• fluct

  • 子どものいたずら、どこまで許すべき?成長の芽を摘まない「いたずらへの向き合い方」

    2020年02月27日
    楽しむ
    サンクチュアリ出版WEBマガジン
    Pocket

    『ぜったいにおしちゃダメ?』のシリーズ第3弾『ぜったいにおしちゃダメ? ラリーとどうぶつ』が1月に発売されました。

    いたずら心をくすぐる絵本ですが、そもそもなぜこどもは、大人がダメだと禁止することほどやりたがるの? 育児の専門家である須賀義一さんに伺いました。

     

    大人の価値観をこえたこどもの行動が、いたずらに見える

    ――こどもは、なぜいたずらが好きなのですか?

    こどもは大人が困るさまざまな行動をしますが、こども自身は「いたずら」だと思ってはいないんです。「環境がもたらす動機づけ」という意味の「アフォーダンス」という言葉があるのですが、こどものいたずらを理解するのは、この概念がぴったりだと思います。例えば、目の前にソファがある。大人はソファを見ると「座る」「寝る」とイメージしますよね。それがこどもにとっては、登ったり、飛び跳ねたりするきっかけになるんです。その行動が大人の価値観をこえているので、大人は「こどもはいたずらが好き」だと思うわけです。

    ――大人が思い込んでいるだけで、こどもにとっては、楽しくて前向きな行動ということなんですね。

    いたずらには、こどもの成長にとても大切な「自己表現」と「自己決定」がつまっています。
    「自己表現」とは、自分で考えて創意工夫をすること。こどもは、1つのものを見たときにいろいろな発想を持つので、こどもにはそもそも備わっている能力と言えます。

    「自己決定」とは、文字通り自分で決めて行動することで、自分の好きなように、自分の考えで動いたり、試したりするのは、こどものいたずらそのものなんですね。時間や状況が許す限り、自由にやらせてみてほしいと思います。

     

    こどもはバネ。抑えつけるほどビョーンと跳ねる

    ――どの程度のいたずらであれば、大人は許容したほうがいいのでしょうか?

    現実にはなかなか難しいですよね。特に日本は、社会がこどもに厳しいところがありますし、「ちゃんと・きちんと・しっかり」とした子育てが求められます。今の親たちの、さらに親世代からこういったまじめさがあって、余裕のない育児が続いています。きちんとさせよう、失敗させないようにしようと、過保護かつ過干渉になってしまい、こどもを抑えつけてしまうんですね。こどもはバネと同じなので、抑えつけるほどに、ビョーンと飛び跳ねてしまう。きちんとさせようとしているのに、現実には逆効果で、親を困らせることをしがちになるんです。

    また、いたずらにつまっている「自己表現」と「自己決定」が親の抑え付けによって奪われると、すごく生きづらくなります。人目を気にして、主体性のない判断をするようになってしまう。いたずらひとつで大げさだと思うかもしれませんが、こどもの自己表現にはそれだけのものが詰まっていると言えます。

     

    受け止める・短く伝える・認める。これで叱らずに済む!

    ――とはいえ、大人が困ってしまう度を越したいたずらも…。こどもにはどのように伝えたらいいのでしょうか?

    例えば、こどもが階段に人形を置いて、家に見立てて遊び始めたとします。親は、周りに迷惑をかけてはいけないと思い、普通はすぐに「やめなさい!」と言いますよね。このように否定から入るとこどもは反発するので、まずは「へぇ、階段をお家にしてるんだ。素敵じゃない」とその行動を受け止めて、その上で「人が通るから考えてね」と自分で考える、創意工夫するきっかけを与えます。グチグチと小言を言うのではなく、短く、端的に言うのがポイント。それで少しでも階段を離れたり、人形を片付けたりすれば、親が認めてあげましょう。過剰に言葉をかけて褒める必要はなく、うなづく、微笑むなど親の表情で十分伝わります。

    ――つい強く叱ったり、イライラしたりしてしまいますが、この方法であれば、親もこどもも気持ちよくいられますね。

    日本の親は、ネガティブに見えるものに対する関わり方がとても苦手だなと感じます。正しい行動をさせようとして、例えばまっすぐ歩かないこどもを「置いていくよ」と脅したり、「ほらトラックが来たよ」などとごまかしたり。どちらも本当にしてほしいこと、親の要望とは違い、嘘をついていますよね。また、過剰に怒ってはいけない、我慢しなければという自己犠牲から、親自身が自分の本心に嘘をついてしまうことも。困ることがあれば、「危ないからまっすぐ歩いてください」と、客観的な情報と要望をストレートに伝えればいいのです。また、「ここでうるさくするとお母さんはイライラするからやめてね」などと、自分の感情を提示することも何も悪いことではありません。自己犠牲をしすぎて、あとから小言が増えたり、八つ当たりをするよりも、こどもにとってもずっといいと思います。

    きちんとすることも大切ですが「楽しさは正しさに勝る」。予想外の行動を親も一緒に楽しんで、TPOで判断してNOなら正直に伝える。そんなスタンスで、こどものいたずらとつきあってほしいですね。

    ぜったいにおしちゃダメ? ラリーとどうぶつ
    著者:ビル・コッター
    発売日:2020年01月
    発行所:サンクチュアリ出版
    価格:1,155円(税込)
    ISBNコード:9784801400726

    お話を聞いた方
    プロフィール
    須賀義一さん
    子育てアドバイザー、保育士。子育てのポイントや育児相談、保育士としての知識、主夫として子育てした経験を綴ったブログ「保育士おとーちゃんの子育て日記」が人気。現在は子育てに関する講演やコラム執筆などで活躍。著書に『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』『保育士おとーちゃんの「心がラクになる子育て」』(PHP研究所)がある。


    ※本記事は、サンクチュアリ出版WEBマガジンに2020年1月24日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




    タグ
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下

  • GoogleAd:007

    • GoogleAd:PC関連記事下左

    • GoogleAd:PC関連記事下右