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時代小説の中でも近年注目を集めている文庫書き下ろしから、特にいま読んでおきたい作家8人のシリーズを担当編集者が紹介する「時代小説文庫、いま読むならこの作家!」。今回ご紹介するのは坂岡真さんの「鬼役」シリーズです。
いまや大人気シリーズとなった「鬼役」ですが、当初は7か月連続刊行でスタートしました。
連続刊行を続けるうちに、部数はまさにうなぎ上りとなり、大ヒットシリーズとなりました。
その人気の秘密は、主人公とその周りの登場人物にあります。
シリーズの主人公は、またの名を「鬼役」と呼ばれる将軍の毒味役をする矢背蔵人介(やせ・くらんどのすけ)という人物。この蔵人介という主人公は、毒味御用の傍ら、「裏御用」をも担っており、裏御用では、幕府に巣食う奸臣や悪を成敗します。
そして、この「鬼役」シリーズを盛り上げているのが、主人公を支えるちょっと変わった家族たち。養母の志乃は、京の洛北にある八瀬の出身で大名家の剣術指南役もかつて務めたほどの手練れで薙刀の名手。妻女の幸恵は小笠原流弓術の達人。成敗御用を陰で支える用人の串部六郎太は臑刈りで知られる柳剛流(りゅうごうりゅう)の遣い手、義弟の徒目付(かちめつけ)・綾辻市之進も柔術の練達と一家揃って遣い手揃いです。ただ、蔵人介の実子・鐡太郎だけは武術が苦手で、いまは勉学のために大坂に修行に出ています。
この周囲の人物が、矢背家にさまざまな波瀾を起こし、また、蔵人介を一方では支えています。そこに笑いあり、涙あり、そして最後にはじんわりと家族への思いがこみ上げます。
まさに、矢背家の人々はある意味、時代小説の「サザエさん」ともいえる愛すべき人々なのです。
巻末の著者直筆イラストが入った「鬼役メモ」も話題となっており、小説の中身と併せて、これからさらにベストセラーとなるのは必至。見逃せないシリーズとして、今後もご注目ください。
(光文社 文庫編集部 松岡俊)
坂岡 真(さかおか・しん)
1961年、新潟県生まれ。11年の会社勤めを経て文筆の世界へ。花鳥風月を醸し出す筆致の時代小説を描く。その作品の質の高さには定評があり、「鬼役」シリーズは驚異の7か月連続刊行で話題となる。
【ほかシリーズ作品】
「ひなげし雨竜剣」(光文社文庫)、「照れ降れ長屋風聞帖」「帳尻屋始末」「帳尻屋仕置」(双葉文庫)、「うぽっぽ同心十手裁き」「死ぬがよく候」(徳間文庫)、「のうらく侍御用箱」「新・のうらく侍」(祥伝社文庫)、「あっぱれ毬谷慎十郎」(角川春樹事務所 時代小説文庫)
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(「新刊展望」2016年4月号より転載)