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あ、これ本当の話だ。当事者の人が描いている。読みながらそう思った。
社会人になっても他人のお仕事のことはよくわからない。同じ社内でも他部署の仕事内容やルールはわからなかったりする。だから「お仕事マンガ」を読むときは、少しのフィクションや想像が混ざることを考えながら読むのだけど……。『新入社員がまいります!』の場合は「絶対これ本当の話だな……」と思いながら読んでしまった。
舞台はとある商社。そこの商品管理部で事務を担当する新入社員の“ながたさん”という女性のお仕事模様が細かく細かく描かれています。俯瞰して見たら取りこぼしてしまうような小さな話がたくさん。でも、ながたさんにとっても、私たちにとっても、それって「ささいなこと」じゃないんです。
ながたさんは先輩の“まるやまさん”に仕事を教えてもらうことに。このまるやまさんがとっても優しくて頼りになって良い先輩なんです。で、そんな先輩がゆっくり説明してくれるんですが……。ゆっくり言われても知らない単語が山盛りで「すみません、そもそも“売掛”ってなんでしょうか?」となるわけです。そもそもすぎて申し訳ない。ここで嫌な顔せず教えてくれる先輩、ありがたい……!
新人なら誰しも通る関門、それが電話です。最初の頃は社内メンバーの名前だってちょっと把握しきれていない。だから電話対応でこんなことに。わかるよー!
これが一番よくわかる。途中で忘れちゃうんですよ、相手のお名前。大抵みなさん早口だし。
こういう小さな失敗と戸惑いを重ねて重ねて「なんでこんなにできないんだろ?」と落ち込んだりしつつ、新入社員の1年って過ぎていくことが多い気がします。
このマンガのいいところって、大変なことも楽しいことも虫眼鏡で見つめるように丁寧に描かれているところだと思います。なので、新入社員が泡を吹く瞬間だけじゃなく、会社に入ってやっと目にする景色もたくさん描かれています。わかる、社会人、男女問わずめっちゃカーディガン持ってる。服装規定があってもなくても「ちょっと羽織るもの」って貴重です。空調が自分にとってベストじゃない日が多々あるんですよね。あと外出時のお茶も楽しい。
年末になるとうず高く積まれるカレンダーたち。チョコが飛び交う女子校のバレンタイン並みにカレンダーが会社間でやりとりされ、やがて毎年楽しみにしてしまうお気に入りのカレンダーが発生します。
仕事でうれしいことってなんなんでしょう。ひとつは、こんな瞬間だと思います。
テキパキと仕事がさばけたり、人から感謝されたり。初めてほめてもらえて「うれしい!」よりも「えっ!?」が最初に来てしまう感じも新入社員っぽさ満点。ささいなことのように見えるけれど、最初の1年目の人にとっては、どれもささいなことじゃないんですよね。
ラクなことばかりじゃないし、地味だったりよくわからないことも多いけれど、でもやっぱり、仕事ってたのしいよねと教えてもらえるマンガです。
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(レビュアー:花森リド)
※本記事は、講談社コミックプラスに2020年3月15日に掲載されたものです。
※この記事の内容は掲載当時のものです。