'); }else{ document.write(''); } //-->
『天地人』などで知られ、2015年に58歳の若さで急性膵炎で亡くなった火坂雅志さん。その火坂さんの未完の大作を、伊東潤さんが書き継ぎ完成させた上下巻の歴史巨編『北条五代』が、12月7日(月)に発売されました。
2人の実力派による“共作”という形で読者のもとに届けられた本作。その創作過程と読みどころについて、編集を担当した朝日新聞出版 朝日文庫編集長の長田匡司さんに文章を寄せていただきました。
『北条五代』は2011年から「小説トリッパー」で連載が始まりました。火坂雅志さんが長年温めていた題材で、北条氏5代100年にわたる興亡史に挑む、まさに超大作。取材のために北条氏の本拠地があった小田原市に、何度も足を運んでいらっしゃいました。
連載は快調に進んでいたのですが、2015年2月にご病気のために火坂さんが急逝され、未完となってしまいます。私が担当していた伊東潤さんとの打ち合わせで『北条五代』のことで大いに盛り上がり、書き継ぐことをご快諾いただきました。そして連載開始から9年にして完結、ようやく刊行に漕ぎつけることができました。歴史小説界の2人の実力者による奇跡の共作の完成です。
著者逝去により未完となった作品を別の作家が書き継いで完成させる例は、極めて珍しいことです。最近では『屍者の帝国』(2012年、河出書房新社)が挙げられるぐらいでしょう。『屍者の帝国』は2009年に早逝した伊藤計劃さんが構想と冒頭の草稿を遺していた最後の作品で、その後を親友の円城塔さんが書き継いで完成させたものです。
火坂さんの奥様にお話を伺ったり、遺された構想を基にしながらも、伊東さんご自身が持っていらっしゃる北条氏に関する膨大な蓄積と最新史料を縦横に活かして、読み応えのある歴史大河小説に仕上げてくださいました。北条氏5代にわたる文芸作品はこれまでに例がなく、おそらく初めてではないでしょうか。
火坂さんの奥様もとても喜んでくださいました。編集者として30年以上も担当させていただいた私にとっても、火坂さんの最後の作品を世に送り出せたことは編集者冥利に尽きます。
火坂さん、ずいぶんお待たせしましたが『北条五代』をお届けします。ご感想をうかがえると嬉しいです。ありがとうございました。
(朝日新聞出版 朝日文庫編集長 長田匡司)