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  • 菌すら生きられない“マイナス50度”の世界って?読むと旅に出たくなる漫画旅行記

    2020年03月21日
    楽しむ
    花森リド:講談社BOOK倶楽部
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    世界で一番寒い街に行ってきた 完全版
    著者:まえだなをこ
    発売日:2020年02月
    発行所:講談社
    価格:1,320円(税込)
    ISBNコード:9784065186695

     

    めくるめく「旅」の本

    「旅行」と「旅」の違いをときどき考える。私の海外旅行は「旅」ではなくて「旅行」だよなあ……とか、あの人が自力でブラジル国内を運転して巡ったブラジルW杯観戦は「旅」だよなあ、とか。

    違いは、行き先やお金のかけ方や快適さじゃなくて「どれだけ未知の振れ幅があるか」だと思う。どちらも楽しいけれど、旅の方が、果てしなくて、未知の濃度が高い。

    その意味で考えると『世界で一番寒い街に行ってきた ベルホヤンスク旅行記』は全力で旅の本だ。イラストレーターのまえだなをこさんが全ページたっぷりのイラストと優しい言葉で自身の旅を綴っている。旅の猛者ならではの視点とエピソードが楽しい。

    収録されているのは、こちらの4つの旅。

    マイナス50度の世界。ロシア連邦のサハ共和国への旅。菌すら生きていけない寒い世界。

    ピカソの絵を追いかけて欧州で列車に乗りまくる旅! 果てしない!

    マレー半島でおいしいものをたくさん食べる旅。肉骨茶は最近日本でもお店で見かけるようになったけれど、マレーシア式とシンガポール式があるのは知らなかった。ああ、本場のおいしさを味わってみたい……。

    少数民族をめぐる15年がかりの旅。まさかまさかの連続。胸が熱くなる。

    もう、どこを読んでも楽しい。一度に読むのはもったいない。しかもボリュームたっぷり。どんな旅程で、どんなものを食べて、どんなお部屋に泊まって、どんな人たちとおしゃべりをしたか……未知がいっぱい。だから気になるところからゆっくり読んでください。

     

    参考になるお役立ち情報もいっぱい!

    「旅サイコー!」に留まらないのがこの本の素敵なところで、「ちょっと行ってみようかな……?」という気持ちにさせてくれるのだ。例えば、服装。日本と全く気候の違う場所に行くとき最初に悩むことは「何を着ていけば……」だ。気候どころか文化だって違うはずだし。

    作者の基本スタイルがこちら。冬のヨーロッパは寒くて耳が痛いので耳が隠れる帽子があるとラク。そして、湿っぽい東南アジアでは軽くて乾きやすい生地、本当に大事!

    さらに本書では「冬のヨーロッパで、ドミトリーで宿泊するなら?」といった細かい旅支度もずらっと公開されている。

    厳選されたグッズの数々。見てるだけで楽しくなってくる。また、「がんばらないときのヨーロッパごはん」という大変ためになるオマケエピソードもあるので読んでほしい。そう、長い旅路、がんばらない日だって必要なのだ。

    持ち物だけじゃない。ドミトリーってどんな感じ? 女性が泊まっても大丈夫?

    こんな感じです。宿泊したホステルたちの間取り図つき。動線を指でなぞりたくなる。手描きのイラストがかわいい。

     

    旅ってなんて楽しいんだろうか

    おいしいものを食べて、美しい景色や芸術に感動して……旅の楽しさはそれだけじゃない。その土地で出会う人。彼らにも未知がつまっているのだ。仲良くなれたらうれしいけれど、ただ出会えるだけでも、きっと得難い経験になる。

    見学にお邪魔したつもりが、実は自分たち日本人の方が珍しい……!

    こんな出会いって本当にあるんだなあ……と感動しっぱなしの少数民族をめぐる旅。相手を信頼して一緒に村に向かえる人だから、この女の子は声をかけたんだろうな。

    こういう話はその場にいる人からしか教えてもらえない。率直に楽しくおしゃべりができる作者の人柄がうかがえる。

    1ページごとの情報量がとっても濃いのでページをめくるたびに「ほっ」とため息が出てしまう。そう、まるで一緒に旅をしている気持ちで読んでしまうのだ。ガイドブックとは違った細かい解像度と楽しい角度で旅を教えてくれる。

    (レビュアー:花森リド)


    ※本記事は、講談社BOOK倶楽部に2020年3月5日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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