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  • 「チェス喫茶」を舞台に高校生コンビが日常に潜む謎に立ち向かう!|中村あき『チェス喫茶フィアンケットの迷局集』

    2021年04月09日
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    細谷正充:「小説推理」BOOK REVIEW
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    第三回双葉文庫ルーキー大賞受賞作が刊行された。

    チェス喫茶の臨時マスターとアルバイト。高校生コンビが、身の回りで続発する謎を見事に解き明かす。


    双葉文庫ルーキー大賞とは何か。WEBサイトから随時応募可能。そして選ぶのは編集者であり、面白ければ即決で双葉文庫から刊行されるという、実に今時の文学賞なのだ。また応募者はプロアマ問わず、第一回の大橋崇行、第二回の斎藤千輪と、すでに何冊も小説を刊行しているプロ作家が選ばれている。そして本書で、第三回の大賞受賞者となった中村あきも、2013年に『ロジック・ロック・フェスティバル~Logic Lock Festival~探偵殺しのパラドックス』で、既にデビュー済みのプロ作家だ。今まで、ひと癖ある本格ミステリーを発表してきたが、本書は日常の謎を扱っている。新境地といっていいだろう。

    高校生になった小坂柚子子(ゆずこ)は、チェス喫茶「フィアンケット」を訪ねた。幼い頃に盗んでしまった、チェスの駒を返し、謝るためである。だが「フィアンケット」にいたのは、高校で隣の席の世野終だった。病気で入院中の祖父に代わり、臨時マスターをしている終は、柚子子を無料アルバイトとしてこき使う。

    というのが第1局「ビショップは密室の外」の始まりの部分だ。これで「フィアンケット」で働くようになった柚子子は、ある日、店で指されていたチェスの盤面図が、あり得ないものであることに気づく。この謎をあっさりと解く終は、まさに名探偵といっていい。

    続く第2局「アートクラブの不穏な噂が」は、3年生の美術部員の突然の退部の謎が、第3局「赤ちゃん幽霊に子守唄を」は、学校に流れる赤ちゃんの幽霊の噂に柚子子がかかわり、終が真相を明らかにする。この中では、現実の社会問題が露わになる第3局が優れている。日常の謎といっても、けして内容は甘くないのだ。

    そして第4局「席替えで好きな人の隣になる方法」は、柚子子が親友の月待繭に頼まれた、クラスの席替えの不正(理由はタイトルから察してほしい)が、予想外の方向に転がっていき、第5局「チェックメイトにはほど遠い」の、柚子子と学校の将棋部部長とのチェス勝負に繫がっていく。
    なるほど、繭が将棋部という設定は、このための布石であったのか。しかも、チェスというゲームの特性を生かした柚子子の戦いが熱い。ここはチェス小説といっていいだろう。

    なお物語の締めくくりには、画竜点睛なサプライズが置かれている。最後まで作者の腕は冴えまくり、鮮やかなチェックメイトを決めてくれたのだ。

    チェス喫茶フィアンケットの迷局集
    著者:中村あき
    発売日:2021年03月
    発行所:双葉社
    価格:748円(税込)
    ISBNコード:9784575524543

    「小説推理」(双葉社)2021年5月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載




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