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全国の書店員さんが一押し本を紹介する連載「わが店のイチオシ本」。
第28回は、広島市の広島 T-SITEにある広島 蔦屋書店の暮らしコンシェルジュ・犬丸美由紀さんにご登場いただきました。
犬丸さんが紹介してくれたのは、「計算しない数学」を提唱している根上生也さんの『四次元が見えるようになる本』。“四次元空間”についてや見るための奥義、遊び方までが解説された、数学力をバージョンアップしながら、得難い身体感覚を獲得するための本です。
「四次元が見えるようになった!」
こう言えば、周りは失笑。また始まったとばかり「はいはい。」と、まるで子どもをあやすかのようだ。
でも、本当に見えるようになるんだけど。この本を読めば……。
ここで取り上げている「四次元」とは、三次元空間に時間軸を足した四次元時空のことではない。三次元空間を部分として含む、空間としての自由度がひとつ増えた世界、それが、四次元空間だ。
かの有名な猫型ロボットの、ぽってりとしたおなかについているポケットといえばわかりやすいだろうか。あのポケットの中の膨大な道具が、どうやって入っているのか、見えてしまうのだ。ポケットから大きな道具が出てくる。ちょっと、湾曲して。四次元が見えるようになったら、そんな光景にも「そうね、四次元から出しているのだもの」と、ひとりニヤニヤできる。
見えるようになるには、少しのコツがある。お堅いこととか、明日のこととか考えずに、脳内に座標を浮かべるのだ。平面に引かれた横軸xと縦軸y。これで二次元が脳内で出来上がる。それに高さを表すz軸を加えることで、わたしたちが住む三次元が構築される。そこからはみ出す、もう一本のw軸。四次元。
あっ、「わからない」とあきらめないで。あなたは読み進むうちに、脳内でひたすら二次元(平面)と三次元(立体)を行き来しながら、単純に図形を重ねたりひっくり返したりするだけでいい。そしてその図形を脳内から引っ張り出して、目の前に置いたり、現実世界すらも縮小させて重ねたりして、現実世界に存在しないであろうものを見る。
これは、「脳を遊ばせる」本なのだ。
『度胸星』(山田芳裕)というSFコミックスがある。火星に降り立った宇宙飛行士は、そこで謎の物体と出会う。この物体の動きが、地球人から見ると理解できない。理解できないものは恐怖でしかない。次元が違う。
そう、これこそ「次元が違う」のだ。この物体は四次元の住人で、わたしたち三次元の住人にはない、もう一本の軸を持った動きが出来る。
以前この本を読んだときは、不気味な動きをする物体としか思えなかったが、『四次元が見えるようになる本』を読んだ後で『度胸星』を読み返すと、この動きがわかる。すっきり感と共に、さらに面白くなる。一冊の本が、過去に読んだ本にまで影響を与えたのだ。
本を読むことでしか知ることが出来ない世界がある。
「百聞は一見にしかず」ということわざがあるが、視覚で捉えたものが全てではない。四次元も、視覚で探し回ったら、きっと見つかりはしないだろう。一冊の本が理解を深くし、新たな世界が見えるようになることもある。「百見は一読にしかず」だ。
あなたは、この本を読み終わると四次元が見えるようになる。四次元の世界に立ち、三次元の世界を見下ろしたときに発する言葉は、もう決まっている。
「絶景かな。絶景かな―」なのだ。
◆作り手からのメッセージ◆
「私は四次元が見えます」と語る著者が、読者に四次元を見てほしいという思いで書きました。計算しない数学を提唱しているとおり、数式はありません。と言ってもすらすら読めるわけでなく、脳みそをフル回転させないといけないところも。AIを超える身体感覚が身につきます!(日本評論社 第4編集部 佐藤大器さんより)
広島 T-SITE 広島 蔦屋書店(Tel.082-501-5111)
〒733-0831 広島県広島市西区扇2-1-45
※営業時間 8:00~23:00
(「日販通信」2019年7月号「わが店のイチオシ本」より転載)