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  • 異形の“猫”を拾った話。愛らしくも怪しいモフモフとの暮らしを描く異色の猫漫画

    2020年05月23日
    楽しむ
    花森リド:講談社コミックプラス
    Pocket

    猫を拾った話。 1
    著者:寺田亜太朗
    発売日:2020年03月
    発行所:講談社
    価格:1,100円(税込)
    ISBNコード:9784065189924

     

    なんで君はそんなにかわいいの

    「なんてかわいいんだろう。ああ、いい子だ。いてくれるだけでいい子」。ペットと暮らしているとそういう気持ちになる。よその人がどう思っているかなんて正直どうでもよくて、大変なこともあるけれど、とにかくかわいくてしょうがない。『猫を拾った話。』もそんなお話だ。

    よかったね、いい人に拾われて。ただ、いくつかの注釈をつけるなら、主人公の“イガイさん”と暮らすこの“猫”は、私たちが知っている猫とは少し違う。こちらの猫は、たいへん大きく、容貌も独特だ。

    ででーん! はちゃめちゃに大きい。そしてルドンの絵に出てきそうなガツンとした単眼。尻尾もギミックありそう……この子、本当に猫か? でも思い出してほしい。ペットは「いてくれるだけでいい子」な、かわいいかわいい同居人なのだ。「大きな猫だと思って大事にかわいがっていたけど実はヒョウでした」みたいなニュースが現実でもあるが、不恰好に抱き抱えられたヒョウのかわいさと危なっかしさ……。あれに通じる良さがこのマンガにはある。全ページ乱暴なくらい愛らしい。モフモフ。そして怪しい。

    こちらのエピソードの題名は「交流」。色々とドキドキしてくる。でもかわいい……。

     

    猫じゃないかもですが、猫あるあるがいっぱい

    イガイさんと“ねこ”(色々あって名前は“ねこ”になった)は、彼らなりに、ありとあらゆる「猫あるある」を体現している。たとえば「猫は容器の中にすっぽり収まるのが好き」というケース。さて、イガイ家ではどうなる?

    洗濯機にみっしりと収まり、こちらを見上げる大きな目玉……。かわいい。

    他にも「あるある」がいっぱいだ。例えば、猫が大好きだけど猫アレルギーで猫と一緒に暮らせない配達員さん。私は彼と同じ境遇なので、イガイさんの猫をいつか見たいと願う彼の気持ちがめちゃわかる。

    お届けする餌の量から推察するに猫は複数。ああ、1匹くらいぴょこっと姿を見せてほしい。しかし実際にドアの向こうで潜んでいるものは、めちゃくちゃ大きな“ねこ”が1匹……。この「“ねこ”のことは、周りにバレてはいけない!」の攻防もすごく面白い。

    そう、イガイさんだって薄々「うちの子は猫なんだろうか? そもそも地球上の生物なんだろうか?」と感じてはいるのだ。でも、すごくかわいくて大切な存在なので「まあいっか」と暮らしている。だってこんな出会いだったのだ。

    雨でずぶ濡れになって震えている小さな生物を見捨てられない気持ち。とにかく死なないでくれと温めて、キレイにして、食べてくれそうなものをお皿に出して、ちびちびと食べ始めた時の安堵感。だから異形でもなんでもいい、ただ大きくなってくれてうれしい。(めちゃくちゃ大きいが)

     

    怪しいのに優しい

    ぜんぶのエピソードに「あーかわいい」が詰まっているけれど、単純にかわいいだけではないのがこのマンガのチャームポイントだと思う。“ねこ”は、かわいいけれど、めっちゃ怪しいのだ。

    イガイさんもびっくりな謎事象が山ほどある。読んで衝撃を受けてほしい。

    そして、たとえばこんな夜にイガイさんと“ねこ”の関係がよくわかる。

    “ねこ”は満月を見上げながら何を考えているんだろう。“ねこ”にもきっと色々あるはず……という気持ちになる。すっかり大きく育って、もうイガイさんがいなくても死なないだろうし、遠くに行っちゃうことだってきっとできる。でも、あえてイガイさんの側にいるんじゃないだろうか。

    モフモフとしての愛らしさと、異形としての怪しさ。そして「一緒にいたいな」という双方の愛情がさりげなく伝わってくる。やっぱり、“ねこ”も、いてくれるだけでいい子だ。

    (レビュアー:花森リド)

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    ※本記事は、講談社コミックプラスに2020年4月26日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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