人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア「ほんのひきだし」

  1. HOME
  2. 本と人
  3. ひと・インタビュー
  4. 復活した「S Cawaii!」が目指す“雑誌”と“雑誌編集部”のこれからのカタチ

復活した「S Cawaii!」が目指す“雑誌”と“雑誌編集部”のこれからのカタチ

2000年9月に創刊され、20周年を迎えた雑誌「S Cawaii!」。惜しまれながら2018年に休刊した同誌が、2020年12月17日発売の2月号から定期刊行雑誌として復活しました。

その舞台裏には、「こんな時代だからこそ」と雑誌作りに取り組む作り手ならではの熱意がありました。雑誌編集にかける思いと今後の展開について、「S Cawaii!」管轄・メディア開発本部長・前田起也さんに寄稿していただきました。

Scawaii! (エス カワイイ) 2021年 02月号
著者:
発売日:2020年12月17日
発行所:主婦の友社
価格:870円(税込)
JANコード:4910019030218

 

雑誌編集部というものは

2020年10月1日、主婦の友インフォスは、主婦の友社から「S Cawaii!」の事業譲渡の発表を行いました。そして同時期にブランドとしての20周年を迎えました。この時代ならではといえる「雑誌ブランド」の売却・買収にあえて出版社として参戦しました。

実は定刊雑誌だった「S Cawaii!」は一度、2018年に休刊しています。ここ2年はムックとして不定期に刊行されていました。

私たちはこの12月17日発売号から再び「定期刊行申請」を行い、12月・3月・6月・9月と年4回からスタートしますが、臨時増刊やムックなどを含めた多様な流通形態を駆使し、年間で12冊を超えるS Cawaii!ブランドの「紙の発行」に取り組んでいくつもりでいます。

「この時代に再び定刊化??」と思われる方もいらっしゃると思います。しかし“20年続いたブランド”って実は周りを見渡してもそんなに世の中にないですよね? あんなに流行っていた、数百万人がやっていたようなアプリやサービスにしても既に消えているものもたくさんあります。ものすごい勢いで消費されています。

激動の2000年代はiモードからスマホ、そして動画やアプリなど雑誌ブランドにとっては厳しい時代が続きました。しかし消費されるスピードがこれだけ早まっていても、まだ雑誌のブランド力は残っています。

毎月毎月、何十万部が書店という店頭に積まれ、コンビニの棚で、面で、ロゴやブランドを見せ続けてきた長い年月……そこに関わってきた数多くのモデルや商品、そして時代を彩るアーティストたち……カルチャーとしても時代性のあるファッションやメイクを扱っている。

そんな風に「世に知られているブランド」はなかなかありません。しかも多くの編集者たちが、時間とコストと熱量とプライドを思い切りかけ、タスキをつないできたブランドです。その資産価値(のれん代)は計り知れないと思います。

「雑誌は終わった」「紙なんて古い」「コストもかけられない」……そんな言葉は笑い飛ばして紙だけで年間12冊以上は作っていきます。私たちは「雑誌も作る」し「YouTube番組も作る」し「D2Cも挑戦」していきます。

紙はブランドの一つ……というのは簡単で、皆が口酸っぱく言っていることですが、あえて新しい環境にブランドを放り込むことによって、リアルにブランドを客観視できたのも良い効果を生むと思っています。

ベタですが何より「雑誌編集部」という組織体が好きなんですよね。ものすごい生き物であり生物(なまもの)だと思っています。雑誌編集部にとって重要なのはチームでプレーすること。異なる人間同士が集まって、時にはケンカし、言い合うこともあるけど、読んでくださる人のことだけを考えて全員で1冊を作っていく。

我々の上司は読者です。必ずゴールもある。そんな集団にとって最も大切なのは「取材力」と「目利き力」と「育成力」。今の、これからの面白いヒトやコトを常に探して見つけること。そして育むこと。つまり愛情深い応援団に自らなることです。

「面白いこと、たくさんしたい」「これ自分が見たいから自分でやってみる」というマインドで続けていければ、結果は自然についてくるのかなと……こんな時代だからこそ強くそう思いますね。

YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」ってありますよね。雑誌には出せない「音」が出ているコンテンツですが、テレビというよりもあれは極めて雑誌的なプラットフォームだなと思いました。音楽雑誌やそのインタビューページを開くときって昔はあんなワクワク感がありましたよね。

少しだけ良き時代を見てきた雑誌世代としても、ルールを作り替える(編集)ことによって同じ素材でもまったく景色が変わる……そんな「編集環境」を若い編集者たちに提供できることを目指していきたいと思っています。


主婦の友インフォス「S Cawaii!」管轄・メディア開発本部長
前田起也 MAEDA Tatsuya
1995年主婦の友社入社。取締役・顧問を経て、現在主婦の友インフォス取締役・出版本部長として「S Cawaii!」を管轄。


(「日販通信」2021年1月号「編集長雑記」より転載)

 

創刊号についてはこちら

創刊20周年の「S Cawaii!」が復活!新創刊第1号はKing&Princeが表紙