'); }else{ document.write(''); } //-->
〈薬丸岳さんの『その鏡は嘘をつく』文庫版がこのほど発売されました。単行本刊行時(2013年12月)に収録したお仕事場でのインタビューを再掲載します。〉
仕事場のマンションに毎朝通勤する。「集中するには自宅と別の仕事場が僕には合っているかな。ここに来たら、できるだけ早く家に帰れるよう頑張るんです。居心地が良いと帰りたくなくなるので、適度に不満の残る環境にして(笑)。ただ、締切前は結果的に泊まることも。実際、ここ4日間は缶詰状態です」
一方の壁面に、天井近くまである本棚が4本並ぶ。「自宅から運んできていない本もまだありますが」。真ん中の1本には資料がぎっしり。多くは犯罪と刑罰に関する書物だ。机の脇の棚は「あえてたくさん入れないようにしています。圧迫感があるとつらいから」。パソコンの壁紙は愛車(クライスラージープ・パトリオット)の写真。「スティーブ・マックイーンが大好きで」、映画『ブリット』で彼が乗っていた「1968年型フォード・マスタングGT390」のモデルカーが本棚に飾られている。
『その鏡は嘘をつく』は、テレビドラマ化(2013年、主演:椎名桔平)もされた『刑事のまなざし』の夏目信人シリーズ。長編ならではの広がりあるストーリー展開やラストの深い感動が魅力的な1冊だ。ドラマの主要登場人物がひととおり顔を見せるので、ドラマから入った読者にも愉しみは大きい。
デビュー以来、罪と罰という重いテーマに真摯に向き合ってきた。「ミステリーを書く上で僕が武器に出来るものがあるとしたら、それはトリックではなく人間の心です。人の心こそ謎─夏目はその謎を解き明かすのに最良のキャラクターなんです。謎めいていて複雑で、僕自身も彼をわかりきっていないところがあるけれど、夏目のことはこれからも長く書き継いでいきたいと思います」
編集者との打ち合わせを行う応接ルーム。ホームシアタースクリーンが大きな存在感を放っている。「映画を見るのも仕事のうちですから(笑)」。部屋の引き戸を開けると、書斎に設置したプロジェクターから投影が出来るというしくみ。
薬丸岳 Gaku Yakumaru
1969年兵庫県生まれ。2005年「天使のナイフ」で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。ミステリーの次代を担う存在として注目を集めている。2016年『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞受賞。著書に「刑事・夏目信人」シリーズの『刑事のまなざし』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『誓約』『アノニマス・コール』ほか多数。
(「新刊展望」2014年2月号「創作の現場」より)
●あわせて読みたい:〈インタビュー〉敵は警察と誘拐犯!社会派ミステリの旗手・薬丸岳さんの超絶エンタメ『アノニマス・コール』