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  • 恋愛未経験者が“契約結婚”!売れない漫画家と神アシスタントの“不自由”な新婚ラブコメ

    2021年01月09日
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    花森リド:講談社コミックプラス
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    おとなりに銀河 1
    著者:雨隠ギド
    発売日:2020年11月
    発行所:講談社
    価格:726円(税込)
    ISBNコード:9784065214374

     

    恋愛未経験のまま結婚?

    「恋愛を経ずに結婚をした人たち」の話を聞くと少し背筋が伸びる。「結婚すなわち恋愛の集大成!」のようなスコーンとした一本道を想像しがちだけど、実はそうではなく、相手を大切にして、お互いを慈しむ関係を築くうえで恋愛は必須のプロセスじゃないし、恋愛を経ていない結婚にも愛情や恋しい気持ちは存在するのだと思い出すからだ。

    そう、誰かと作り上げていく関係って一本道じゃない。

    『おとなりに銀河』の“久我くん”と“五色さん”の関係も一本道ではない。2人は婚姻関係にあるが……?

    不穏だ。「私の国では」? 五色さん、どこから来た人なの?

     

    とある王族の姫、神アシスタントになる

    “久我くん”はプロの漫画家。ジャンルは少女漫画で、まだヒットを飛ばしたことはないけれど、漫画の原稿料と父親が遺したアパートの家賃収入で幼い弟と妹を1人きりで養っている。

    収入的にも時間的にも余裕がないうえに他人に頼ることが超ヘタクソで、子育てと漫画を描くことに一生懸命な久我くんのもとに、ある日アシスタントの女性があらわれる。

    美しい。彼女は“五色しおり”さん。どうもはるばる遠方から久我くんの暮らす街にやって来たらしい。久我くんの作品のファンだ。

    で、五色さんはめちゃくちゃ優秀なのだ。作業は速いしうまいし文句なし。歴戦のプロアシスタントかと思いきや今回が初仕事。

    そして時々こんな不思議なことをつぶやく。

    五色さんの敏腕ぶりに助けられるものの、トラブルが発生してしまう。今からまともに描くと間に合わないから原稿料を1ヵ月ぶん諦めるか? いや、生活がかかっているから、雑でもなんでもいいから無理やり仕上げる? 究極の選択を迫られた久我くんは……?

    第3の選択「五色さんに助けてもらう」を選ぶ。人に頼ることを不得手とする久我くんが、だ。五色さんの指や手のインク汚れが頼もしい。

    そして徹夜仕事が明けたあと。ぐったり眠る五色さんの腰のあたりに何かが刺さっているのを見つけた久我くんは慌てて助けようとして……、

    五色さんの“棘”とつながってしまう。広がる宇宙と、血相を変える五色さん。そう、この行為が「結婚の契り」だというのだ。五色さんは“流れ星の民の姫”であると身分をあかし、とても強い契約が結ばれたことを説明する。こうして彼らの「結婚生活」が始まる。

     

    「誰かを支配などせずに、愛情を分かち合えないものかと」

    五色さんのいう「契約」はどういうものなのか。

    お姫さまである五色さんにとって非常に有利な契約内容となっている。意思や事情を問わず、2人が離れると久我くんに「罰」が与えられ、久我くんが五色さんに勝手に触れたら触れたで同じく「罰」を受けてしまう。ロマンチックだが非常に支配的で、不穏かつ不自由な関係だ。

    この漫画では「不自由さ」がいろんな形で描かれる。たとえば久我くんの人生にも少しずつ不自由は存在している。でも望んで選んだことも含まれているし、不幸ではない。それは久我くんの弟妹にとっても同じだ。

    久我くんの「なんでもいいんだよ」という言葉、久我くん本人にかけてあげたいよ。

    そして、五色さんが愛読する少女漫画の世界。「両片思いが10巻続くような少女漫画」の不自由さが五色さんは大好きだ。でも五色さんが直面するのは、もっとダイレクトで強引なのにやさしい不自由さだ。

    しきたりの不自由さから解き放たれたい。でも契約は結ばれてしまったし、だったらきちんと恋愛から入りたいし、久我くんのツッコミもごもっともだけど、なんだか納得しがたい……すべてがもどかしくてぎこちない。

    2人は「契約」に沿って少しずつ関係を作っていく。それはラブストーリーと呼ぶものかもしれないけれど、もっと深くてあたたかいものに包まれている気がした。

    こんなこと言われたら泣いてしまう。

    息をのむくらい綺麗なシーンだ。久我くんが描く少女漫画のことを五色さんは「不自由さに胸を打たれる」と評したけれど、私もまったく同じ感想を『おとなりに銀河』に対して抱いている。不自由さのうえに相手を思いやる気持ちを重ねていくと、こんなにあたたかくて奥深い世界がうまれるのか。

    試し読みはこちら

    (レビュアー:花森リド)


    ※本記事は、講談社コミックプラスに2020年12月5日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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