• fluct

  • 【Vol.2:渡辺優】編集者が注目!2021はこの作家を読んでほしい!

    2020年12月25日
    楽しむ
    ほんのひきだし編集部
    Pocket

    新型コロナウイルスの流行で、〈日常〉が大きく揺らいだ2020年。不安な日々のなか、物語のもつ力をあらためて実感した人も多かったのではないでしょうか。また、そんな1年間にも、新たな物語が紡がれ、物語を生み出す新たな才能も誕生してきました。

    今回は「編集者が注目!2021はこの作家を読んでほしい!」と題して、各出版社の文芸編集者の皆さんから【いま注目の作家】をご紹介いただきます。

     

    中央公論新社編集者 山本美里さんの注目作家は「渡辺優」

    渡辺優(わたなべ ゆう)
    1987年宮城県生まれ。大学卒業後、仕事のかたわら小説を執筆。2015年に「ラメルノエリキサ」で第28回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。他の著作に『自由なサメと人間たちの夢』『アイドル 地下にうごめく星』『悪い姉』がある。

     

    若手注目作家・渡辺優の新作は、まさかの「クラゲ」小説!?

    小説すばる新人賞を受賞し、『ラメルノエリキサ』で衝撃のデビューを飾った渡辺優さんの新作の主人公は、これまでの渡辺作品に多い、思春期の強い女子から一転、自我の薄い少年だ。

    「新種クラゲ大量発生、新たな犠牲者。十代女性事故死?」(本文より)

    物語の舞台は、周囲6つと中央島を擁する海上コロニー。抽選により選ばれた幸運な人達が日本列島から移り住んでおり、ここでは殺人、傷害、性犯罪、交通事故、違法薬物、違法労働、自殺者がゼロであるため、通称《楽園》と呼ばれていた。

    そんな《楽園》に、新種の猛毒クラゲが出現したことから物語がはじまるが、クラゲが発見されてから7日後、ある少女が死んでしまう。

    少女の名はミサキ。クラゲが大好きで今回の新種発見を誰よりも喜び、様々なコロニーを巡っては情報を集めていた。しかし突然、浮防波堤上から外海に転落死したと発表される。

    コロニーが誇る「七つのゼロ」をはじめて自殺で破ることになった彼女の死。それに疑問を抱いた友人の少年・ナツオは、生前の彼女の行動を辿りながら、自分たちを取り巻く《楽園》の現実を知ることになっていく。

    これまで知ろうともしなかった「世界」を垣間見たナツオが辿り着いた、ミサキの死の本当の理由は――?

    こう書くと、独自設定満載で小難しい世界の物語にも見えるかもしれない。だがこのコロニーがあるのは岩手沖だし、登場人物はみんな普通に生きている人達。

    今作は少し未来の、ifの世界で繰り広げられるが、いつもの渡辺さんらしい独特のユーモアセンスと、油断するとちくっと「毒」を持つ一針を刺してくるようなキャラクター満載の物語なので、そこは安心して読んでほしい。

    一人の少女の死を中心に描かれる著者の「新世界」を、可愛い(?)クラゲを添えてお届けする『クラゲ・アイランドの夜明け』。是非、覗いてみてください。

    (中央公論新社 文芸編集部 山本美里)

    クラゲ・アイランドの夜明け
    著者:渡辺優
    発売日:2020年12月
    発行所:中央公論新社
    価格:1,760円(税込)
    ISBNコード:9784120053665

    渡辺優さん『アイドル 地下にうごめく星』インタビューはこちら

    Vol.3に続く




    タグ
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下

  • GoogleAd:007

  • ページの先頭に戻る