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  • 【Vol.6:伊吹亜門】編集者が注目!2021はこの作家を読んでほしい!

    2020年12月29日
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    ほんのひきだし編集部
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    新型コロナウイルスの流行で、〈日常〉が大きく揺らいだ2020年。不安な日々のなか、物語のもつ力をあらためて実感した人も多かったのではないでしょうか。また、そんな1年間にも、新たな物語が紡がれ、物語を生み出す新たな才能も誕生してきました。

    今回は「編集者が注目!2021はこの作家を読んでほしい!」と題して、各出版社の文芸編集者の皆さんから【いま注目の作家】をご紹介いただきます。

     

    東京創元社編集者 古市怜子さんの注目作家は「伊吹亜門」

    伊吹亜門(いぶき あもん)
    1991年愛知県生まれ。同志社大学卒。在学中は同志社ミステリ研究会に所属。2015年「監獄舎の殺人」で第12回ミステリーズ!新人賞を受賞。明治期という時代設定を活かしたミステリの意匠と鮮烈な結末が余韻を残す同作は、日本推理作家協会ならびに本格ミステリ作家クラブの年刊アンソロジーにも選ばれ、新人のデビュー作としては破格の評価を受けた。2018年、同作を連作化した『刀と傘 明治京洛推理帖』でデビュー。本書は「ミステリが読みたい!2020年版」の国内編第1位となり、「第19回本格ミステリ大賞」小説部門を受賞した。

     

    その試み、大胆不敵。伊吹亜門『刀と傘 明治京洛推理帖』

    「第12回ミステリーズ!新人賞」受賞作「監獄舎の殺人」を第2次選考にあたって読んだとき、まずはその大胆さに驚きました。中心となる謎は、“死刑囚はなぜ刑の執行を目前に殺害されねばならなかったのか?”――ミステリ愛好者であれば、この謎を聞いて真っ先に脳裏に浮かぶのは、法月綸太郎氏の傑作「死刑囚パズル」でしょう。しかも今回、選考委員にはまさに法月氏が名を連ねていらっしゃる。

    さては確信犯(←誤用)と身構えて読みましたが、のちに第2次選考会の場では一推しの作品として熱弁を振るうことになりました(私が推すまでもなく、編集部内の期待値は大変高かったのですが……)。そして運命の最終選考会、当の法月氏からも推挽を得て受賞に輝いたことは周知の通りです。

    この挑戦的とも言える受賞に際してのエピソードから、どれだけ武闘派かとやはり身構えてお目に掛かりましたが、ご本人は大変温厚で丁寧な方でした。とはいえ「受賞の言葉」の1行目が「とにかくもう、ミステリが大好きなのです」となってしまう伊吹さんのミステリに対する強いこだわりを見ると、やっぱり武闘派だなとも思います。

    受賞作を連作化した『刀と傘 明治京洛推理帖』は、後の初代司法卿であり近代日本における司法制度の父となった佐賀藩士・江藤新平と、公用人として京における尾張藩の政治工作を一手に担う鹿野師光が、それぞれ信念と苦悩を抱きながらも、維新期の京で起きる奇怪な事件を論理で解き明かしてゆくという、エモーショナルな時代本格推理です。

    とにかく主役2人の人物造形が魅力的で、収録作5作を読み切るのが惜しいほどでした。本書はデビュー作にして「ミステリが読みたい!2020年版」の国内編第1位にランクイン。また、「第19回本格ミステリ大賞」小説部門を受賞するなど、斯界からも高い評価を得ました。

    ここで皆様に朗報を。2021年2月には、待望の新作『雨と短銃(仮)』をお届けいたします。時は慶応元年。上洛した長州藩士が斬られ、下手人は一本道の鳥居道から目撃者の眼前で忽然と消えた――この不可解極まりない事件の始末に乗り出すのは、尾張藩公用人・鹿野師光。『刀と傘』の前日譚であり、著者初となる長編ミステリです。

    不可能犯罪という、まさに本格の華を、幕末という激動の時代で如何に咲かせてみせるのか。気鋭の手腕にご期待ください。

    (東京創元社 編集部 古市怜子)

    刀と傘
    著者:伊吹亜門
    発売日:2018年11月
    発行所:東京創元社
    価格:1,870円(税込)
    ISBNコード:9784488020064

    Vol.7に続く

    ※12月30日 正午公開※




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