'); }else{ document.write(''); } //-->
全国の書店員さんが一押し本を紹介する連載「わが店のイチオシ本」。
第15回にご登場いただくのは、茨城県水戸市にある川又書店 県庁店の店長・西依昌幸さんです。明治150年に合わせてプッシュしているというコミック『ふしぎの国のバード』を紹介してくれました。
明治11年に日本を旅した、イギリスの女性冒険家をご存知でしょうか。維新の混乱がいまだ燻っていた時代に、お供の通訳一人を連れて、日本を縦断したイザベラ・バード女史。はずかしながら私は、『ふしぎの国のバード』を手に取るまで知りませんでした。
『ふしぎの国のバード』は、イザベラ・バード女史の旅行記を元に描いたコミックです。彼女の著作は何点も刊行されていますが、コミック化されるとは誰も思っていなかったのではないでしょうか。
現代では、行こうと思えば比較的容易にどこへでも行けます。交通網が整備されていて、本やインターネットなどで情報収集も簡単にできます。
しかし、もしそういった環境がなく、言葉も通じない国で、たった一人の通訳と、東京から会津へ向かい、会津から新潟へ出て日本海側を北上し、北海道へ至るとしたら……。なかなか想像できませんよね。すごい、のひと言につきます。その「すごい」を、漫画というかたちでこの世に送り出している著者の佐々大河氏も、またすごいと言わざるを得ません。
漫画は、どちらかというと容易に読めて、絵と文章・セリフが、相乗効果で読み手の想像力を喚起します。動画を脳内で補完情報として自然に構築し認識する、という感じでしょうか。漫画という表現の神髄はそこにあります。全体のストーリー展開が大切なのは小説も漫画も同じですが、漫画には確固たる重要なファクターとして絵が存在するのです。
そこで特に本書は、ぜひ1ページ1ページ、目を凝らして読んでいただきたい。絵の描き込み、情報量の多さには目を見張るものがあります。当時の建築物や服飾品、習俗や生活様態など、民俗的な描写もすぐれています。膨大な資料を元に描かれているのではないでしょうか。明治初期の日本の文化を垣間見ることができる貴重な作品であることは間違いありません。
2018年は「明治150年」ということもあり、当店では再度売場で平積みを始めました。作品の良さも手伝って、おかげさまで毎月コンスタントに売れています。私見ですが、イザベラ・バード女史と現在の日本人の感覚が近いので、読者が共感しやすいのかもしれません。
連載誌である「ハルタ」では『乙嫁語り』や『ダンジョン飯』など、ほかにも素晴らしい作品が目白押しです。当店では、スペースの許す限り「ハルタ」掲載作品を推していきたいと思っています。
◆作り手からのメッセージ◆
作者の佐々大河さんは、これがデビュー作。最初は1話限りの読み切りとして漫画誌「ハルタ」に掲載しましたが、反響が大きく、連載へ。書店員さんの口コミのおかげもあって、単行本が4冊も出る人気作になりました。これからも、日本人が知らない日本をたっぷり描いていきます。(KADOKAWA ハルタ編集部 広井優さんより)
川又書店 県庁店(Tel.029-301-1811)
〒310-0852 茨城県水戸市笠原町978-25 茨城県開発公社ビル1F
※営業時間 10:00~22:00
(「日販通信」2018年6月号「わが店のイチオシ本」より転載)