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  • 『哀愁しんでれら』土屋太鳳インタビュー:“愛情”と“諦め”を積み重ねて寄り添った「小春」というヒロイン

    2021年02月04日
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    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    〈なぜその女性は、社会を震撼させる凶悪事件を起こしたのか〉
    〈女の子は末永く幸せに……暮らせたのでしょうか〉

    予告編映像の不穏なフレーズが印象に残っている人も多いであろう、2月5日(金)公開の映画『哀愁しんでれら』。同作は、主演をつとめる土屋太鳳さんが「3度断った難役」に挑んだ作品としても公開前から注目を集めてきました。

    しかし、その“難役”小春について、土屋さんは「普通の子だ」と語ります。今回は土屋さんに、小春という主人公のこと、大きな支えとなった田中圭さんの存在、『哀愁しんでれら』の物語に対するご自身の思いなどを聞きました。

    土屋太鳳(つちや・たお)
    1995年2月3日生まれ、東京都出身。2005年に芸能界デビュー。2008年に『トウキョウソナタ』(黒沢清監督)で映画初出演。NHK連続テレビ小説「花子とアン」(2014)に出演し、翌2015年の「まれ」では主演をつとめ一躍国民的女優に。2016年エランドール賞新人賞、日本アカデミー賞新人俳優賞、2017年TAMA映画賞最優秀新進女優賞、2018年には『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(瀬々敬久監督)で第41回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。2020年10月には初ミュージカル「ローマの休日」で主演をつとめた。また、Sia「Alive」日本版MVでの圧巻のダンスや、世界的ピアニスト ラン・ラン氏と“霜降り明星”粗品氏とのピアノ共演「クラシック・マッシュアップ」など幅広く活躍している。
    そのほかの主な映画出演作に『orange―オレンジ―』(橋本光二郎監督)、『青空エール』(三木孝浩監督)、『累―かさね―』(佐藤祐市監督)など。『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』(飯塚健監督)、『大怪獣のあとしまつ』(三木聡監督)が公開待機中。Netflixドラマ「今際の国のアリス」(佐藤信介監督)配信中。

    ――『哀愁しんでれら』で小春を演じることについて、最初のオファーがあった時、どんなことを思われましたか。

    自分の中の“本能”が警戒しているのを感じました。「社会を震撼させる凶悪事件を起こした」とありますけれど、小春って、狂っているわけじゃないんですよ。ごく普通の女の子なんです。時間が進むにつれてどんどん振り幅が大きくなっていくけれど、抱えている気持ちは私たちと同じです。それを監督は、どんなふうに撮りたいんだろう? 計算しつくされた展開によって、それがかえって「ほら、やっと幸せになったはずなのに、どんどんおかしくなっていくぞ」というふうに見えてしまったら……。そう考えて、お断りさせていただきました。

    それから監督といろいろお話させていただいて、4回目のオファーをいただいて。その時にもう一度台本を読んだら、小春が、自分を表現してくれる人を求めて泣いているように感じたんです。「誰か私を見つけて」って。同じ女性として小春に寄り添いたい、小春には、一人の女性として幸せであってほしいという思いが強くなって、やっぱり私がやらせていただくべきだと感じました。

    計算しつくされてはいるんですけれど、監督も「こういうものが撮りたい」という感覚的な部分を共有してくださったし、その1回のテイクでしか撮れないものも大切にしてくださいました。その判断の仕方がすごく素敵でしたね。今は、そうやって一つひとつの段階を踏んでおいてよかったなと思っています。こんなに物語に対して警戒心を持つって、本当にめったにないことなんですよ。

    ―― 日々さまざまな出来事があるなかで、つい物事を「正しいか・正しくないか」で判断したり、「なぜそうなったのか?」を追求しがちになってしまうことって多いと思うんです。でも『哀愁しんでれら』は、“凶悪事件=よくないこと”が起きると最初から明示されていながら、物語としての味わいが事件の内容や原因とは違うところにあるなと思っていて。

    そうなんです。これからご覧になる方は、小春という“普通の女の子”のその時その時の気持ちに、ちょっと自分を重ねてみてほしいです。

    ―― 赤や紫、黄色といった「色」が効果的に使われているためか、場面や小春の心情の一つひとつが強く印象に残っています。

    「色合い」で物語を表現していくことは、スタッフ皆さんすごくこだわっていた部分です。あるシーンで監督に「ワインを使いませんか?」と提案した時にそのことを教えてくださって、すごく感動して。先ほど警戒していたとお話ししましたが「ああ、それならもう、私は監督を信頼して演じさせていただくしかないな」って思いました。美術も衣装も、本当に素晴らしいですよね。大悟さんのアトリエは特に怖かったです。

    ―― 小春の夫・大悟を演じた田中圭さんとは共演作も多く、『ヒノマルソウル』でも夫婦役をされていますね。田中さんの存在は、どのようなものでしたか。

    すごく安心感がありました。圭さんって、すごく「陽」なんですよ。自然体だし、ご自分の思いに逆らうようなことはしない方なので、委ねられるというか、ついていける、信頼できる存在です。撮影が始まってすぐの頃も、私がまだちょっと不安に思っていた時に「どうしたの?」と声をかけて、プロデューサーさんやスタッフの皆さんと一緒に話を聞いてくださって。「私、子どもみたいだな」と恥ずかしくなりつつも、素敵なチームだなあと感じました。圭さんは全力で受け止めてくださるので、お芝居の中でもコミュニケーションがとれるんですよね。包み込まれているような感覚でした。

    でも同時に、すごく頭のいい方だから、いろんなことを分かったうえで、人には見せない部分も持っているんじゃないかなと思っています。今はそのバランスをうまく保っているけれど、若い頃はひょっとすると少し違っていたかもしれない。『哀愁しんでれら』では、その「内側でグツグツしている感じ」が、もしかすると大悟という人物とすごくシンクロしていたんじゃないかなって思います。

    ―― 小春を演じるにあたって、撮影に入るまでにどんな準備をされましたか?

    夫婦といっても大悟にとっては再婚ですし、私自身はまだ結婚もしていないので、母をはじめいろんな方に「母親ってどういうものですか」とお話を聞きました。本当は撮影前に、COCOちゃん(ヒカリ役/大悟の娘)と1か月くらい、遊んだり、一緒にご飯を食べたりする時間が作りたかったんですけれど、なかなか難しくて……。

    いろんな方にお話を聞いて「ああ、母親って本当に大変なんだな」「ありがたいな」と思いましたし、役作りをするうえで、「母親になりたい」と思うのって悪いことじゃないんだなあとも思いました。

    ―― 実際に撮影に入ってからはいかがでしたか。

    20代前半で“普通の女の子”をたくさん演じさせていただいて、心の中でいろんな「本当の気持ち」がふつふつしているのを経験してきたので、小春はそれが積み重なって膨らんで、ある時にバァンと弾けるような、集大成といえる役だったと思います。10代後半にエキセントリックな役をたくさん演じさせていただいたので、感情がどんどん変化していくことに対しては、難しさを感じることは少なかったです。

    小春が変化していくさまはメイクや髪の毛、服装などでも表現されていますが、私自身は、小春の“諦め”のようなものを自分の内面に積み重ねていくことを意識しました。

    私たちも、普段生活していていろんな感情が生まれる中で、会社でも学校でも、我慢したり、不安をおさえたりして「普通」でいようとしますよね。でも時に、一生懸命自分の思いを伝えようとすることがある。そういう時に、まったく自分の気持ちが伝わっていなかったり、相手が受け取るつもりがないのを感じると、「あ、もう大丈夫です」って、思いや熱が一瞬でストンと落ちるのを感じませんか? それを感じながら演じていました。

    ―― 小春は、大悟の再婚相手であると同時に、ヒカリにとっては“突然できた新しい母親”です。ヒカリを演じたCOCOさんとは、どんなふうに母娘の空気感を作っていきましたか?

    COCOちゃんはすごく素朴で可愛らしくて、それから優しいんですよね。「こっちん」「たおちん」って呼び合ってるんですけど、海の近くの現場で「少し寒いな」と思っていた時にも、こっちんが「たおちんの手、すごく冷えてる」ってカイロで温めてくれたんです。

    ひとりでに愛情が湧いてきて、こういう積み重ねが「この子の母親になりたい」という気持ちを作っていくんだろうなと思いました。こっちんが頑張ってくれたから私も頑張れたし、“母親”を演じられたんだと思います。

    ―― 本作は「女の子は誰しも漠然とした一つの恐怖を抱えている。わたしは幸せになれるのだろうか?」という言葉から始まります。土屋さんご自身も「幸せになれるか」に対して不安に思うことがありますか?

    あります、あります。この間も「幸せになれるのかな、なれなかったらどうしよう」「頑張りが報われない人生だったらどうしよう」って、苦しくなった時がありました。

    ――「報われるだろうか」って、確かに大きな不安ですね。目標を細かく立てて「大きな結果はまだ出ていないけど、これはできた」というのを自信にしていかないと、折れてしまいそうになります。

    分かります。2020年10月に初めてのミュージカルに挑戦したんですが(「ローマの休日」)、映像作品には映像ならではの大変さ、舞台には舞台ならではの大変さがある中で、自分を認めてあげられるかどうかがすごく大事になってきて。不安に思っていることをワーッと書き出しながら、「不安がいっぱいあるのも、人間だから仕方ないよね」「今日はここができなかった、でもこれはできたよね」って毎日振り返って、「明日はこれを頑張ろう、改善できたらまたこのノートに書こう」って自分を奮い立たせていました。

    ―― その後、苦しみを軽くすることができたのでしょうか。

    いつも母に相談するんです。その時も、母に「太鳳、幸せになれないかもしれない」って悩みを聞いてもらいました。そうしたら「あなたは今、幸せっていう『結果』しか見てない。結果は目の前のことの積み重ねなんだから、今を大事にしなさい」「今幸せだと感じているなら、それでいいのよ」と言われて、なるほどなって。

    幸せって、実体のないものじゃないですか。だからつい結果ばかり見ちゃうけど、今を大事にすればいいんだ、今幸せならきっと大丈夫だと思ったら楽になりました。

    私自身は、『哀愁しんでれら』に登場する人々の行動に“正解”はないし、物語の結末を“これこそがリアル”だと思っていないです。小春、大悟、ヒカリ、ご覧になる方にもそれぞれに幸せの形がある中で、「今を大事に生きる」ことの大切さが伝わるといいなというのが、私の願いです。

    ヘアメイク:尾曲いずみ
    スタイリスト:藤本大輔(tas)
    撮影:チェリーマン

     

    映画『哀愁しんでれら』作品情報

    “足のサイズしか知らない王子様と結婚したシンデレラは、本当に幸せになったのでしょうか?”
    児童相談所で働く小春は、自転車屋を営む実家で父と妹と祖父と4人暮らし。母に捨てられた過去を抱えながらも、幸せでも不幸せでもない平凡な毎日を送っていました。
    しかしある夜、怒涛の不幸に襲われ一晩ですべてを失ってしまいます。そんな彼女に手を差し伸べたのが、8歳の娘・ヒカリを男手ひとつで育てる開業医の大悟。優しく、裕福な大悟は、まさに王子様。「ただ幸せになりたい」と願う小春は、出会って間もない彼のプロポーズを受け入れ、不幸のどん底から⼀気に幸せの頂点へ駆け上がりました。
    シンデレラの物語ならここで“めでたしめでたし”。
    しかし小春の物語はそこでは終わりませんでした……

    脚本・監督: 渡部亮平

    出演:
    土屋太鳳 田中圭
    COCO 山田杏奈 ティーチャ 安藤輪子 金澤美穂 中村靖日 正名僕蔵 銀粉蝶 / 石橋凌 ほか

    TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2016 グランプリ受賞作品

    2021年2月5日(金)全国公開

    aishu-cinderella.com
    twitter @aishucinderella #哀愁しんでれら

    ©️2021『哀愁しんでれら』製作委員会

    哀愁しんでれら
    著者:秋吉理香子
    発売日:2020年12月
    発行所:双葉社
    価格:660円(税込)
    ISBNコード:9784575524277




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