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ドラゴンクエストやファイナルファンタジーをはじめとしてロングセラーの作品から、リリースからまだ年月の浅いアプリゲームまで、オーケストラや吹奏楽、和楽器などさまざまな形式で開催される「ゲーム音楽のコンサート」が、ここ数年で増えています。
ゲーム音楽はそもそも【ゲームのために作られた音楽】【ゲームに付随する音楽】というような意味合いで、クラシックやジャズのように「音楽それ自体の形態や特徴を指す言葉」ではありません。
しかし「ゲーム音楽」は、かつてのピコピコ音のみの音楽からとうの昔に脱し、壮大なオーケストラからボーカル入りのロックナンバーまで、あらゆるカテゴリーの音楽を内包するジャンルとなっています。
▼ゲーム音楽の例 その1(ペルソナ5)
▼ゲーム音楽の例 その2(ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド)
そんななか、2019年6月、ゲーム音楽のサントラ盤 950枚を寸評とともに紹介する『ゲーム音楽ディスクガイド』という本が発売されました。
本書の監修をつとめた田中”hally”治久さんは、序文で、ゲーム音楽はこれまで、その性質ゆえ“独立した音楽”として批評・鑑賞される機会が多くなかったと述べています。
類書は過去にいくつか出ているが、そのほとんどは純粋にゲームファンに向けて書かれたものだった。評価基準として重視されるのは「いかにゲーム内容やプレイ体験にマッチしているか」であり、音楽単体の性質についてはごく浅くしか触れないのが通例だったのである。
(『ゲーム音楽ディスクガイド』序文より)
『ゲーム音楽ディスクガイド』は、そのような現状に一石を投じる一冊です。
本書の特徴は、多岐にわたるゲーム音楽から、ゲーム自体の知名度やプレイ内容とは一切関係なく、純粋に「音楽的な」観点で名盤を選び紹介していること。
もちろん有名タイトルのサントラ盤も掲載されていますが、並みのゲーム好きでは聞いたことがないようなタイトルも登場します。
BONUS21
スーパーマリオブラザーズ マリオ・シンドローム
キング K13A-748 1986年5月21日
近藤浩治による『スーパーマリオブラザーズ』地上BGMを、元レイジーのキーボード担当で後にランティス創業者となる井上俊次がアレンジ。当時ダンスミュージックシーンで人気のハイエナジーサウンドに仕上げたディスコ向け仕様の12インチ盤。コインゲット音やブロック破壊音などのゲームSEを効果的に使い、6分以上の尺を飽きさせない巧みな構成も完成度が高く、数多いスーパーマリオ関連の企画物音源の中でも良作。
(『ゲーム音楽ディスクガイド』本文より)
Austin Wintory(Henchman & Goon)
Pode
Austin Wintory(配信) 2018年6月21日
ノルウェーのHenchman & Goonによるアクションパズル。コンポーザーは『風ノ旅ビト』『バナーサーガ』などのオースティン・ウィントリー。ゲームヴィジュアルにノルウェーの自然風景や民族文化が反映されている本作だが、サウンドにおいても同国の擦弦楽器ハーディングフェーレの二重奏がフィーチャーされ、どこまでも澄んだ空気を湛えた静謐なアンビエント・フォークを聴かせる。
(『ゲーム音楽ディスクガイド』本文より)
掲載されている950枚分の寸評はどれも言葉巧みで、そのゲームをまったく知らなくても好奇心をくすぐられます。
ゲーム音楽黎明期の作品も数多く取り上げられているため、今では手に入れづらいものもあるのが少しさみしいですが、読み物としても非常に面白いです。音楽ファンなら、普段聴いている音楽との意外なつながりが発見できるかもしれませんし、ゲームファンなら、自分の好きなゲームが紹介されているか、そしてどんなふうに紹介されているかという視点でも楽しめます。
昔プレイしたゲームでなんとなく聴いていただけの曲が、実は屈指の名盤扱いされていたりしたら、思わず笑みがこぼれてしまうことでしょう。