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  • 『餓狼伝』約2年ぶりの新刊発売!圧倒的な強さを誇る新キャラも登場|夢枕獏『新・餓狼伝 巻ノ五 魔拳降臨編』

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    2020年11月04日
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    細谷正充:「小説推理」BOOK REVIEW
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    カイザー武藤と猿神跳魚。立脇如水と葵文吾。男たちの闘いは続く。その果てに何があるのか。

    夢枕獏の大河格闘小説の熱量は、いつだって圧倒的だ。


    男たちが、ただ闘う。それだけで物語は成立する。夢枕獏の前人未踏の大河格闘小説「餓狼伝」シリーズは、最新刊となる本書でも絶好調。序章では、シリーズでお馴染みのカイザー武藤が、プロレスラーになるまでの経歴が綴られているのだが、これだけで興奮してしまう。ああ、カイザー武藤とは、このような男であったかと感じ入り、すぐさま物語の世界にのめり込んだのである。

    だから場面が、前巻で始まったカイザー武藤と猿神跳魚の試合の最中に戻っても、とまどうことはない。あくまでプロレスラーとして闘う、カイザー武藤の心中を表現した“おれの身体は、隅から隅までプロレスでできている”という一文には胸が震えた。周知の事実だが、作者はプロレスの熱狂的なファンである。そのプロレス愛が、カイザー武藤の闘いに詰まっているのだ。

    とはいえ、この闘いは本書の幕開け。その後、マンモス平田と大龍山の闘い、姫川勉とマカコの闘いが、立て続けに描かれる。そして本書のメインイベントというべき、立脇如水と葵文吾(今頃になって気づいたが、この名前は川口松太郎の『新吾十番勝負』の主人公・葵新吾をもじっているのだろう)の死闘に突入するのだ。

    たっぷりと枚数を費やして書かれたこの闘いが、とにかく凄い。それほど目立つ存在ではなかった如水だが、フルコンタクト空手の北辰館に入門するまでの経緯が描かれ、いっきにキャラが鮮やかになった。自分の父親を殺し、丹波文七との再戦に燃える文吾は、以前からキャラが立っている。そんなふたりが激突。交互に視点を変えながら進行する闘いは、肉体のぶつかり合いであると同時に、何手も先を読む頭脳戦になっているのだ。その果てに文吾がたどり着いた場所が、ぶっ飛んでいる。数十年にわたり格闘小説を書き続けてきた作者だからこそ、到達した描写であった。

    これだけで大満足なのだが、作者は終盤で、新たなキャラを投入する。翁九心という、謎の老人だ。やはりシリーズでお馴染みの梅川丈次と闘わせることにより、九心の他と隔絶した強さを表現。早くも次巻への期待が高まった。作者は本書の「あとがき」で“最終トーナメントに、すでに突入しているのである”と記している。だが、物語の行方は予断を許さない。餓狼たちの闘いが、どのような決着を迎えるのか。ひとりの観客として、最後まで見届けたいのである。

    新・餓狼伝 巻ノ5
    著者:夢枕獏
    発売日:2020年10月
    発行所:双葉社
    価格:924円(税込)
    ISBNコード:9784575008098

    「小説推理」(双葉社)2020年12月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載




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