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子供のころ、なりたかった職業の1つに弁護士がありました。弱きを助け強きを挫(くじ)く、そんな人に憧れていたからです。
と言いつつ、どうあがいても私の頭では司法試験に受かるわけがないので、完全に夢なのですが。
もし自分が司法試験に受かっていたら……、そんな夢の続きを見せてくれるのが『リーガルエッグ』です。
法律家の卵である司法修習生が、裁判官・検察官・弁護士の事務修習を受ける中で、私たちが知らない世界を教えてくれます。
筒松(つつまつ)誠は、国家試験である司法試験に合格した法律家の卵。1年間にわたり、司法修習生として研修しなければならないのですが、まず驚かされたのはそのお給料。
昔、自分の事務所を持たない居候弁護士=“イソ弁” という言葉が流行りました。
高給取りとして憧れの職業だった弁護士も大変な時代になったことは知っていましたが、司法修習生のお給料がここまで安いとは……。
しかも専念義務があるため、アルバイトはできないのです。
筒松が最初に赴任したのは、地方検察庁。ここでは、警察が捜査した記録をもとに起訴不起訴や、罪名求刑が決められます。
ペアを組むのは、同期の角野(かどの)香。
最初に担当した事件は、不起訴2回、罰金1回の処分を受けたことがある老婆の万引き。被害金額は762円!!
なぜ事件を起こしたのか、被疑者の気持ちに寄り添って取り調べをし、老婆の自宅を訪ねるなど、やってはいけないことまでする筒松に対し、イラ立つ角野。
事件をどう処理するのか、検察官になったつもりで読めるのがこの話の面白さです。
私は角野と似たタイプなので、事件に対する判断も同じです。だから筒松の良く言えば純粋、悪く言えば青臭い言動にイライラしっぱなし。
「何で犯罪者のためにそこまでしなくちゃならないのか私にはよくわからない」という角野のセリフに「その通り!!」と思ってしまいました。
しかし、筒松の中にある信念は……、
筒松は、担当した事件の処罰だけでなく、被疑者が犯罪を繰り返さないよう更生させるにはどうしたらいいかを考えているのです。
だから老婆の万引き事件も、「必要なのは刑罰じゃなくて福祉です」「だから起訴すべきじゃありません」と言う筒松。
それに対し指導検事の佐藤静流(しずる)は……、
佐藤指導検事は、ことあるごとにキッパリと言い切ります。これがクールで、なるほど!! と思ってしまうのです。
次に筒松・角野ペアが扱ったのは、女子高生のスカートの中を盗撮した大学生の事件。ここでも2人の見解は分かれます。
被疑者は、前科・前歴なしの初犯、被害者とは示談が成立しているので不起訴という角野の判断に私も同感なのですが、ちょっと考えさせられました。
私は自分なりに勉強したことがあるので、法的な解釈の仕方を理解しているつもりでしたが、それはつまり過去の事例に基づいた判断でしかないのだと気付かされました。
時々、ニュースで見る判決に、時代と合っていないのでは? と疑問を持っていたのに、自分も同じことをしていたのです。
筒松は、こうした杓子定規な考え方で“処理”をするのではなく、被疑者の再犯を防ぐという観点で事件に取り組んでいる人間味溢れる男なのです。
筒松・角野ペアは、この先も意見が対立しそうですが(笑)。
ドラマでしか見たことがない検察官という仕事がどういうものなのか、今回よくわかりました。法律って難しいけれど、やっぱり面白い!! ということを改めて教えてくれる作品です。
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(レビュアー:黒田順子)
※本記事は、講談社コミックプラスに2020年11月23日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。