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17年前、2003年に新潮文庫から刊行された、重松清さんの小説『ビタミンF』。
同作の人気が昨年末に再燃し、2021年に入ってから相次いで増刷、単行本(2000年刊)とあわせて累計発行部数80万部突破の快進撃をみせています。
『ビタミンF』は、「小説新潮」で発表された7編を収録した短編集で、第124回(2000年下半期)直木賞を受賞した作品。『ナイフ』『流星ワゴン』などに並び、重松さんの代表作の一つとして読みつがれているロングセラーです。
それが17年経ったいま、再び売上を大きく伸ばすきっかけとなったのは、出版元である新潮社の営業部員・Aさん(40歳男性)の作成した販促用パネルでした。
「入社当初、20代の頃に『ビタミンF』を初めて読んだときは正直あまりピンと来なかったのですが、40歳を迎えて改めて読むと、涙が止まりませんでした。それは主人公が今の私と同年代だからです。仕事も家庭もピリッとせず、何とも中途半端な年代。コロナによる閉塞感も重なったのかもしれません。今の自分と重なる部分ばかりで、気が付くと山手線を一周して涙が頬を伝っていました。この気持ちを誰かと共有したい!と思い立ち、もう一度仕掛けることを提案したんです」(Aさん)
昨年末、5,000部の重版とともに作成したパネルには「涙腺キラー・重松清 最泣の一冊」というコピー。このコピーは帯にも使用され、多くの読者の目をひき、昨年末から計4回、8.5万部を増刷。累計発行部数は81.7万部となっています。
(写真協力:有隣堂アトレ恵比寿店)
※2021年3月撮影時の様子のため、時期により展開場所が異なる場合があります
新潮社によると、根強いファンの多い時代小説文庫、大ヒット作の文庫版など日々多くの新刊が刊行されるなか、店舗での週間売上ランキングで『ビタミンF』が第1位となる書店もあるほどだそう。
Aさんイチオシの「セッちゃん」、「ゲンコツ」「はずれくじ」「パンドラ」「なぎさホテルにて」「かさぶたまぶた」「母帰る」―― あなたの心に効くビタミンは、どの物語でしょうか。
あらすじ
38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。
一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。
「また、 がんばってみるか――」、心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。
・『ステップ』飯塚健監督インタビュー:結婚し父親になってわかった“家族”の正体(2020.7.17)