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新型コロナウイルスの流行で、〈日常〉が大きく揺らいだ2020年。不安な日々のなか、物語のもつ力をあらためて実感した人も多かったのではないでしょうか。また、そんな1年間にも、新たな物語が紡がれ、物語を生み出す新たな才能も誕生してきました。
今回は「編集者が注目!2021はこの作家を読んでほしい!」と題して、各出版社の文芸編集者の皆さんから【いま注目の作家】をご紹介いただきます。
深緑野分(ふかみどり のわき)
1983年神奈川県生まれ。2010年「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。2013年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。2015年に刊行した長編小説『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、2016年本屋大賞7位、第18回大藪春彦賞候補。2018年刊行の『ベルリンは晴れているか』では第9回Twitter文学賞国内編第1位、2019年本屋大賞第3位、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補になる。
もともと家が好きな私ですが、いつも以上に家にこもっていることが多かった2020年ももうすぐ終わりですね。例年以上に、年末年始は家でゆっくり、という方が多いのではないでしょうか。今年は旅行も全然行けなかった、新しい、楽しいことが少なかった……という方にお勧めしたいのが深緑野分さんの『この本を盗む者は』です。
『この本を盗む者は』は本が嫌いな少女・深冬が主人公。「本の街」として有名な読長町に生まれ育ち、家は街の名所にもなっている蔵書庫・御倉館を所有する本読みの家系で……と聞くとなんで本が嫌いになっちゃったの?と思うわけですが、その事情も物語の中で徐々に明らかにされていきます。
そんな深冬がある日御倉館に行くと、蔵書の盗難が発生。すると深冬も知らなかった「本の呪い」が発動して街がヘンテコな姿に変貌してしまいます。小説の世界に呑み込まれてしまったことに気付いた深冬は、呪いを解くために本の世界を冒険することになるのですが――。
深冬を待ち受けるのは、マジックレアリスム、ハードボイルド、ファンタジー、奇妙な味、という、ややコアなジャンルの小説世界。好きな方は「そうそうこれこれ」とにやにやしながら、初めての方はその世界観に魅了されながら、深冬の冒険に夢中になれること間違いなしです。
深緑さんは、「ミステリーズ!新人賞」に入選してから10年。『この本を盗む者は』が5冊目の本になりました。「物語に救われたことはない」と深緑さんは言います。「物語は善でも悪でもないけど、危ないもの、ある種の呪いの力を持っていると思う」と。
物語への恐れ、そして、信頼。それらを持つ深緑さんだからこそ書ける、ワン・アンド・オンリーな作品たちを、是非手に取ってみてください。
(KADOKAWA 文芸・映像事業局 榊原大祐)
〉あなたの街は「読長町」何丁目?『この本を盗む者は』の書店プロジェクトが進行中