'); }else{ document.write(''); } //-->
1言のセリフもない絵だけの力で、何度も声を出して笑ったのは初めてかもしれません。
これぞ、2次元の底力!! ギャグマンガの真骨頂!!
1980年代に大人気だった『北斗の拳』のケンシロウが、まさかこんな形で蘇るなんて!!
この作品は『北斗の拳』のファンだけでなく、『北斗の拳』を読んだことがない人でも十分に楽しめる、笑える復讐物語です。
唯一の家族である母親に捨てられた10歳の沼倉孝一は、母を奪ったヤクザの木村を殺すため、ケンシロウになることを決意します。
10年間、ひたすら『北斗の拳』を読み漁り、トレーニングを積んだ沼倉は、ケンシロウばりの肉体と技を手に入れ、ついに木村と戦う日が訪れます。
沼倉は、ツボを圧すだけで相手を殺すことができる“北斗神拳”を繰り出すのですが……、
このなんとも言えない絶妙な間合いに、可笑しさも倍増です!!
一丁前にケンシロウの名セリフを吐いても、所詮、読学。『北斗の拳』を読んだだけでは相手を殺せないと悟った沼倉は、指のトレーニングと猛勉強のすえ、国家資格の「あん摩マッサージ指圧師免許」を取得、沼倉マッサージ店を開業します。
なに!? この展開!! 色々と間違ってるよね~と笑いつつも、復讐に燃え、笑顔ひとつ見せない沼倉の虜になっている自分がいます。
さぁ、この先どうする? どう進むの? とページをめくったら、いきなりパンツ一丁で個室マッサージにいる沼倉が出て来て、しかも“むっつり”顔で何を言っているんだか(笑)。
沼倉の技に感動した坂本里香は、夜の商売から足を洗い、沼倉マッサージ店で働くことに。
『北斗の拳』に出てくるヒロインといえば、ケンシロウの婚約者のユリア。
となると『ケンシロウによろしく』のユリアは、もしかしたら里香? と思ったのですが、今のところツッコミ担当のようです。
里香は、誰もが聞きたかった基本的なことを鋭くツッコんでくれます。
もう1人、『ケンシロウによろしく』には、色っぽくてナイスボディの久田圭子という女性も出てきます。
こっちがユリアか!? と思ったら、彼女は講談出版・週刊「悪」のヤクザ部門担当記者で、沼倉に雇われたスパイでした。
なんですか!? ヤクザ部門って!! というのはさておき、圭子の計らいで木村と接触する機会を得た沼倉。
苦節30年、木村を殺すためだけに全てを捧げて生きてきた沼倉が、ついに“暗殺ツボ”でとどめを刺すのか!! と思ったら、誰もが予想したとおり、すんなりと殺すことにはならず……。
それどころか、思いがけない事実が発覚します。
今までの沼倉は、里香を高給で雇い、EDのお年寄りを元気にして夜の営みを復活させ、お相撲さんの体だけでなくストレスも取り除き、と人々を幸せにしてきました。
この流れからすると、木村を殺すために覚えたツボ圧しは沼倉の思惑を外れ、木村も幸せにしてしまうのでは? と勝手に想像を巡らせ、1人でニタニタしています。
実は『ケンシロウによろしく』を読み終えたとき、“あ~、笑いのツボ圧されたわ~”と思ったのですが、すぐに“なにベタなこと言ってるんだ私は!” と苦笑いしました。でも、この際言ってしまいましょう。
このマンガは、笑いのツボをしっかりと圧してくれる、推しの1冊です。
*
(レビュアー:黒田順子)
※本記事は、講談社コミックプラスに2020年8月30日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。