• fluct

  • 「4度名字が変わっても不幸ではない」新しい家族の形を描く本屋大賞受賞作:わが店のイチオシ本(vol.27 蔦屋書店 ひたちなか店)

    2019年06月17日
    本屋を歩く
    日販 ほんのひきだし編集部「日販通信」担当
    Pocket

    全国の書店員さんが一押し本を紹介する連載「わが店のイチオシ本」。第27回は、茨城県ひたちなか市にある蔦屋書店 ひたちなか店の、藤彩乃さんにご登場いただきました。

    藤さんが紹介してくれたのは、2019年本屋大賞を受賞した、瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』。「私には父親が三人、母親が二人いる。 家族の形態は、十七年間で七回も変わった」――そんな特異ともいえる環境で、愛し、愛されて育った少女を主人公に、新しい家族の形を考えさせられる作品です。

    本屋大賞の投票時から「本作を推していた」という藤さんによる、喜びと思いのこもったブックレビューです。

    そして、バトンは渡された
    著者:瀬尾まいこ
    発売日:2018年02月
    発行所:文藝春秋
    価格:1,728円(税込)
    ISBNコード:9784163907956

     

    平成最後の本屋大賞にふさわしい作品

    瀬尾まいこ先生、本屋大賞受賞おめでとうございます! 平成最後の本屋大賞にふさわしい作品だと心から思っております。

    新刊台に並べると、思わず目をひくような深い緑色の装丁。土曜お昼の情報番組(というと多くの書店員はすぐアレだなとお分かりいただけると思います)で紹介された際には、「この本は絶対に本屋大賞にノミネートされるぞ!」と思ったものです。

    今回の本屋大賞では私も一次投票から参加し、『そして、バトンは渡された』をプッシュさせていただきました。こうして大賞に選ばれたこと、一書店員として嬉しく思います。

     

    血の繋がらない家族を渡り歩いても「全然不幸ではない」

    主人公の森宮優子は高校2年生。

    生まれたときは水戸優子だったが、その後田中優子となり、泉ヶ原優子を経て、今は森宮優子と名乗っている。

    大人の都合により、血の繋がりの無い親の間をバトンのように渡り歩いた彼女だが、いつも愛されていた。

    「困った。全然不幸ではないのだ。」から始まる書き出し。自分のせいではなく、4度名字が変わったというのだ。そんなことないだろうと否定しながら読み始めました。

    しかし、父となった水戸、泉ヶ原、森宮。生みの母と梨花。5人の親は、それぞれ優子にたくさんの愛情を注いでいます。それは自分の元を離れ、名字が変わったあとも変わりません。

    優子もまた、親の都合で名字が変わり、彼らの元を去っていったにもかかわらず、それぞれを愛し、大切にし、日々を過ごしています。

     

    こんな形の家族があってもいい

    第1章は高校生の優子と、彼女のそれまでの経緯が交互に綴られ、第2章では高校を卒業してから先のエピソードが描かれますが、どこを切り取っても愛に溢れている作品です。

    平成を振り返ると、家族に関する事件や問題は非常に多かったように感じます。

    さまざまな事情はあれど、血の繋がりの有無にかかわらず、心が痛むようなニュースを何度も目にしてきました。

    『そして、バトンは渡された』では、血の繋がりはないけれども家族になり、共に生活をしていく優子とそれぞれの親との日々が描かれていますが、こんな形の家族があってもいいのだなと、新しい家族の在り方を考えさせられる作品となっています。

    血の繋がりだけがすべてではない、それぞれの親との絆や愛を注がれて成長した優子は確かに「全然不幸ではない」のだと、冒頭の一文を読み始めた時とは違う、温かい気持ちで受け入れることができる作品です。

    ◆作り手からのメッセージ◆
    著者の瀬尾まいこさんは、「自分の子どもも、中学校教諭として担任した生徒も、等しく可愛い」と話されていました。大切なのは血縁ではなく、愛情を注ぐ対象がいること。瀬尾さん史上もっとも瀬尾さんらしさが詰まったこの作品が、多くの読者に受け入れられたことを嬉しく思っています。(文藝春秋 第二文藝部 篠原一朗さんより)

     

    店舗紹介

    蔦屋書店 ひたちなか店(Tel.029-265-2300)
    〒312-0005 茨城県ひたちなか市新光町30-4
    ※営業時間 9:00~22:30(土・日・祝日8:00~)


    (「日販通信」2019年6月号「わが店のイチオシ本」より転載)



    タグ
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下

  • GoogleAd:007

  • ページの先頭に戻る