もう」というテーマは設定しやすいし、決して悪くないのですが、ペア読書に関しては、まだ慣れていないうちこそ、答えのないものについて考えを語り合うほうが、お互いを知ることができるのでおすすめです。

    ちなみに僕は先日、妻と東洋哲学の本を題材にペア読書をしました。その結果わかったのは、僕は漠然としたものや曖昧なものを「そういうものだ」と受け入れるタイプなのですが、妻はけっこう白黒つけたいタイプだということ。「孔子や孟子の言っていることは、はっきりしないからよくわからない」と言っていました。ここで大事なのは、妻は僕のことをわからないんじゃなく、考え方そのものが違うということです。相手のことを知っていればいるほど、何か問題が起きたときも、それを前提に話し合いができます。そんなふうにペア読書で得たことは、関係性に還元できるんです。

    仕事に関する本を扱う場合は、異業種の人とやってみると面白いですよ。視野が広がるし、盛り上がります。それから、ペアではなく3人組にしてモデレーターの役割を置くと、初対面同士でも話しやすいです。「ペアドク」を3人組にしているのもこのためです。

    ――「ペアドク」は、ジャンルとしてはビジネス書を題材に開催されることが多いですよね。

    「ペアドク」のよいところは、読書する習慣のきっかけを作れたり、他者との対話を通して知見を広げられたりする点です。そういう意味で、最初のターゲットはビジネスパーソンに置きました。ワークショップに参加することへの心理的なハードルも低そうですしね。それで、結果的にビジネス書を題材にすることが多くなったというのが実際のところです。

    ただ、想像以上に幅広い世代の方が参加してくださっているので、今後は、本のジャンルの幅ももっと広げていきたいと思っています。

    ―― 題材に向いていないジャンルはありますか?

    小説や漫画は、最初から読まないと話が理解できないので、30分という短時間で読んで感想を共有する形式には向いていません。それから専門書や技術書も、先ほど話したように「経験者が未経験者に教える」ような構図になりやすく、対話になりにくいので、あまり向いていないです。

    ちなみに物語であっても、絵本はやりやすいです。それから詩も。以前谷川俊太郎さんの詩でペア読書をしたことがあるのですが、詩は“感じて味わう”要素が大きいので、非常に盛り上がりました。

    実はペア読書の満足度って、ありがたい話が聞けたかよりも、自分の意見を話せたかどうかが左右するんですよ。「自分の意見」とは、なぜその本に興味を持ったのかという自分自身の背景を、その本の内容に重ね合わせてアウトプットすること。「ありがたい話が聞けた」というインプットで満足したと思いがちなんですが、目的がそこにあるなら、動画を視聴するだけで達成できてしまう。そのインプットが自分にとってどれくらい意味のあるものだったかは、アウトプットしてみて初めてわかることなんですよね。なので「ペアドク」では、著者や編集者などの“作り手”を招くことでバリューを持たせつつ、インプットするだけでなくアウトプットまで体験してもらうことを非常に重視しています。

    ▼「ペアドク」には対話に参加しない「視聴枠」もありますが、意見や質問をチャットで投稿し、全体での考えの共有に参加することができます

    ―― イベントには有志スタッフとしてサポーターの方が10人ほど参加していましたが、「ペアドク」はどのように運営されているのでしょうか。

    僕とサポーターの皆さんで運営しています。サポーターは、Facebookの「ペアドク」コミュニティに参加している方々から都度募って、毎回10名前後に企画・運営スタッフとして協力してもらっています。その10名前後のサポーターの皆さんには、当日の進行や参加者フォローだけでなく、企画段階から携わってもらって、テーマ設定のアイデアをもらったり、イベントとしてよりよくしていくための改善点を意見してもらったりしています。「参加者としてどう思ったか」という生の声を直接運営に反映できるので、とても助かっています。コミュニティ自体の人数は150人くらいで、現在も増えています。

    ―― 出版社からの反応はいかがですか?

    ご協力いただいた出版社に参加者へのアンケート結果をフィードバックしているんですが、「ペアドク」は読んだ感想だけでなく、そこから対話も生まれますし、その本のどんなところに興味を持ったかがしっかり語られることが多いので、マーケティングの観点からも参考になると言ってもらっています。レビューだと、文字にしていくなかでその人の考えがある程度整理されていくし、人目に触れることを前提に書いている人がほとんどなので、感情的な部分が出づらくなる側面があるんですよね。一度ご協力いただいたところからは、「次はこの本でどうですか」と提案いただくことも多いです。

    ――「ペアドク」は、最初は書店でのリアルイベントとしてスタートし、コロナ禍を受けて2020年3月に完全オンライン化。奇しくもそれが追い風となり、ここ約1年で参加者が約4倍まで急増しました。現在までの道のりをどう振り返っていらっしゃいますか。

    実は、僕はもともと、オンラインで「ペアドク」をやりたかったんですよね。オフラインのリアルイベントとしてスタートしたのは、読書会という初めての試みにあたり、まずは小規模で開催して、イベントとしての精度を高めるためでした。書店で開催すると多くても30人くらいが限界ですが、運営の基礎固めをするには、かえってそのほうがよかったんです。

    オンラインで開催するメリットは、参加者が“属性なし”でフラットに参加できる点にあります。オフラインで、しかも少人数だと、その人の雰囲気や振る舞いなど、言語コミュニケーション以外から受け取る情報量が多いんです。「どれくらい本を読んできたか」「テーマや著者に対してどれくらい知っているか」のような、読書そのものについてではない違いも体感で受け取ってしまいがちです。オンラインは、どこにいても気軽に参加できることに加えて、そのあたりの違いを感じにくいんです。逆に、意見そのものの質がはっきりあらわれることにもなるのですが、あくまで対話に重きをおき、気軽に発言できる雰囲気づくりにつとめることで、あまり気負わず楽しんでいただけているかなと思います。

    ――「対象書籍の購入レシートから『ペアドク』に参加できる」など、オフラインとオンラインをつなぐ試みもされていますが、リアル書店との連携についてはどのようにお考えですか。

    開催の場を書店からオンラインに移すことにはなりましたが、リアル書店は、オンラインではリーチしづらい層にアプローチできる貴重な場です。一方、“著者から直接話を聞けて質問もできる”という付加価値のあるイベントなので、連携している書店にとっては、自店でイベントを実施するのがなかなか難しくても、書籍の売上につなげることができます。そうやって積極的に売るサイクルを作って、著者・出版社にとっても、書店にとっても、もちろん僕たち「ペアドク」の運営者にとってもメリットのある取り組みにしていきます。オフラインとオンラインをつなぐイベントとして、今後も続けていく予定です。

    ―― 最後に、今後の展望についてもう少しくわしく伺えればと思います。

    今後の展望として考えているのは、まず、中高校生などの若い世代に広げることです。興味や行動範囲が広がって読書離れが加速する世代に対して、気軽に本を読むきっかけを作ることができるし、他者を理解する心を育むという意味でも価値があるのではないかと思っています。具体的には、「ペアドク」が読書感想文の代わりになれないかなと考えているんです。ペア読書って、2人で対話しながら読書感想文を作っていくようなものなので。

    それから、オンラインならではの“属性が薄まる”という点を利用して、「大学生と社会人限定」のように世代をミックスさせたイベントができないかなとも考えています。最近聞いた話なんですが、アメリカでは、大人たちよりも若い世代のほうがSDGsに対する感度が高く、諸問題を自分ごととして捉えている人が多い傾向にあるそうです。対面だと「若い人はまだ経験が浅い」「大人の考えは古臭い」みたいな固定観念がつい邪魔をしがちですが、アバターなどを利用して、誰が大学生で誰が社会人かわからないようにして対話すれば、参加者にとって気づきの多い時間になるのではないかと思います。質疑応答の対応やチャットのログを追うことを考えると、100~150人くらいの規模が運営側としてもやりやすいのですが、それに関しても、参加者が多いほど価値が高まるような設計にしていきたいと考えています。

     

    「ペアドク」をもっと知りたい方はこちら

    〉ペアドク:出会って30分で、素で話せる(honto特設ページ)
    https://honto.jp/pairdoku.html




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