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  • 羽住英一郎監督に聞く『太陽は動かない』の舞台裏:藤原竜也×竹内涼真の最強バディ、海外ロケで実現したアクション大作

    2021年03月05日
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    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    主人公・鷹野一彦(藤原竜也)が所属する【AN通信】は、表向きは小さなニュース配信会社を装っているが、その実態は、世界を股にかけ重要機密情報を入手・売買する秘密組織。鷹野をはじめとするエージェントは皆、心臓に爆弾を埋め込まれており、24時間ごとの本部への定期連絡を怠ると爆死する運命にある。

    今回、鷹野と相棒・田岡(竹内涼真)に課せられたミッションは、「次世代エネルギーの極秘情報を入手せよ」という“過去最大にして最悪のミッション”。次世代エネルギーを掌握することは、世界を牛耳るも同じ。世界各国のエージェントが動き出すなか、鷹野たちの前には一匹狼の韓国人エージェント、デイビッド・キム(ピョン・ヨハン)や、謎の女・AYAKO(ハン・ヒョジュ)が現れる。果たして鷹野・田岡は無事今日を生き抜き、ミッションをクリアすることができるのか――。

    映像化は困難といわれた吉田修一さんの小説を、「海猿」「MOZU」シリーズなどを手がけたことで知られる羽住英一郎監督が映画化した『太陽は動かない』(3月5日(金)公開)。撮影の裏側を、羽住監督に伺いました。

    羽住英一郎(はすみ・えいいちろう)
    1967年生まれ、千葉県出身。ROBOT所属。2004年に『海猿 ウミザル』で劇場映画監督デビューし、海猿シリーズは「海猿 UMIZARU EVOLUTION」(2005/CX)、『LIMIT OF LOVE 海猿』(2006)、『THE LAST MESSAGE 海猿』(2010)、『BRAVE HEARTS 海猿』(2012)と続いた。また、松井優征による大ヒット漫画を実写化した『暗殺教室』『暗殺教室~卒業編~』(2015・2016)や、TVドラマ「MOZU」シリーズ(2014・2015/WOWOW)、『劇場版MOZU』(2015)なども話題に。また「ダブルフェイス」(2012/TBS・WOWOW)では、東京ドラマアウォード2013単発ドラマ部門グランプリを獲得した。そのほかの作品に『逆境ナイン』(2005)、『銀色のシーズン』(2008)、『おっぱいバレー』(2009)、『ワイルド7』(2011)、『OVER DRIVE』(2018)など。

    太陽は動かない
    著者:吉田修一
    発売日:2014年08月
    発行所:幻冬舎
    価格:847円(税込)
    ISBNコード:9784344422452
    森は知っている
    著者:吉田修一
    発売日:2017年08月
    発行所:幻冬舎
    価格:715円(税込)
    ISBNコード:9784344426436

    ―― 原作『太陽は動かない』が映像化困難といわれてきたのには、主人公が世界のあちこちを飛び回りながら大胆なアクションを繰り広げるスケールの壮大さ、“失敗するとその場で爆死してしまう”という設定のユニークさ、頭脳戦ならではの複雑さ……さまざまな理由があると思います。今回の映画化にあたっては、500ページ超にわたる長編小説『太陽は動かない』に、さらにシリーズ2作目『森は知っている』のストーリーが織り交ぜられていますよね。これを1時間50分にまとめ上げるのは、なかなか大変なことだったのではと思うのですが。

    初期の段階では、シリーズ1作目『太陽は動かない』を映画化するということでスタートした企画だったんです。「鷹野一彦シリーズ」は、吉田修一さんの小説では珍しい、アクション満載のノンストップ・サスペンスです。この迫力をどこまで映像で表現できるかはもちろん重要でした。スパイ映画というと「007」「ミッション・インポッシブル」など海外作品のイメージが強いかもしれませんが、日本の話でありつつ世界を股にかけるスケール感を、違和感なく、純粋にエンターテイメントとして楽しんでもらえるようにという点は特に意識しましたね。

    それに加えて、ただハードなアクションシーンだけではなく、ドラマとしても見応えのある作品にしたいなと思っていました。それで、前日譚にあたる『森は知っている』と2作あわせて1本のストーリーにしよう、ということになったんです。

    ▼小説シリーズ3作目『森は知っている』では、鷹野の生い立ちや【AN通信】のエージェントとなった経緯も描かれる。映画では高校生時代の鷹野を、オーディションで選ばれた新人・日向亘が演じている。

    主人公の鷹野って、非常にわかりにくい男じゃないですか。『太陽は動かない』は、鷹野が成長していく話ではないし、そもそも鷹野は“正義”をもっていない。何か大義があって動いているわけじゃなく、目的はミッションを遂行すること、それだけなんですよね。だから、何も予習せずに映画を観たとき、観てくださる方にとって、どう物語に自分の視点を置くかが難しいんじゃないかという懸念があったんです。

    今作に関しては、ストーリーのあちこちに重要な要素を散りばめておいて、ラストまでたどり着いたときに全体としての世界観が理解できるようなつくりにしています。タイトルやメインテーマを本編の最後にもってきたのも、そういう意図からです。

    ―― なるほど。エンドロールを観ながらどこか“始まった”ような感覚があったのは、だからなのかもしれません。

    実は、最初からシリーズものにしたいなと思って作っていたんですよね。『太陽は動かない』をこのスケール感で実現させるために、ドラマと映画を連動させてひとつのプロジェクトにしようという構想が立ったとき、もう映画のほうの脚本はあらかたできていたので、3作目の『ウォーターゲーム』を原作にドラマを制作しようと吉田さんに相談したんです。そうしたら、吉田さんのほうから「できれば『ウォーターゲーム』は、ヒットしたあかつきに第2弾として映画化してもらいたい」と言っていただけて。

    ウォーターゲーム
    著者:吉田修一
    発売日:2020年08月
    発行所:幻冬舎
    価格:825円(税込)
    ISBNコード:9784344430136

    なので、すでに続編の構想もなんとなく頭の中にあるんです。もし撮れることになったら、続編は『太陽は動かない』がどういうものか知ったうえで観ていただけるので、もっとエンタメ色の強い、鷹野や田岡だけでなく、キムやAYAKOまで含めて、キャラクターを魅せることに振り切った作品にできると思います。

    ―― 鷹野一彦役に藤原竜也さんをキャスティングするという案は、会議でものの数分のうちに決まったそうですね。演技力の高さとハードなアクションもこなせる俳優、ということで文字通り即決だったわけですが、相棒の田岡を演じた竹内涼真さんについてはいかがでしたか?

    鷹野が「わかりにくい男」なだけに、田岡は重要なキャラクターです。田岡は勢いがあって生意気な一方、正義感があり、死の恐怖が頭から離れないという弱さも持っています。原作小説ではもっとハードで刹那的な人物として描かれていますが、主役級の存在感でありつつ、観てくださる皆さんが視線を重ねやすい存在として、竹内くんに演じてもらいました。これだけハードなアクションシーンが続く作品は初めてだったと思いますが、そんななかでも体当たりで演じてくれました。

    (藤原さんとは)俳優としてだけでなく、事務所の先輩後輩でもありますし、現場でも待ち時間含めずっと一緒にいたので、竹内くんにとっては「藤原竜也」というプロフェッショナルを間近で見て感じるまたとない経験になったと思いますし、竜也にしても、後輩がいることで「音を上げられない」「つらそうな顔は見せられない」と踏ん張っていたと思います。それがいい緊張感として映画にも現れていて、監督としても楽しかったです。

    ―― 黒ずくめの鷹野と並んだときの、田岡の柄シャツ姿も印象的でした。

    あの柄シャツは、竹内くんのアイデアによるものなんですよ。衣裳合わせのとき、僕が衣裳部に用意してもらったアロハシャツを着た竹内くんが「この服、田岡にしてはちょっと若いんじゃないですか?」って言ったんです。

    僕はもともとファッションに詳しくないので「若い田岡の役なのに『服が若い』ってどういうことだろう?」と首を傾げていたんですが、竹内くんいわく「この衣裳だと、大学のキャンパスにいても普通の大学生に見えてしまう」と。「大学にいたら浮いてしまうくらいのほうが、田岡らしいんじゃないか」と言うんです。彼の中に、田岡のイメージとして「若いなりにも、普通の人生からはドロップアウトしている感じ」というのがあったんでしょうね。それでああいう衣裳になったんですが、竹内くんはセンスがいいなと思いました。僕だったらああいうアイデアは出なかったです。

    ―― 本作は、ブルガリアで1か月にわたって撮影されたアクションシーンも最大の見どころの一つです。物語の舞台として、また鷹野・田岡のキャラクターを見せるうえで、このブルガリアという土地はどんな点が魅力的でしたか。

    ブルガリアは、ヨーロッパといっても絵葉書のような風光明媚な景色ではない、独特の匂いや湿度、温度の感じられる土地でした。共産主義体制下の頃の大きな団地なんかがまだ残っていて、もう廃墟同然になっているものもあるのに、その中に人が住んでいるんですよね。自然豊かな島で暮らしていた少年期とは対照的に、大人になってからの鷹野は、人間の生活から生まれるノイズや汚れ、街角のゴミの匂い、排気口の湯気、そういうものに囲まれる姿を描きたかったんです。

    ブルガリアでの撮影は、ハリウッド大作も手がけてきたB2Y社との大規模なロケが実現できただけでなく、そういう生活感が『太陽は動かない』の世界観にぴったりだったのもよかったです。当初は脚本に、ざっくりした設定の架空の国を置いて作っていたんですが、その頃B2Y社による撮影誘致説明会で魅力的なロケ地のプレゼンがあり、すぐにブルガリアに渡りロケハンを行なったので、そのあたりも具体的に脚本に盛り込むことができました。

    ―― それでは最後に、羽住監督の「エンタメ」についてお聞きします。監督は、小学生の頃は作家になりたかったそうですね。それが『第三の男』に出会ったことで、強く「自分のやりたいエンタメはこれだ」と意識し、映画監督を志すことになったとか。

    当時まだ「エンタメ」という言葉も知らなかった子どもの頃、江戸川乱歩の『少年探偵団』や『怪人二十面相』のシリーズを学校の図書館で借りてきて、土曜日の夜に一冊ずつ読むのが好きでした。その頃の小学校は、土曜日も授業があったんですよ。なので、唯一土曜日だけが夜ふかしできる日だったんです。本を読んでいるときのワクワクする感じ、次が楽しみで待ちきれなくなるようなものを自分も作りたいなと思っていました。とりわけ推理ものやミステリーが好きだったというわけではないんですが、苦手な歴史ものでも、歴史ミステリーは好きなんですよね。

    『第三の男』に出会ったのは中学2年生のときです。1949年の映画で、当時はリバイバル上映されるか、テレビのオンエアを待つかでしか観ることができない環境でした。有楽町の小さな映画館でやっているのを見つけてやっと観ることができて、そのときの衝撃は今でも覚えています。小説を読むのとは違う、映像としての表現の細かさ、情報量の多さに圧倒されました。特に、ジョゼフ・コットン演じるマーチンスが、ウィーンの街の暗闇に死んだはずのハリーの姿を見るシーン。明かりがつくとそこにオーソン・ウェルズ(ハリー役)の顔がパッと浮かび上がって、メインテーマが流れるなか、彼がニヤッと笑うんです。その瞬間に「自分がやりたいのはこれだ!」と思いました。

    「なんだか面白そうだ」と思ってお客さんが楽しみにしていて、観るとさらに驚きがある。それが、僕が映画監督としてやりたいエンタメです。原作ファンの方も、ドラマ版を観ていない方も、鷹野がどんなふうにスクリーンの中で生きているのかを楽しみに、劇場に足を運んでいただけたらと思います。

     

    映画『太陽は動かない』作品情報

    原作:吉田修一「太陽は動かない」「森は知っている」(幻冬舎文庫)
    監督:羽住英一郎
    脚本:林民夫
    出演:藤原竜也、竹内涼真、ハン・ヒョジュ、ピョン・ヨハン、市原隼人、南沙良、日向亘、加藤清史郎、横田栄司、翁華栄、八木アリサ、勝野洋、宮崎美子、鶴見辰吾、佐藤浩市 ほか
    制作会社:ROBOT
    主題歌:King Gnu「泡」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
    配給:ワーナー・ブラザース映画

    ©吉田修一/幻冬舎 ©2020 「太陽は動かない」製作委員会

    映画公式サイト:taiyomovie.jp
    公式Twitter:@taiyowaugokanai #太陽は動かない




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