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  • 西野七瀬が大ファンの田島列島と初対談!漫画と作品への熱い思いを語る

    2021年01月28日
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    水は海に向かって流れる 1
    著者:田島列島
    発売日:2019年05月
    発行所:講談社
    価格:682円(税込)
    ISBNコード:9784065144510

    西野七瀬が「この日が待ち遠しかった」と待ち焦がれた対談相手は、マンガ家の田島列島。かねてより「田島ファン」を公言してきた西野は、田島との初対談で何を語るのか。田島作品やこれまでのマンガ遍歴など、マンガについて熱量高めに語り尽くす!

     

    西野七瀬の列島初上陸 “これ以上ない完璧”な初連載作品

    ――西野さんは田島先生の前連載作『子供はわかってあげない』が刊行された頃(2014年9月)から各メディアや媒体でファンを公言されてきました。どのような経緯で本作を知りましたか?

    西野 人からオススメされて単行本を読んだのが最初で、読んだら「好きすぎる……!」と思いました。まだグループ(乃木坂46)で活動しているときだったので、ほかのメンバーにも「とにかく読んで!」って上下巻を渡してオススメしまくってました。

    田島 私は「西野さんがメルマガなどで紹介してくれてますよ」と担当編集から聞かされたときに、本当に申し訳ないんですけど、顔の見分けがついていなくて……。

    西野 申し訳ないだなんて、そんな、全然大丈夫ですよ。

    田島 でも「週刊少年マガジン」のグラビアを部屋の壁に貼って西野さんの顔を覚えたら、ほかの方たちも見分けられるようになりました。

    西野 そんなことまでしていただいて……。

    ――『子供はわかってあげない』の魅力は、どういったところだと西野さんはお感じですか?

    西野 絵柄はほわほわとした和み系ですが、お話のテーマ的にはシリアスで重いところがあります。表紙を見たときには内容の想像がつかなかったので、そのギャップが「めちゃいいなぁ」って思いました。

    田島 ありがとうございます。

    西野 ラストの展開がよくて、全部もっていかれますね……。

    田島 あのラストは、親や友達に読まれたら恥ずかしいなという照れもあったんですけど、そういったものを解放して描きました。親には「絶対に読むな」「読んでも話題にはするな」と釘を刺しておきましたが(笑)。

    西野 ストーリーの本筋とは別に、セリフとか言葉選びも好きです。サクタさんの「もじくんと話したいな」「なんで今夏休みなんだろう」(第18話)みたいなセリフは、同じように思ったことがある人は多そう。活字になっていない、手書き文字のギャグも好きなんですけど、ああいうのはいつ思いつくんですか?

    田島 いやぁ、放っておくとどんどん出てくるので、削ってるんですよ。あんまり全部入れると、ギャグマンガになっちゃうから。

    西野 さりげなく入っていて、前面に押し出していない感じも好きです。

    ――お気に入りのキャラクターはいますか?

    西野 とくに「このキャラが好き」と思いながら読んではいなかったんですけど、門司くんは好きです。「こんな同級生いたらいいなぁ」って思いながら読んでいました。

    ――キャラクターよりは全体の物語を楽しむ感じの読み方なんですね。

    西野 そうですね。好きなところは本当にいっぱいあって、「血田くんのトラウマ」(第1話)とか「習字が上手くなると『火』って書いただけで火が出てきて敵をやっつける」(第3話)とか、冒頭に出てきたなにげない会話が物語の伏線になっているので、自分の中では“これ以上ない完璧(な作品)”だと思っています。個人的には上下巻2冊で完結するところも、人にオススメしやすいんじゃないかと思います。

    田島 新人賞(MANGA OPEN 第24回さだやす圭賞)を受賞したのが2008年(受賞作『ごあいさつ』)で、そこからなかなか連載作をつくれなかったんです。それで「自分が楽しむために」という気持ちで描いたのが『子供はわかってあげない』でした。そういう作品を楽しんでいただけたのは、うれしいです。

     

    ページをめくる手が思わず止まった『水は海に向かって流れる』のラスト

    ――『水は海に向かって流れる』は田島先生の4年ぶりの連載作品です。

    田島 まだ単行本の1巻が出る前に「non-no」(集英社)で西野さんに紹介してもらってビックリました。「non-no」から画像提供の依頼が来たんですけど、お出しできる素材が榊さんの全身図(第1話トビラ絵)しかない段階でした。

    西野 毎月「別冊少年マガジン」で連載を追っていました。第1話から田島さんの世界観があふれていて、ポトラッチ丼とか、発想が独自すぎますよね(笑)。私はここ(家に着いた主人公・直達が2階にあがるところ)が好き。なんか、こういう人たちに囲まれて暮らしている主人公たちが「いいなぁ」って思いながら読んでいました。

    ――タイトルはどうやって決めたんですか?

    田島 ……適当、というか(笑)。

    西野 ええっ。

    田島 私の父が左官屋で、親方から「水は上から下に流れるだろ!」と怒られたときに「いや、水は海に向かって流れるだろ」と心の中で反発したそうなんですよ。私はその話をおぼえていて、いつかマンガのタイトルに使いたい候補としてストックしていました。それを引っ張り出した感じです。タイトルをつけられたマンガが、そのタイトルどおりに育っていってくれました。

    ――最初の段階では、ラストは決めていなかったのでしょうか?

    田島 そうですね。1話目をつくった時点では、直達の父親と、ヒロイン(榊千紗)の母親がW不倫していた設定もなかったくらいです。

    西野 意外です。最後まで通して読んだあとだと、そこが物語の軸だと思っちゃいます。

    田島 最終的には、タイトルに沿うような形でラストにつながりましたね。

    西野 最後まで直達君と榊さんが結ばれるかどうかわからなくて、「どうなるんだろう?」って思いながら読んでいたので、最後の展開にやられました。ラストの1ページ前で「決まった……!」と思ったら、手が止まってしまい、しばらく最後のページをめくれなくなっちゃいました。

    ――では西野さんのいちばんお気に入りのシーンはラストですか?

    西野 他にもたくさんです。直達くんがファミレスで“カツアゲ”したお金を募金箱に入れるところ(第19話)も好きです。あと、泉谷さんが「何を隠そうこの私……」って言うところ(第15話)も、もう可愛い。応援したくなっちゃう。

    田島 描ける顔の種類を増やそうと、テレビを観ながら芸能人をマンガ的にカスタムして描いていた時期があって、泉谷さんは武井咲さんから派生したタイプの顔なんです。

    ――今日、色紙に西野さんの似顔絵を描かれてましたね。

    田島 美人は描くのが難しいです。全然似なくて……。

    西野 えー、それに私的には似てると思いましたよ。田島さんの世界観の私だ、って。

    田島 ああ、よかった。ただの似顔絵じゃなくて、私の絵でなおかつ西野さんの顔にしないと、と思ったんです。がんばって似せました(笑)。

    西野 そういえば『子供はわかってあげない』でも『水は海に向かって流れる』でも、トランスジェンダーや女装のキャラクターが出てきますけど、それはどうしてですか?

    田島 えっと、「売れるマンガにはそういうキャラが出てくる」というジンクスがあったから、です。でも「売れるマンガ」って、連載が長かったりキャラが多かったりするので、必然的にそういうキャラもいたというだけの話なんですけどね。まあ、その……、売れたいんです(笑)。

    ――大事なことだと思いますよ。

    西野 全3巻で完結するので、こちらの作品も人にもオススメしやすいですよね。寄り道をしていないけど、かといって必要な要素だけというわけでもないのが私は好きです。

     

    あたらしいチャレンジに一歩踏み出す原動力

    ――連載を新しく始めるにあたって、原動力となったのは何でしょう?

    田島 ……お金、ですかね?

    ――もうちょっと詳しくお聞きしていいですか?

    田島 『子供はわかってあげない』が幸いにもご評価いただけたんですけど、そこでホッとしてしまったのか、3年ほど次回作が描けない時期が続きました。そうこうするうちに貯金がなくなってきたので、「いまならできる気がする!」と思って担当編集に読み切りを持っていきました。まぁ、それはボツになってしまったんですけど(笑)。ただ「お金がなくなったから描けると思った」ので、「原動力はお金」なんじゃないかな、と思います。

    ――西野さんの場合、グループからの卒業という節目に際しては、どのようなことが原動力となりましたか?

    西野 グループ活動でいろいろな経験をさせてもらったんですけど、ひとりの活動でできることは、まだまだたくさんあるように思えました。壁とか試練があるほうが、すごくやる気が出ます。安定した日々も好きなんですけど、環境を変え、全部“1年目”からやりたい、と。

    田島 やったことないことをやってみたい、といった感じですか?

    西野 そうですね。結果とかは気にせず、「とりあえず経験したい」という思いが強かったと思います。

    ――いまは役者としてのお仕事も多いと思いますが、マンガ原作の映像作品(ドラマや映画など)では、役作りの過程で、原作をどれだけ参照するのでしょうか?

    西野 1回通して読んで、作品の世界観を自分なりにつかんでおきます。そのあとで台本が来るので、あんまり原作に引っ張られすぎないようにします。田島さんの作品は、めっちゃ実写向きだと思いました。映像が想像できます。『子供はわかってあげない』が映画化すると聞いたときには「やはり」と思いました。

    ――西野さんは『水は海に向かって流れる』の榊さんと同い年です。役者目線から見て、榊さんはどのようなキャラクターだと想いますか?

    西野 榊さんはあまりハイテンションになることが少ないので、そういったところは自分に近いのかも? 酔っぱらってワーッとなる回(第14話)もありますけどね(笑)。普段はポツポツとしゃべる感じが魅力なのかな。めちゃくちゃ落ち着いている人ですよね。冷めてるというか、大人だな、って思います。

    田島 ソロの活動では、歌やダンスはやらないんですか?

    西野 グループで活動しているときはライブがいちばん好きでした。家にいるときはずっと音楽をかけていて、歌うこともあるんですよ。田島さんは仕事中は何か聞きますか?

    田島 ネームをやっているときは日本語の歌詞だと邪魔になるので、洋楽かインストゥルメンタルが多いです。川のせせらぎとか。原稿をやるときは、生命力を維持したいというか元気を出したいので、『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN系列)を聞くことが多いです。

    西野 私もお笑いが好きなので、移動中には漫才を聞いたりします。

    田島 「宮下草薙」が好きで、「おもしろ荘」(日本テレビ系列『ぐるぐるナインティナイン』内の一コーナー)に出ている頃から見ていました。「宮下草薙」の漫才に、知り合いからダーツに誘われるネタがあって、それを見ていたから、むーちゃん(猫)のエピソードでダーツを使った(第1話)んですよ。

    西野 そうだったんですね! 主人公にもモデルはいたりするんですか?

    田島 主人公を思春期の男子にしたのは、掲載誌が少年誌だから、という単純な理由です。とにかく男子高校生を主人公にしておけば少年マンガだろう、と。

    西野 身近にいる存在なんですか?

    田島 「自分が男子高校生だったら」みたいな発想はありました。

    ――西野さんは乃木坂46時代に歌っていた曲に、一人称が「僕」の歌詞もありました。そのときはどうでしたか?

    西野 曲自体の世界観を考えます。この曲では男の子の主観なんだな、と。自分がその男の子に感情移入して歌うような感じではなかったです。

    田島 私の場合、マンガには感情を乗せないと描けないです。直達が泣いたシーン(第16回)は、ネタ出しというか、最初に言葉を書き出しているときに、「この子は怒りたかったんだ」と気づいて、私もバーッと泣いてしまいました。

     

    西野の犬マンガ偏愛とお互いがはじめて描いたマンガ

    田島 普段はどんなマンガを読むんですか?

    西野 『ヒストリエ』(岩明均)とか『ゴールデンゴールド』(堀尾省太)はよく読み返します。あと、ちょっとつらい内容ですけど『ハピネス』(押見修造)も好き。『ギャグマンガ日和』(増田こうすけ)は小学生の頃からずっと好きです。

    田島 はじめて買ったマンガは何ですか?

    西野 「ちゃお」(小学館)で連載していた『ぷくぷく天然かいらんばん』(竜山さゆり)です。おもに犬がいっぱい出てくるマンガで、私は当時犬を飼っていたので、動物が出てくる作品が大好きでした。田島さんは?

    田島 私は『ちびまる子ちゃん』(さくらももこ)でしたねぇ。雑誌でマンガを読む習慣がなかったので、アニメで見たものを買う……という感じでした。

    ――西野さんは『銀牙 ─流れ星 銀─』(高橋よしひろ)がお好きなことで有名ですが、どういった影響で読むようになったのですか?

    西野 小学1年生から自宅のパソコンを使うようになって、その頃に流行っていた「お絵かきチャット」で交流したユーザーの方が『銀牙』をよく描いていたんです。その方にオススメされたのがきっかけでした。

    田島 自分がマンガ家だから、私はマンガ家自身が出てくるエッセイっぽい作品(福満しげゆき『僕の小規模な生活』など)が気になるんですけど、芸能人が出てくるマンガはお読みになりますか?

    西野 あんまり読まないです。歴史上の人物が出てくるマンガはよく読みますけど。……って、芸能人じゃないか(笑)。

    ――歴史上の人物というと『銀牙外伝 ─甲冑の戦士─ 雅武』(高橋よしひろ)に織田信長が出てきますね。

    西野 『雅武』読みました! 甲冑を着た犬が刀をくわえたり、馬に乗ったりして戦うんですよ。

    田島 ええっ!?

    西野 私は高校2年まで大阪にいて、高3から上京してきたんですけど、転校前に大阪の同級生から『銀牙』の文庫版の全巻セットをもらったんです。文庫の最後のページにひとりずつ、寄せ書きを書いてくれたんですよ。

    田島 すごく素敵な話ですね。西野さん自身はマンガを描いたことはありますか?

    西野 小学生から中学生の頃は、落書き帳にマンガを描いてました。でも、裏表が白い落書き帳は貴重だったので、普段の落書きは新聞に入っているパチンコ屋さんのチラシの裏に描いてました。パチンコ屋さんのチラシは裏が白いので、お父さんが適当なサイズに切ってストックしてくれていたんですよ。その紙にボールペンでイラストを描いてました。

    田島 いいお父さんですね。

    西野 落書き帳に描くマンガは、鉛筆で下書きして、お父さんに買ってもらった万年筆で清書してました。

    田島 ペン入れするなんて、かなり本格的ですね。それはどういう内容のマンガだったんですか?

    西野 犬の戦いです。

    田島 やっぱり犬なんですね(笑)。

    西野 本当に頭の中が『銀牙』でいっぱいだったんですよ。『銀牙』に出てくるような、胸筋がムキムキの犬ばっかり描いてました(笑)。でも上京するときに読み返したら「これを親に見られたら……!」って恥ずかしくなって、全部捨てちゃったんです。いま思えば、残しておけばよかったなぁ、と後悔してるんですけど。

    田島 時間が経てばそう思えるんですよね。

    西野 あとは絵本を描いてました。表紙のタイトルと絵だけで、中身はないんです。“表紙だけの絵本”をいっぱい描いてました。

    田島 そのタイトルはおぼえてます?

    西野 えっと……、『スイクンのおかげで刺さなくなったスズメバチ』とか……(笑)。当時『ポケモン』が好きだったので……。

    田島 タイトルで中身が想像できるのは、むしろ今っぽいのかもしれない(笑)。

    西野 ほかにも『とっとこハム太郎』が好きだったので、『とっとこパールくん』とか。この“表紙だけの絵本”は捨てていないので、たまに実家に帰省したときに、いまの自分の絵で描いてみたりします。田島さんは、小さい頃はどんなマンガを描いてましたか?

    田島 『ちびまる子ちゃん』の絵柄で、家族を題材にしたマンガを描いてました。おじいちゃんがお風呂でおならをして空を飛んでいっちゃう話とか(笑)。

    西野 なんかちょっと想像できます(笑)。

    田島 やっぱり小さい頃に描くマンガって、その当時に影響されたものがまるまる出ちゃうものなんですねぇ。

    ――初めてお会いして、お互いにどのような印象を持ちましたか?

    西野 「売れたい」とか「原動力はお金」と言うのが意外な感じがしました。でも、それをハッキリと言うところがすごく素敵だと思います。いろいろと知ることができてよかったです。

    田島 西野さんはすごく話しやすいというか、こちらが構えずにすむような感じがあります。親戚の子とおたく話をしているような感じになっちゃいました。

    西野 うれしいです(笑)。

    ――田島作品はどの順番で読むのをオススメしますか?

    西野 最初は『子供はわかってあげない』で、次に『田島列島短編集 ごあいさつ』で、それから『水は海に向かって流れる』がいいんじゃないでしょうか。

    ――田島先生は、いま新作に向けて準備中です。抱負をお聞かせください。

    田島 なかなか形にするのは難しいのですが、なんとかがんばります。

    西野 ファン心理としては「こういう作品が読みたい!」というのはなくて、田島さんの描かれたものならば何でも読みたいです。ファンというか、もう信者みたいな感じですね(笑)。いつまでも待ちます。

    田島 本当にいつもオススメしていただいてありがとうございます。

    写真/神藤 剛
    インタビュー・文 加山竜司

    〈西野七瀬〉
    スタイリング/鬼束香奈子
    ヘアメイク/森 柳伊知


    西野七瀬
    2018年12月に乃木坂46を卒業後、女優として活動中。
    卒業後まもなく、日本テレビ系日曜ドラマ『あなたの番です』に出演し、意外性のある演技で活躍を印象づけた。
    2020年にもフジテレビ系『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』に出演。
    今年の活躍からも目が離せない最旬女優。


    田島列島
    実写映画の公開も控える連載デビュー作『子供はわかってあげない』が各マンガ賞にランクインし話題に。
    4年ぶりの連載となった『水は海に向かって流れる』で手塚治虫文化賞新生賞等を複数受賞。ただいま新作を構想中。


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    ※本記事は、講談社コミックプラスに2021年1月9日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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