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  • 『さんかく窓の外側は夜』森ガキ侑大監督が語る、ホラーにもサスペンスにも嵌らない「現代を描くエンタメ」

    2021年01月22日
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    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    「僕といれば怖くなくなりますよ」

    幼い頃から〈霊が視える〉特異体質に怯え悩まされてきた青年・三角(みかど)の前に現れた、冷川と名乗る〈霊が祓える〉男。互いの能力を活かしてタッグを組み除霊作業を請け負う2人のもとへ、ある日、1年前に起きた未解決殺人事件の捜査協力が舞い込む。

    “犯行時の現場”を視た2人が聞いたのは、犯人の恨みがましい声。

    「ヒ ウ ラ エ リ カ に . . . . だ ま さ れ た . . . .」

    ヤマシタトモコさんによる累計130万部突破のベストセラーコミックス『さんかく窓の外側は夜』が、岡田将生さん・志尊淳さん・平手友梨奈さんら豪華キャストで実写映画化! 1月22日(金)より公開されます。

    今回お話を伺ったのは、映画化を手がけた森ガキ侑大監督。連続殺人事件の謎を解くにとどまらない“新三角”ミステリーの制作エピソードを聞きました。

    森ガキ侑大(もりがき・ゆきひろ)
    1983年生まれ、広島県出身。グラブル、資生堂、ソフトバンク、日清カップヌードル、dマガジン、DAIHATSU、JRAなどのCMを手がけ、CANNES LIONS ACCシルバーなど多数受賞。2018年、初の長編映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』で第39回ヨコハマ映画祭 森田芳光メモリアル新人監督賞を受賞したほか、海外映画祭でも高い評価を得る。「坂の途中の家」(WOWOW)、「時効警察はじめました」(EX)、「満島ひかり×江戸川乱歩シリーズ」(NHK BSプレミアム)などTVドラマでも活躍。

    さんかく窓の外側は夜 1
    著者:ヤマシタトモコ
    発売日:2014年02月
    発行所:リブレ
    価格:692円(税込)
    ISBNコード:9784799714362

    ―― まずは、原作の第一印象についてお聞きします。

    企画段階では第6巻まで発売されていて、そこまで一気に読みました。登場人物のキャラクターがとても立っていて、それぞれの葛藤を描きつつ、エンターテインメントとしてもすごく面白くて、読む手が止まりませんでした。

    全作読んでいるわけではないですが、ヤマシタトモコ先生の漫画は好きですね。『違国日記』も面白かったです。

    ―― 原作『さんかく窓の外側は夜』は2020年12月に完結を迎え、3月に最終10巻が発売予定です。制作時、まだ原作が連載されているなかで、どんなふうに映画のストーリーを作り上げていきましたか?

    脚本を作る段階で、冷川理人(岡田将生)・三角康介(志尊淳)・非浦英莉可(平手友梨奈)という3人それぞれの「成長」を軸にしようと決めていました。

    霊を祓える、霊が視える、呪いを操れる。どれも特異体質、特殊な能力なんですけど、それって実は、僕たち誰しもが持っている「コンプレックス」と同じだと思うんです。3人が自分と同じように“望まぬ能力”を持った人物に出会い、その出会いを通して自分の存在意義・生き方を見つけていく。簡単には手放せないコンプレックスに向き合い、自分自身や周囲の人々とも向き合っていく。それをまずゴールに設定しました。

    映像表現も含めて意識したのは、「リアルとファンタジーの境界線」を作ることです。繰り返しになりますが、彼らの能力は、彼らが生まれながらにして持っていたものです。「もしかしたら本当にこんな能力を持っている人たちが世の中にいるのかもしれない」と、映画をご覧になる皆さんにもリアルな存在として感じてもらいたい。ファンタジーとリアルの間を捉えるバランス感覚と演出は、僕にとっても新しい挑戦でした。

    ―― 映画オリジナルの除霊シーンは、「スワイプして消す」ような感覚にも近くて印象的でした。

    原作では、冷川は霊を「掴んでぶん投げる」のですが、映画では登場人物の感情という“動”を際立たせるために、除霊を“静”なものとして表現しました。

    それから、本作でキーになる「霊」や「呪い」の要素も、単なるホラーとしては描いていません。黒と白の色使いや、霊の造形でも表現していますが、エリカたちの操る「呪い」は、私たちが日々接し、操っている「言葉」の力にも通じますよね。

    ―― 映像に関して、ほかに新たに挑戦したことは。

    具体的な説明は避けますが、冷川の“幼少期の記憶”に重大な影響を与える事件の、まさに現場を描いたシーンです。特殊な能力を持っているという点で冷川と三角は同じ境遇にありますが、人間としてはまったく違う。同じように能力を持っているのに、なぜこんなに冷川の人格に“歪み”があるのか……。それを描くには、あれくらいダイナミックでなければならないと思いました。

    目を背けたくなるような出来事ですが、ある種芸術的に、映像として美しく表現しています。これはひとつ、新しい試みでした。

    ―― 冷川・三角・エリカの人物像は、どのように掘り下げていきましたか。キャスティングや演出において重視したことも伺いたいです。

    冷川と三角については「中性的な雰囲気の方がいいな」と考えていたなかで、岡田くんと志尊くんの名前が早い段階から挙がっていました。岡田くん自身は「20代の頃は、どちらかというと三角のような役をやることが多かった」と振り返っていますが、僕は、『告白』(2010年・中島哲也監督)で岡田くんが演じた新人熱血教師の役がすごく印象に残っていたんです。「もしかすると岡田くんは、自分のなかにそういう一面も持っているんじゃないだろうか」と。

    冷川は、一見穏やかで人当たりがよさそうなんだけれど、時折ゾッとするような冷酷さを見せたり、過度な距離感の近さで人を不安にさせたりするキャラクターですよね。そんなギャップを岡田さんが演じてくださったら、面白いんじゃないかと思いました。

    ―― 冷川という人物は、捉えるのが難しそうですが……。

    壮絶なバックグラウンドを持ったキャラクターなので、なかなか彼を捉えづらいところはあったと思います。もっと“引いて”みましょう、という提案は何度かさせてもらいました。冷川って「明らかに狂っている人」じゃないんですよ。パッと見た印象はイケメンの好青年だし、2~3分話したくらいなら誰もが「なんだ、普通の人じゃん」って思うんです。でも、ある程度の時間を一緒に過ごすようになると「この人、どこかがおかしいぞ」と、こちら側が違和感を覚え始める。それを、志尊くん演じる三角との空気感のなかで足し引きしながら演出していきました。

    三角は、そんな冷川に翻弄され巻き込まれていく“受け側”のキャラクターですが、ある時点から、物語における立ち位置や冷川たちとの関係性がスイッチしていきます。そこをしっかり描きたいなと思いました。

    ―― 平手さんは、あえてエリカの部分しか台本を読まずに撮影に臨んだそうですが、「ほとんど全部、自分に共通していた」と自ら語っているとおり、本当に雰囲気がぴったりでしたね。

    エリカ役をどなたにお願いするかは、岡田さん・志尊さんの出演が決まってから考えたんですが、スタッフ一同満場一致で「平手友梨奈さんに演じてもらいたい」と盛り上がったのを覚えています。事務所へ伺って「ぜひお願いしたい」と口説いて、受けていただけることになりました。

    ―― 冒頭で「3人の成長を軸にした」と話していらっしゃいましたが、映画でどのような結末を迎えるかは悩みましたか?

    そうですね……。やっぱり「めでたし、めでたし。それから3人は幸せに暮らしました」とはならないと思うんですよ。彼ら3人がどんな“それから”を生きていくのか、それこそどんな結末がリアルで腑に落ちるか、あれこれ考えて、ああいう結末にしました。

    ――「無意識に口にしている言葉が、簡単に呪いになり得るんです」というセリフが劇中にありますが、呪いが“なにげない”ものであればあるほど簡単には楽になれないというのも、現代に通じるなと思いました。

    ―― 最後に、森ガキ監督ご自身について伺います。ご自分の性格や個性で「損しているなあ」と思うことはありますか?

    せっかちなところですかねえ。「この鉄もそっちの鉄も、熱いうちに全部打ってしまいたい!」という感じで、こうと思ったらワッとそれだけにしか集中できなくて、休憩するのも苦手なので次々にやることを作り出してしまうんです。自分を見つめ直したり、インプットにもう少し時間をとったりして、いろんなことをもっとゆっくり感じながら生きていけたら、また違ったアウトプットができるのかなあとも思うんですが、なかなか難しいですね。

    ――『ゼンマイシキ夫婦』(2014年)で夫婦を描き、長編デビュー作『おじいちゃん、死んじゃったって。』では家族が描かれました。今作では“運命的な他人”を描いているともいえますが、今後撮ってみたい題材など、考えていらっしゃることはありますか。

    3作いずれも、ベクトルは違っていますが確かに通じるものがあるんですよね。『さんかく窓の外側は夜』は家族映画ではないですが、冷川・三角・エリカそれぞれの人格形成には“家族”が大きくかかわっています。家族との関係や位置づけが少し違うだけで、物語はまったく異なる展開になっていたでしょうね。『おじいちゃん、死んじゃったって。』では「死」も重要なテーマでしたが、このときの「死」のあり方も、知らずしらずのうちに『さんかく窓の外側は夜』での「霊」や「除霊」に通じているところがあるなと、今振り返って思います。

    今後については、時代劇に挑戦してみたいなとずっと思っています。歴史好きなのもあって、かなり前から温めているのですが、なかなか実現できていないんです。でも、できればある程度の年齢になってからじゃなく“若手”と呼ばれる今のうちに撮りたい。30代の今のうちに、「これも時代劇なのか!」と驚いてもらえるような、海外の方々にも楽しんでもらえるような作品を作りたいです。広島県出身なので村上水軍の話も書いてみたいし、アートとして人気の高い春画も題材にしてみたい。春画は、エロティックなシーンをどう表現するかがなかなか難しいですが……。

    実は、企画書自体はすでに20案くらいあるんです。生きている間に何本実現できるかなという感じですね(笑)。

     

    映画「さんかく窓の外側は夜」作品情報

    ストーリー
    冷川・三角、心霊探偵バディの元に持ち込まれた、連続殺人事件の謎。
    死者が遺した謎のメッセージに隠された、驚きの真実とは――?

    書店で働く三角康介(志尊淳)は、幼い頃から幽霊が視える特異体質に悩まされていた。
    ある日、書店に除霊師・冷川理人(岡田将生)が現れる。「僕といれば怖くなくなりますよ」の一言で、三角は冷川と共に除霊作業の仕事をすることに。
    そんな中、二人は刑事・半澤(滝藤賢一)から、一年前に起きた未解決殺人事件の捜査協力を持ちかけられる。調査を進める冷川と三角は、やがて自殺した犯人の霊と出会う。冷川が三角に触れると、犯行時の状況がフラッシュバックのように浮かび上がり、恨みがましい犯人の声が響く――

    「ヒ ウ ラ エ リ カ に . . . . だ ま さ れ た . . . .」

    犯人の霊を通して視た情報を元に、真相へと近づいていくふたりの前に現れたのは、呪いを操る女子高生・非浦英莉可(平手友梨奈)。

    〈ヒウラエリカ〉とは何者なのか? 連続殺人事件との関係は――?
    死者からのメッセージの謎を解き明かそうとする二人は、やがて自身の運命をも左右する、驚愕の真実にたどり着く…。

    出演:
    岡田将生 志尊淳 平手友梨奈
    マキタスポーツ 新納慎也 桜井ユキ 和久井映見
    筒井道隆 滝藤賢一

    原作:ヤマシタトモコ「さんかく窓の外側は夜」(リブレ刊)
    監督:森ガキ侑大
    脚本:相沢友子
    音楽:山口由馬
    主題歌:
    ずっと真夜中でいいのに。「暗く黒く」(EMI Records / UNIVERSAL MUSIC)
    配給:松竹

    https://movies.shochiku.co.jp/sankakumado/

    1月22日(金)全国ロードショー

    © 2021映画「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 ©Tomoko Yamashita/libre




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