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  • 【Vol.10:崔実】編集者が注目!2021はこの作家を読んでほしい!

    2021年01月02日
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    ほんのひきだし編集部
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    新型コロナウイルスの流行で、〈日常〉が大きく揺らいだ2020年。不安な日々のなか、物語のもつ力をあらためて実感した人も多かったのではないでしょうか。また、そんな1年間にも、新たな物語が紡がれ、物語を生み出す新たな才能も誕生してきました。

    今回は「編集者が注目!2021はこの作家を読んでほしい!」と題して、各出版社の文芸編集者の皆さんから【いま注目の作家】をご紹介いただきます。

     

    講談社編集者 見田葉子さんの注目作家は「崔実」

    崔実(ちぇ・しる)
    1985年生まれ、東京都在住。2016年、『ジニのパズル』にて第59回群像新人文学賞を受賞。同作は第33回織田作之助賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞した。2020年、『pray human』が第33回三島由紀夫賞候補となる。

     

    現代のサリンジャーが描く、魂を揺さぶる希望の物語

    「この作家は、現代のサリンジャーだ」。――「君」への孤独な呼びかけで始まる『pray human』を初めて読んだとき、胸をえぐるような切実な語りに圧倒され、心揺さぶられながら、そう感じました。

    崔実さんは2016年、朝鮮学校に通う少女の「革命」を描いた『ジニのパズル』で群像新人文学賞を受賞。同作は芥川賞候補となり、織田作之助賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞をダブル受賞して大きな注目を集めました。その後長い沈黙の期間を経て、4年ぶりに発表されたのが『pray human』です。

    本作では、17歳のとき精神を病んで入院した少女が、その10年後、精神病棟で過ごした仲間たちとの日々を振り返り、救えなかった親友の死や、子供時代の性的虐待の記憶を初めて人に語ることで、少しずつ、傷ついた魂を甦らせていきます。

    子供や女性に対する大人の暴力や偏見に深く傷つけられながらも、希望を求めてもがき、闘い続ける主人公の物語は、切ないほど美しい場面に満ちた青春小説であり、大切な人との絆を描くシスターフッドの物語でもあります。

    しかし本作を書くことは、崔実さん自身がずっと沈黙してきた過去の記憶と向き合う、きびしい経験でもありました。精神的に追い込まれ、何度も書くのをやめようとしたという彼女ですが、雑誌発表後、本をつくる過程で少しずつ距離をおいて読めるようになり、「この闘いは無駄ではなかった」と感じることができたと言います。

    今もどこかで心の傷を抱え、生きづらさを抱えて沈黙している人たちに、崔実さんがつかんだ希望の光が届くように、と願っています。

    (講談社 文芸第一出版部 見田葉子)

    pray human
    著者:崔実
    発売日:2020年09月
    発行所:講談社
    価格:1,650円(税込)
    ISBNコード:9784065202050

    いとうせいこうさん×崔実さん『pray human』特別対談はこちら

    Vol.11に続く

    ※1月3日 正午公開※




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