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  • 「事故物件 恐い間取り」インタビュー:原作者・松原タニシが事故物件に住み続けるわけ

    2020年08月27日
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    日販 ほんのひきだし編集部 浅野
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    8月28日(金)、亀梨和也さん主演映画「事故物件 恐い間取り」が公開されます。

    自殺、病死、殺人などがあったいわくつきの部屋――“事故物件”での数々の怪奇現象を描く本作。しかしこの物語は、迫りくる恐怖を味わうホラー作品であるとともに、「山野ヤマメ」という売れない芸人がコンビ解散で先行き不安ななか、ひょんなきっかけから「事故物件住みます芸人」という新たな道を見いだしていく姿を追う内容でもあります。

    今回ほんのひきだしでは、実際に「事故物件住みます芸人」として活躍している原作者・松原タニシさんをインタビュー。事故物件に住み続ける理由など、素朴な疑問についても聞きました。

    松原タニシ
    1982年4月28日生まれ、兵庫県出身。松竹芸能所属のピン芸人。現在は「事故物件住みます芸人」として活動。2012年よりテレビ番組「北野武のおまえら行くな。」(エンタメ~テレ)の企画により大阪で事故物件に住み始め、これまで大阪、千葉、東京、沖縄など10軒の事故物件に住む。日本各地の心霊スポットをめぐり、インターネット配信も不定期に実施。事故物件で起きる不思議な話を中心に、怪談イベントや怪談企画の番組などに多数出演している。

     

    「間取り付き」のリアルさも話題、10万部突破のヒットに

    ―― 原作『事故物件怪談 恐い間取り』は2018年6月の発売後、わずか2か月ほどで14刷・7万部のヒットとなりました(現在10万部突破)。タニシさんが「怪談ライブ」で各地を回っていらっしゃったのに加え、文芸書担当の書店員さんたちが熱烈にプッシュしていたことも話題を呼んだ理由かと思います。「間取り図付き」という点でも注目を集め、映画化決定前からホラー作品としては女性読者がかなり多いのが特徴でした。

    書籍化オファーの時点から、編集担当の千田さんに「間取り図付きで載せましょう」とご提案いただいていました。「事故物件のエピソードと間取り図をセットで見せること」がいかに多くの方の興味を引くか、くわしく説明してくださって、それは面白いと思って本を書かせてもらうことにしたんです。

    怪談師や心霊関係の知人は多いですけど、「間取りを好きな人」がこんなに世の中に大勢いるなんて知らなかったので、「間取り図付き」という提案は僕にとってすごく新鮮でした。ありがたかったです。

    ―― 間取り図の鑑賞には、そこでの生活を想像上でシミュレーションする楽しみがあると思っています。

    『事故物件怪談 恐い間取り』では、それが「この物件で怪奇現象が起きた」という臨場感につながっているんですよね。その物件も、そこでの怪奇現象も実際にあったわけで、間取り図があることで、本を読んだ方に「実際にあったことだ」と自然に思ってもらえたのがよかったです。

    ―― そんな『事故物件怪談 恐い間取り』が、「リング」の中田秀夫監督によって映画化されましたね。笑いありのテンポのよい展開に油断していたら、ここがクライマックスだと思っていたシーンの後に衝撃の展開が続けて起きて、自分の浅はかさを呪いました……。

    あのシーンですね(笑)。あれはいい演出だったなあ。

    ―― 亀梨さん演じるヤマメはいかがでしたか? 完成記念イベントでは「コントの掛け合いがうますぎる」と監督から絶賛されていましたが。

    “売れない芸人”とはいえやっぱり華があるなあと思っていたんですが、番組プロデューサー(木下ほうか)とのシーンを観ていたときにハッとしました。コンビ解散のあと、放送作家としてなんとか仕事を取ろうと食らいつく中井(瀬戸康史)に対して、ヤマメは一歩引いているでしょう。僕自身ね、ああいう“業界ノリ”みたいなやりとりが苦手で、前に出ていくタイプじゃないんです。そういう人間性がヤマメから滲み出ていて、「なんて観察眼が鋭いんだろう」と思いました。

    もちろん亀梨さんにはそんなことお伝えしていないし、僕が過去に出演した番組とか、怪談・心霊系のDVDを見てもわからない部分だと思うんです。それであそこまでヤマメという人物を作り上げられるのは、すごいですよ。これは、本人だからよけいに思うことかもしれません。

     

    実は「ホラーは苦手」

    ―― ところで、タニシさんはもともとホラーがお好きだったんですか?

    いえ、苦手でした。ホラーを苦手な人がよく言うように、僕も、ホラー映画を見たら何でもないものまで恐く思えてしまうタイプです。

    それが変わり始めたのは、高校生のとき。当時部活で柔道をやってたんですけど、初めての試合の前に「なにか試練を乗り越えて自分を奮い立たせないと」と、2時間早起きしてジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」を観たんですよ。その時に「これはファンタジーや」「全然恐くないわ」って思えて、苦手なホラー映画を乗り越えたことがひとつ自信になりました。まあ、2時間早起きしたせいで寝不足で、試合には結局負けましたけど(笑)。

    その経験がどこかに残っていたのか、「北野誠のおまえら行くな。」の企画で事故物件に住むことになったときも、「実際に住んで乗り越えてみたい」「これを乗り越えないと自分は先に進めないぞ」という気持ちになったんですよね。ゾンビはファンタジーだけど、こういう、本当にありそうなジメッとした恐さは「まだ乗り越えられていない恐怖」だったので。

    ―― 今はもう、そういう恐さもすっかり平気になりましたか。

    恐いですよ。でも、それよりも好奇心のほうが勝つんです。

     

    「事故物件」選びのポイントは

    ―― タニシさんは、どういうふうに物件を選んでいるんですか?

    まず、事故物件でも家賃が高い物件は選ばないです。いくつか同時に物件を借りているので、5万円を超えると経済的に厳しいんですよ。逆にいうと、物件選びの条件は家賃くらいです。

    1年くらい住んだら引っ越すことにしているので、物件探しは常にしています。「まだこの県には住んだことがないな、行ってみようかな」というふうに選ぶことはなくて、重要なのはその物件で何があって、何が起きるか。何かしら発見のありそうな場所を探しています。

    続編の『事故物件怪談 恐い間取り2』には、「住んだ人が皆おかしくなる」といわれている物件のことも書きました。

    ―― 建ててはいけない土地に建っている物件のエピソードですね。

    そういうところに住むとどうなるのか、僕自身の身を投じて確かめてみたいんです。自分の環境が変化したり、新しい事故物件に出会ったりすることで次のドラマが待ってるんじゃないか。かっこいい言い方しちゃいましたけど、そう思ってます(笑)。

     

    事故物件は「部室」と同じ 住み続けることで変化した死生観

    ――「事故物件 恐い間取り」の劇中で、ヤマメが1軒目の入居日に「お邪魔します」と言ってから部屋に入ったのが印象的でした。意識のうえで“他人がいる部屋”なんだなあ、と。

    実際に言いはしませんけど、住み始めて最初のうちはそういう気持ちがありますね。“その人”がいるものと思っているというか、ここで人が亡くなったんだなという意識があるから。

    でも、失礼な言い方かもしれないですけど、住んでいるうちに忘れていくんですよ。しばらくすると、まるっきり「自分の生活空間」になるんです。事故物件を移り住んでいくうちに、それって実は当たり前なんじゃないかな、そのほうがむしろ自然なことなんじゃないかなと考えるようになりました。

    ―― どういうことですか?

    そこで亡くなった人のことを意識しすぎたり、自分の暮らしよりも尊重したりするのは違うんじゃないか?ということです。「事故物件住みます芸人」になって死が身近になったことで、「死」っていずれ忘れ去られることで、亡くなった人の人生の上に、いま生きているこの場所があるんだなと思うようになりました。

    部室みたいな感じですね。かつて“先輩”が確かにこの部屋を使ってて、今は現役部員の僕が使ってる。僕自身も歴史の延長線上にいて、僕が引退したらまた次の代の部員が使うじゃないですか。それは事故物件であってもそうじゃなくても同じやなって。

    だから、未知に挑んだとき自分に何が起こるか知りたくて事故物件に住んでいるわけですけど、住んでいるときは「そこで生きていた人がどうだったか」すら意識しないのが自然かなって思います。

     

    今、恐いものはありますか?

    ―― ここまでお話を伺ってきて、今、タニシさんが一番恐いと思うものって何だろうと考えています。

    何でしょうねえ……。

    ―― 私の話になってしまうんですが、振り返った時すぐ後ろに誰かいたとして、それが幽霊でも生身の人間でも、まずは同じように驚くはずです。でも対象と自分の間に関係性がない場合、何をされるかわからない。その不安を「恐い」と感じて、逃げたくなるのだと思うんです。幽霊なんて絶対に会話が通じないじゃないですか……。

    ああ、なるほど。わかります。僕もびっくりするし、恐怖は感じるんですよ。でも、どこか鈍感なのと、「何かに惑わされること」への拒否感が強いんだと思います。だから怪奇現象には興味がわいて、知りたいし、それを乗り越えてやりたいと思うんですよね。呪われた家とか、誰かが毎晩やってくる部屋とか、そういう“根拠のない不思議”には自ら近づいて確かめたくなります。

    逆に、避けたいのは人間の悪意や欲望です。「恐い」という感覚とはちょっと違いますけど、悪意や欲望って目的を持ってるじゃないですか。確実に「不幸にしてやりたい」というパワーで自分に交わろうと向かってくるから、正体を知りたいとも、乗り越えたいとも思わないです。そこには好奇心はないですね。

    ―― 芸人さんって、いろんな人と関わるお仕事ですよね。悪意や欲望も、すぐ身近にありそうです。

    確かにそうですね。でも「事故物件住みます芸人」になってからは、すごく楽になりましたよ。芸人の間でも、気持ち悪がられるか「タニシは事故物件でやってるから」「あいつは別もんやから」っていう立ち位置でいられるので、群れなくていいんです。

    ――「事故物件住みます芸人」という道には、そんな効用もあったんですね(笑)。本日はありがとうございました!

     

    映画「事故物件 恐い間取り」作品情報

    STORY
    芸人の山野ヤマメ(亀梨和也)は、中井大佐(瀬戸康史)とお笑いコンビ〈ジョナサンズ〉を組んでいたが、全く売れず、結成から10年目となり、これ以上続けても無理だと感じた中井から、コンビを解散し放送作家になると告げられる。
    突然ピン芸人となり途方にくれるヤマメは、番組プロデューサーの松尾雄二(木下ほうか)からテレビ番組への出演を条件に「事故物件に住んでみろ」と無茶ぶりされ、殺人事件が起きた物件で暮らすことに。そこは一見普通の部屋だったが、初日の夜、撮影した映像には白い“何か”が映っていたり、音声が乱れたり、様々な怪奇現象が。
    OAした番組は盛り上がり、ネタ欲しさにさらなる怪奇現象を求めるヤマメは、不動産屋の横水純子(江口のりこ)に新たな事故物件の紹介を依頼。その後も様々な怪奇現象に遭遇し、ヤマメは“事故物件住みます芸人”としてブレイクしていく。
    一方、〈ジョナサンズ〉のファンで、メイクアシスタントの小坂梓(奈緒)は、人気が出るほど危険な状況に陥っていくヤマメを密かに心配する。だがレギュラー番組も決定したヤマメは、次なる事故物件を求めて再び不動産屋・横水の元を訪れる。
    そしてある事故物件で、ヤマメの想像を絶する恐怖が待っていた――

    原作:松原タニシ『事故物件怪談 恐い間取り』(二見書房刊)

    亀梨和也
    奈緒 瀬戸康史
    江口のりこ 木下ほうか MEGUMI 真魚 瀧川英次
    加藤諒 坂口涼太郎 中田クルミ 団長安田 クロちゃん バービー
    宇野祥平 高田純次 小手伸也 有野晋哉 濱口優

    監督:中田秀夫
    脚本:ブラジリィー・アン・山田
    音楽:fox capture plan
    企画・配給:松竹

    2020年8月28日(金)全国ロードショー

    movies.shochiku.co.jp/jikobukken-movie

    事故物件怪談恐い間取り
    著者:松原タニシ
    発売日:2018年07月
    発行所:二見書房
    価格:1,540円(税込)
    ISBNコード:9784576180977
    事故物件怪談恐い間取り 2
    著者:松原タニシ
    発売日:2020年07月
    発行所:二見書房
    価格:1,540円(税込)
    ISBNコード:9784576200972

    © 2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会




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