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  • 夢破れた青年と見放された少女がフィギュアスケートで世界を目指す!

    2020年11月15日
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    黒田順子:講談社コミックプラス
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    メダリスト 1
    著者:つるまいかだ
    発売日:2020年09月
    発行所:講談社
    価格:748円(税込)
    ISBNコード:9784065207833

    お金持ちの恵まれた環境に生まれていたら、早いうちから好きな道に進めたのにと何度も思ったことがあります。小さい頃から色々なものを与えられ、学んできた人には、どうしたって敵(かな)わないと思ったことも。
    これがスポーツとなれば、なおのことではないでしょうか。

    アイスダンスの全日本選手権に出場したこともある司(26歳)は、フリーターをしながらアイスショーのオーデションを受け続けるも、落ちてばかり。
    そんなとき、スケートクラブのコーチにならないかと誘いを受け、出会った少女が結束(ゆいつか)いのりでした。

    長いこと「スケートがやりたい」と言い出せなかったいのり。

    1流のスケーターになるには5歳から始めるのが通例なので、11歳のいのりは出遅れており、挫折した姉の二の舞になることを心配した母親は、こんなことを言います。

    頑張っても報われないものに時間とお金を使うんじゃなくて
    もっと別の楽しく出来る事を沢山経験してほしい

    しかし、中学からスケートを始め、お金がなくてコーチを付けられずにいた自分自身の生い立ちと重なった司は思わず……、

    こうして、大会出場資格を得るための“バッジテスト”に向けて、二人三脚が始まります。

    これからどんなライバルが現れるのだろうと期待していたら、真っ先に出てきたのは、ノービスB(ジュニアの下のクラス)で優勝した、いのりと同い年の狼嵜光(かみさきひかる)でした。

    天才少女と呼ばれる光は、スケート初心者のいのりなど相手にしないのかと思いきや、周りから陰口を叩かれるいのりの味方になる、とってもいい子なのです。

    夢見る女の子って、きっとこんななんだろうなぁという、全身からキラキラしたオーラが出ている瑞々しい絵に心が洗われます。

    この作品は、コミカルな要素が一杯なのですが、ふとしたときに出てくる女の子たちの絵が、今にも動き出しそうで本当に可愛い!!

    もう1人、三河弁が達者な小学3年生の三家田(みけた)涼佳、通称ミケも可愛いだけでなく、かなり個性的。
    最初こそ、いのりを連れ回す仲良しでしたが、大人の言いなりになるいのりを見て強烈な一言を放ちます。

    イノリは早く習えとってもスケート向いてないと思うわ
    1人でな~んもできんもん

    小学生だから容赦ないと知りつつも、なんて残酷な言葉だろうと思ってしまいました。下手くそと言われる方が、まだマシだなと。

    さらに、いのりも出場する名港杯初級枠で優勝を狙うミケは、「イノリは1回転しか跳べんだら?」「ミケ2回転(ダブル)サルコウ跳べるでね」とライバル心剥き出しで宣戦布告。

    これに自信を失くすいのりでしたが、コーチの司が今後の練習について、こんな提案をします。
    優勝するために全ての時間を2回転ジャンプの練習に費やすのか?
    あるいは、基礎を固めてから2回転ジャンプの練習をするのか?

    私だったらどちらを選ぶだろう、と考えました。
    いのりが出した答えは私が選んだものと同じで、ちょっぴり嬉しくなりました。

    実は私自身も1人では何も決められない子で、周りの顔色をうかがいやりたいことを諦め、好きな仕事に就いたのも相当遅かったのです。
    だから今までの自分とダブり、“自分主体で自分の人生を決めていく”ことの大切さを改めて感じました。

    “報われない時間”もそうです。スポーツに限らず、“報われない時間”を過ごしたことに苛立ちを覚える人は多いのではないでしょうか?

    だからこそ、「“報われない時間”だと思っていたものが、後々大きな意味を持つことを見せてくれ、司!!」「遅咲きには遅咲きの道があることを見せてくれ、いのり!!」と応援したくなります。
    『メダリスト』は、あまり知られていないフィギュアスケートの裏側を知ることができるだけでなく、思わず夢を託したくなる作品です!

    (レビュアー:黒田順子)


    ※本記事は、講談社コミックプラスに2020年10月18日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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