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雑誌『女性自身』(光文社)の「主婦的なんでも井戸端ランキング」というコーナーを時々チェックするのですが、2月16日号のテーマは「大人の女性に響く絵本」というもので、第1位には『ルピナスさん -小さなおばあさんのお話-』(バーバラ・クーニー作・かけがわやすこ訳/ほるぷ出版/1987年)が選ばれていました。
この作品、私もとても好きなのですが、読むといつも思うのが「ルピナスさんは本当に幸せだったのだろうか?」ということです。
著者のバーバラ・クーニーは1917年にアメリカで生まれ、母は画家でした。
1917年といえば、その3年前に第一次世界大戦が始まり、翌年に終戦する、そういう時期です。
アートスクールで学生時代を過ごし、23歳の時に処女作を出版し、27歳で結婚、その翌年に第二次世界大戦が終戦。
子どもを2人出産した後に離婚し、32歳で連れ子が2人いる男性と再婚し6人家族となります。
40歳を過ぎてから世界各国を旅行するようになり、42歳と63歳の時にコールデコット賞(アメリカ最大の絵本賞)を受賞し、83歳になった2000年に亡くなります。
本作は1982年、クーニーが65歳の時に刊行し、翌年に全米図書賞を受賞した意欲作です。
1982年といえば、マイケル・ジャクソンの「スリラー」が大ヒットし、イギリスとアルゼンチンがフォークランド紛争を起こした、そういう頃です。
主人公のアリス(=ルピナスさん)の祖父は彫刻りやポスター等をつくるアート系の職人で、アリスは子どもの頃からその手伝いをし、大人になり図書館司書を経た後、祖父からの約束を果たすために世界中を旅します。
その後アリスは海沿いの一軒家に一人で住み、周辺にルピナスの種を撒いて咲かせ、人々を幸せな気持ちにさせました、という内容です。
「身内がアート関連」「世界中を旅」「ルピナス=絵本」と捉えると、クーニーは明確に、自己の一部分をアリスのモデルにしています。
しかし、登場人物はアリスとその祖父、そして語り手であるアリスの姪孫(こちらも名はアリス)の3人だけで(エキストラ除く)、アリスの両親と兄弟姉妹は一切描かれていません。
そして『Miss Rumphius』というタイトルから、アリスは生涯独身であったことがわかります。
現に、祖父、姪孫と一緒にいる2場面以外は、アリスは多くの他人との触れ合いの中に居ますが、基本的に一人です。
一読して、全編に漂うこの寂しげな空気は、クーニーが施したこの「作為的な孤独」によるものです。
ではなぜこのような要素を含有させたのか?
少なくとも、日本版の奥付前頁解説にある「独立心にあふれた一女性の人生の物語」とするためではないように思います。
戦前・戦中・戦後を経て、多くの名声を獲た65歳の女性絵本作家が、人生を振り返った時に切り取った部分がこういう形であったというのは、じつに興味深い事実です。