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西加奈子さんの直木賞受賞後第1作は、「子どもたち」と「かつての子どもたち」に向けて描かれた書き下ろし長編! 担当編集者の方に作品ガイドを寄せていただきました。
西加奈子さんの直木賞受賞後第1作となる『まく子』は、小学生の男の子の視点から、他者を信じること、自分と違う存在を受け入れること、そして、成長すること、それにつれて変わっていく心と体のこと、さらには生きること、そして生の当然の帰結として待ち受ける死について、真正面から描き切った作品です。
慧は、小さな温泉街に住む小学5年生の男の子。子どもと大人の狭間の微妙な時期にあって、彼は否応なしに変わっていく自分自身の身体を、身体の変化をすんなり受け入れ、猛スピードで「大人」になっていく女の子たちを恐れています。そんな少年、慧の住む集落に、コズエという彼と同じ小学5年生のとてもきれいな、そして、非常に風変わりな女の子が引っ越して来るのですが、このコズエには、ある秘密があり、その秘密が彼女の口から語られるとき、慧の世界が今までとは全く違った色に塗り替えられていきます。物語のクライマックスで、ある奇跡が起こるのですが、その奇跡は、もうすでに私たち自身の中にあるものなのです。
今回、西さんは、「子どもを描く」のではなく、慧と一緒になって、悩み、考え、恐れ、ようと思ったと仰っています。そうやって、西さんが、11歳の少年に寄り添いながら、彼と同じものを見て、彼と同じようにものごとと向き合ったことで、西さん自身こそが、「大人」であることに折り合いをつけられず、自分の身体が変わっていく、つまり老いていくこと、そしてその先にあるものを恐れていることに気づき、結果、この作品は、恥ずかしいくらいに正直で剝き出しのものになったそうです。
だからでしょうか。とにかく、この作品は、読む人の心を強く、激しく揺さぶります。あまりにも心が揺さぶられすぎて私は吐きそうになりました。
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文・福音館書店 書籍編集部 岡田望
(「新刊展望」2016年3月号「エディターの注目本ガイド」より転載)
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