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  • 極限の世界で、1人生きるアンドロイドと少年の“守りたいもの”『ラストオーダー』

    2021年03月21日
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    黒田順子:講談社コミックプラス
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    ラストオーダー 1
    著者:浜松春日 松葉サトル カズナリ
    発売日:2021年01月
    発行所:講談社
    価格:748円(税込)
    ISBNコード:9784065208182

    誰にも会わない、誰とも喋らない自粛生活に心が疲れると、こんなふうに思っていました。この世に1人取り残されたわけじゃないし、マンホールチルドレンよりずっと恵まれている、と。
    ところが『ラストオーダー』に出てくる主人公はまさにこれ、戦争で誰も居なくなった地上で1人暮らすヒューマロイドと、ヒューマロイドのせいで地下に追いやられた少年の話です。

    大昔、政府が推進する自律人間機械(ヒューマロイド)の産業導入に対し、失業率悪化を懸念した人間はデモを繰り返していました。その鎮静のため駆り出されたのは、民間仕様から軍事転用されたヒューマロイド・リア。
    危うく暴徒に捕まるところを助けてくれたのが、人間の高校生ケンジでした。

    リアには、大尉から命令(オーダー)が出されていました。「守りたいものを見つけてきなさい」と。

    リアにとっては、このメイド喫茶で出会ったケンジを始めとする友達が、守りたいものだと確信します。

    その後、大量破壊兵器によって壊滅状態になった人工島に他の3名の兵士と共に派遣されることになったリア。

    しかし仲間は死に、軍の最後の命令・ラストオーダーから100年以上経った今も、たった1人で任務を遂行し続けるリア。

    敵の半生物兵器は倒しても倒してもキリがなく、永遠に同じことが繰り返される日々。
    私だったら全てを投げ出したくなるに違いありません。そして、長生きした自分をこんなふうに思うのではないかと思います。

    一方、地下世界に追いやられた人間たちは、土砂に埋もれた地下街を掘り起こしてモウル村を作り、太陽とは無縁の生活を送っていました。
    地上では“人間狩り”と呼ばれる機械たちがはびこっているだけでなく、“赤い目の殺人人形”がいて、地上に出て物資の調達をすることが許されているのは上陸衆(かみおかしゅう)と呼ばれる精鋭達だけ。

    彼らに憧れる孤児院育ちのノーリィは、いつの日か上陸衆になることを夢見ていました。
    一生、光のないこんなところに閉じ込められた貧しい暮らしより、たとえ危険があったとしても違う世界を見てみたいというノーリィの気持ちは痛いほどわかります。
    しかし村には、子供だけで村外に出てはいけないという掟があるのです。

    その掟を破り、食料を調達して来たノーリィ。もうすぐ7歳の誕生日を迎える妹ミクリのためでした。
    ところがそれが原因で、ミクリが伝染病である“黒死病”になってしまいます。

    妹を村外に置き去りにして村に残るか、妹と共に村を出ていくかと村長に問われるノーリィ。
    死にゆく人間と共に、これからどうやって生きていくつもりなの?ノーリィ、と思わず言いたくなりますが、唯一の肉親であるミクリのいない世界で生き延びても、生きているとは言えないのかもしれません。

    だからいくらヒューマロイドであっても、誰もいない世界で孤独に生き続けなければならないリアもやはり、生きている喜びはないだろうと思います。

    “追放の刑”を受け入れたノーリィは、瀕死のミクリと共に村を出ていきます。
    たまたま村に来ていた行商人の男を道連れに進む先には、もちろんたくさんの危険と試練が待ち受けていました。

    極限の世界で、1人で生きていかなければならないノーリィ。
    極限の世界で、1人で生き延びてきた“赤い目の殺人人形”リア。
    地上と地下の別々にいた2人が、この先どう結びついていくのか、世界はどうなってしまうのか。新しい「オーダー」が届く日が来ることを願わずにはいられませんでした。

    (レビュアー:黒田順子)

     

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    ※本記事は、講談社コミックプラスに2021年2月21日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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