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新型コロナウイルスの流行で、〈日常〉が大きく揺らいだ2020年。不安な日々のなか、物語のもつ力をあらためて実感した人も多かったのではないでしょうか。また、そんな1年間にも、新たな物語が紡がれ、物語を生み出す新たな才能も誕生してきました。
今回は「編集者が注目!2021はこの作家を読んでほしい!」と題して、各出版社の文芸編集者の皆さんから【いま注目の作家】をご紹介いただきます。
佐々木愛(ささき あい)
1986年生まれ。秋田県出身。青山学院大学文学部卒。「ひどい句点」で、2016年オール讀物新人賞を受賞。2019年、同作を収録した『プルースト効果の実験と結果』でデビュー。
「料理が好きです!」と言えればいいけれど、そんな自信はない。でも「苦手です」「嫌いです」と本音を言うのは、恥を告白するようで自分が傷つく……。そんな料理に対するコンプレックスを描いたのが、1月27日(水)に発売される、佐々木愛さんの『料理なんて愛なんて』です。
デビュー作『プルースト効果の実験と結果』は短篇集だったので、次は長篇をと、佐々木さんが打合せに持ってきてくださったプロットの一つが「料理が嫌いな女性を肯定する小説」でした。美味しそうな料理が出てきて心が温まる小説はたくさんありますが、“どうしても料理が上手になれない女性”が主人公の小説は、いったいどんな結末になるのか―――。
最初は想像がつきませんでしたが、作者の「この主人公を肯定してあげたい」「この主人公と一緒に答えを見つけたい」という強い思いが、小説を引っ張っていきました。
物語の始まりはバレンタイン。主人公の優花は、チョコレートづくりを諦め、デパートで買った高級チョコを恋人に渡します。ところが、「好きなタイプは料理上手な人」と言ってはばからないその恋人は、「手作りチョコをくれたから」と別の女性の元へ……。
その日から、料理を好きになろうと努力したり、逆に料理から距離をとってみたりと、優花の格闘と迷走が始まります。“料理は愛情”というけれど、料理が嫌いな私の愛情はどこに!?という優花の魂の叫びが行き着くのは、果たしてどんな光景なのか。
そしてこれは、努力をしなければ「普通」からずれてしまう、厄介な男女の物語でもあります。料理の不得意な人も、そうでない人も、幅広く読んでいただきたい作品です。
(文藝春秋 第二文藝部 本川明日香)