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キャラクター化された文豪たちが異能を用いて闘う、大人気アクションコミック「文豪ストレイドッグス」がアニメ化! これを記念して、「新刊展望」2014年3月号に収録された、朝霧カフカさん&春河35さんへのインタビューを再掲載します。
朝霧カフカ(あさぎり・かふか)
シナリオライター。『文豪ストレイドッグス』『汐ノ宮綾音は間違えない。』『水瀬陽夢と本当はこわいクトゥルフ神話』(いずれも角川コミックス・エース)の原作を手がける。その他著書に、『文豪ストレイドッグス』のスピンオフ小説『文豪ストレイドッグス 太宰治の入社試験』『文豪ストレイドッグス 太宰治と黒の時代』『文豪ストレイドッグス 探偵社設立秘話』(いずれも角川ビーンズ文庫)、最新刊『文豪ストレイドッグス外伝 綾辻行人VS.京極夏彦』(KADOKAWA)がある。
春河35(はるかわ・さんご)
「ヤングエース」2013年1月号でスタートした『文豪ストレイドッグス』の作画担当として漫画家デビュー。『ソラの星』(岩関昂道/KADOKAWA)挿画など、イラストレーターとしても活躍。
―― 太宰治、国木田独歩、中島敦たち〈武装探偵社〉の社員が各々の異能力を駆使し、マフィアの芥川龍之介、中原中也、樋口一葉らと苛烈なバトルを繰り広げる……。「文豪ストレイドッグス」は、設定のアイディアと、文豪からキャラクタライズされた登場人物たちがすごく魅力的です。キャラクターはどんなふうに生まれるんですか?
朝霧: まずは作家1人1人について本などでよく調べた上で、その人物のある面に着目して、「この性格がそのまま街を歩き出したら……」と考えます。たとえば、太宰治というキャラクターはもちろん本人そのままではなく(笑)、自殺未遂を何度もしたという事柄だけを拡大して、自殺マニアの青年というキャラクターを作りました。マンガ的におもしろくなることが大前提。文豪の方々へのリスペクトだと思って大胆に改造しています。人間にはいろいろな側面があるわけで、ある一方から光を当てたときの影の形からキャラクターを作る。そんな感じです。
春河: 私は、朝霧さんからメールで送られてくる3~4行のキャラクター設定を元にして、絵を描きます。
朝霧: その時点ではまだ明確に決まっていないことが多いんです。たとえば「泉鏡花:豆腐が好きな女の子」と送ると、春河さんが絵にしてくれる。僕はむしろ、春河さんの絵からイメージをもらうことが多いです。
春河: キャラクターデザインは設定重視、マンガ映え重視です。本人に似せて描くと、ボツになることが多いので。たとえば中原中也さんは、ご本人の写真に似せてかわいらしい感じで描いたら「マフィアの貫禄が全然ないからダメ」。10パターンくらい描いてやっとOKが出ました。
―― モデルの文豪たちの作品には、これまで親しんできましたか?
春河: 私は今、勉強しながら描かせていただいてます。
朝霧: 僕は特に海外の作家が好きで、フィッツジェラルド、サリンジャー、レイモンド・チャンドラーなどをよく読んできました。だから、作中にアメリカ文豪が出てくるとワクワク(笑)。日本の作家では太宰治など読んだことのある作品もこの機会に読み直して、「こんな人だったんだ」みたいに感じたことがたくさんありました。中島敦は未読作品がたくさんあって、読んでみたらすごくおもしろかった。
―― その中島敦が主人公。個性の強い文豪が多くいる中、ちょっと意外です。
朝霧: 主人公を濃いキャラにするか、比較的スタンダードな人物を主役にして濃い面々をまわりに配置するか、設定の段階で迷ったんです。結局、「変な人たちに翻弄されて困惑する主人公」という構図にしました。それで中島敦。でも、実は中島敦って教科書に登場することが多い作家なんですよね。中高生の読者から、「中島敦、先週の授業で習いました!」という反響もあって、良かったです。
―― 大事にしている世界観は?
朝霧:「スタイリッシュ大正」。舞台は現代だけど、文豪たちが生きた大正時代の空気をスタイリッシュにアレンジして現代に持ってきている、そんなリミックスのおもしろさがあるかなと思います。古風な台詞まわしや、難しい漢字もあえて使って。
春河: マネしたくなるしゃべり方の登場人物が多いですよね。芥川龍之介の一人称「僕(やつがれ)」なんて、インパクト強すぎ!
―― 少年マンガ的なバトルアクションの興奮もあれば、お気に入りのキャラクターを追う楽しみもあります。
春河: 文豪本人のファンでこのマンガを手に取ってくださる方も多いみたいです。「太宰治が好きなので」とか。
朝霧:「このマンガをきっかけに、太宰治の作品を片っ端から読んでいます」という方もいました。このマンガから文豪作品に入っていく、文豪の作品からこちらに入ってきてくれる、そういう相互交流みたいなものがいい感じで生まれているのかな。だとしたらうれしいです。
―― ノベライズ『文豪ストレイドッグス 太宰治の入社試験』は、マンガのストーリーの前日譚ですね。
朝霧: マンガ本編は中島敦くんの入社試験から始まりますが、その2年前に太宰が入社したときはどうだったのか。マンガより多くの文字情報を入れられる小説の形で、謎多き人物・太宰の過去を語ってみました。
―― 太宰治はもとより、国木田独歩がいい味を出しています。
朝霧: 国木田は、四角四面で几帳面、仕事はきっちりこなすけど、周りのいい加減な奴らにいつも悩まされているというキャラクター。本編では脇役なので、彼の苦悩を描く機会はなかなかないけど、今回の物語でそれが出来たと思います。
朝霧: 実は、どの登場人物も何らかの苦しみや心の闇を抱えています。最終的にはそういうところを描いていきたい。文豪がテーマのマンガであるからには、少しでもその世界に近づければと僭越ながら思うんです。少年マンガの世界では、仲間のためや、か弱い人々を守るために敵と戦う存在が多く描かれます。でも「文豪ストレイドッグス」のキャラクターたちが闘う理由は違う。たとえば中島敦は、自分では捨て去りたい自身の弱い部分が、ことあるごとに顔を出してきてはわが身を苦しめる。それを振り切ろうともがき、考え、悩んで……。物語の深層には、そういうものを置きたいと思っています。
ただ、読者のみなさんはそんなこと関係なく、マンガとしてシンプルに、キャラクターやバトルやストーリーそのものを楽しんでください。そして、もし気に入ったら、その文豪の作品を読んでみるなど、楽しみを広げていただければ。
春河:『文豪ストレイドッグス』が読者の方にとって一つの入口になればと思います。このマンガのキャラたちは、モデルにした文豪の方々とはまったく別モノ。なので、気になった方はぜひ、きちんと調べてください。私自身も文豪について勉強しながら描いていますが、知らなかったことを調べるのは、すごく楽しい。それに、作家に思い入れを持って読むと、作品も楽しさが全然違うんです。その作家が生まれてから亡くなるまでの年譜さえ、読むと本当に悲しくなるくらい……。そんなふうに文学作品を違う角度から楽しむきっかけにもなればうれしいです。
(2014.3.6)
・「文豪ストレイドッグス」TVアニメ4月スタート! 原作者・朝霧カフカさんが綴る「書店のおおいなる謎たち」