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  • 校閲者は、作家や編集の“仲間”なのか?「地味にスゴイ!?校閲ナイト!」レポート【後編】

    2017年03月01日
    本屋を歩く
    ほんのひきだし編集部 浅野
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    ――でも例えば、『校閲ガール ア・ラ・モード』のショーン(校閲部部長の茸原渚音)のくだりとか。実際はあんなこともあるんですか?

    宮木:聞いたことのある話を織り交ぜて書きましたね。自分はないです。あの、良いのか悪いのかわかんないんですが、私、裏表がないんですって。

    岩橋:そう、宮木さんはすごく「悦子っぽい」んですよ。

    宮木:『校閲ガール トルネード』で「人はあまり嫌いになれない」っていう悩みが出てくるんですけど、私もそうなんですよ。あんまりこう、うらやましいとか、そういう感情があまりなくて。だから女の子同士のドロドロとかも、想像はつくけど、自分はあまり経験したことがないのでなかなか書けないですし。だから女性の編集さんにはありがたがられます。思ったことをすぐ言うから、後で「こうしてほしかったのに……」って言わないとか。

    岩橋:それにしても、ここまでご自身が投影されたキャラクターって初めてですよね。

    ――他の作品には、モデルはいらっしゃるんですか?

    宮木:他の作品はいないですね。『校閲ガール』の河野悦子に私が投影されてるのは、時間がなくて人物像が作れなかったからってだけです。

    岩橋:ええっ、それ厳しいスケジュールへのダメ出しじゃないですか(笑)。

    宮木:セレモニー黒真珠』を書いた頃、何月かは忘れましたけど、夏くらいに第1話を書いてくれって言われて、書いたら「面白いからシリーズ化しましょう」って言われて。それで何月に本を出すか聞いたら、「来年の3月です」って。たぶんその時点であと5か月くらいしかないんですよ。発売の2か月前までには書き上がってなきゃいけないんで。

    その時は連載を2つ抱えてたんですけど、それでもどうしても3月に出したいって言うんです。たぶん、決算期で出版点数が足りなかったんだよね……。『校閲ガール』は1話書いた時からシリーズにするつもりはあったけど、「まあ、早川書房でのんびりやろう」と思ったたところへ「ダ・ヴィンチ電子ナビ」で連載することになって、本当に時間がなかったんです。

    柳下:そういうことだそうですけれども。

    岩橋:『校閲ガール』も3月刊でした、お察しください! 実際、決算との関係は、まあ……あったとは思います。刊行計画は立ててはいますが。

    柳下:でもまあ、狂うことがあると。結果的にはよかったですよね、このキャラクターで。

    宮木:そういうわけで、(河野悦子は)4割5割くらい私ですね。でもショーンのお話、あれは楽しかった~! 本当に楽しかった!

    岩橋:B面の作品ながら、A面味のあるエピソードでしたね。

     

    宮木あや子作品の「A面」と「B面」

    宮木:「A面」「B面」についてお話ししておくと、私は新潮社の「女による女のためのR-18文学賞」出身で、わりと真面目なエロ小説を書いていたんですけれども、それを書いている最中に光文社から「OLものを書いてみないか」というお話をいただいて。それで書いたのが『野良女』なんですが、あまりに下品だということで1年寝かされたんですね。男性の担当さんだったんですが、(原稿を)提出したら「面白いんですけど、これを普段から本を読む、本好きの方が面白いと思うかが分からない」って言われて。

    そのうち担当が代わって、今度はものすごく野良な感じの女の子になったんですが、引き継ぎされていなかったのか「OLものを書いて」と、同じ依頼をしてきたんです。それで「おたくで以前書きましたよ」と渡したら、読んで「すぐに載せましょう」ということになりまして。それが世に出て、「宮木あや子のB面、爆誕」と。

    5冊目が先ほど話した『泥ぞつもりて』で、その後に『セレモニー黒真珠』が出たんですけど、黒真珠がなかったら、平安耽美ものからいきなり『野良女』という大変な流れになるところでした。『セレモニー黒真珠』が間にあってよかったですね。

    岩橋:『セレモニー黒真珠』はAB面といわれる作品ですからね。

    宮木:花宵道中』とか、私は百合小説も書いてるんですけど、そういうのはA面。わははと笑いながら読めるような作品をB面と読んでいます。どっちも、どんな方向の作品であるにしろ楽しんでもらえたらいいなと。本を読んで「ああ面白かった」と思ってもらえたらいいなって、思いながら書いています。

    岩橋:「B面」には、読むと元気が出る作品が多いですよ。『校閲ガール』もそうですけど「明日も頑張ろう」みたいな前向きな気持ちがわいてくる。ドラマでもそのエッセンスを汲んでくださっていて、よかったですね。

    柳下:『校閲ガール』を読んだ方が次に読むとしたら、どの作品がいいですかね。

    宮木:『セレモニー黒真珠』と『憧憬☆カトマンズ』かな。加奈ちゃんという、ドラマだとおでん屋さんなんですが、非常にかわいい女の子が出てくるんですね。

    岩橋:たい焼きを食べている女の子ですね。

    ――「加奈ちゃんがすごく好き」っていう読者もいらっしゃるようですね。

    宮木:私も加奈ちゃん好きです。彼女って、出すと勝手に動いてくれるんですよね。キャラクターができてるので、話を進めてくれるんです。

    この子の初出が『セレモニー黒真珠』で、これには初々しい短大生として登場します。『憧憬☆カトマンズ』では、就職活動中の悩める短大生。さらに、加奈ちゃんと仲良しの女の子の住んでいる家が、悦子の住んでいる家と。そういう感じで、『校閲ガール』『セレモニー黒真珠』『憧憬☆カトマンズ』では、それぞれの人物が同じ世界でつながっています。『野良女』ほど下品ではないですので、ぜひどうぞ。『野良女』は本当に下品なんで。

    柳下:逆に興味がわいてきました。

    セレモニー黒真珠
    著者:宮木あや子
    発売日:2011年10月
    発行所:メディアファクトリー
    価格:607円(税込)
    ISBNコード:9784840142816
    憧憬☆カトマンズ
    著者:宮木あや子
    発売日:2014年10月
    発行所:KADOKAWA
    価格:693円(税込)
    ISBNコード:9784040671345
    野良女
    著者:宮木あや子
    発売日:2012年11月
    発行所:光文社
    価格:616円(税込)
    ISBNコード:9784334764890

     

    「なりたかった自分」と「向いている仕事」

    ――それではそろそろ、会場の方から寄せられた質問を聞いていきたいと思います。「どうしても筆が進まない時は、どうされてますか?」

    宮木:それが、加奈ちゃんなんですよ。B面の作品では加奈ちゃんを出せばどうにか話が進みます。A面の時は、とりあえず美術館に行くか、映画を見に行くかだな。

    柳下:へえ~~~~!

    宮木:インプットをしに行くんですね。文字以外の文化を体内に入れる。

    柳下:面白い。

    宮木:気分転換がしたいわけじゃなくて、書けなくなってる時って、自分の中が空っぽになってるか、アウトプットをしたくても何かが詰まってしまっている時なんですよ。だから、それを抜く作業か、何かを入れる作業が必要なんです。そういうの何かしら、皆やってると思いますよ。

    ――ありがとうございます。では続いて、「作家以外でやってみたい職業はありますか?」

    宮木:飲食業が好きでしたね。学生時代にファミレスで働いてたんですけど、楽しかったです。でも社員は厳しいだろうなと思ったので、バイトとしてもう一度やりたいですね。

    柳下:コミケの時に話題になる「伝説のベローチェ」ってあるじゃないですか。その時だけお客さんがめちゃめちゃ来るから、その日のために全国から精鋭の店長だけを集めるんですよ。それでハンドサインで指示を出し合って、めちゃくちゃお店が回転するっていう。僕はそういうところで、頂点を目指したいですよね。

    ――飲食のご経験があるんですか?

    柳下:ありますよ。ホストとかケーキ屋さんとか、バーガーショップのチェーンで働いたこともありましたし、大きいプラスチックの板から、ノコ目を計算してできるだけ多く部品を切り出す製造業とかもやりましたね。僕、ハンバーガー作るのが結構上手で、社内コンテストの「味」部門で1位を取ったこともあるんですよ。

    ――『校閲ガール』には「なりたい自分」と「向いている仕事」というのが出てきて、それに25歳で出会えるってすごくいいなと思ったんですが、皆さんは今のご自身の仕事について、なりたかったものか、合っている仕事かというと、どちらですか?

    岩橋:自分が向いているかは全然分からないですけど、すごく幸せな仕事だとは思っています。本当に、本づくりに携わることができて、なんてありがたいんだって思いますね。編集者ですごくいいと思うのが、自分は調整役ですけど、色んなプロの人に会うことができるんですね。その方々のお知恵を借りながら、頼りながら仕事ができるっていうのは、とても幸せなことだなと思っています。

    柳下:僕は小さい頃から文字が好きだったし、ずっと文字に関わる仕事をしてきて、今幸せですね。なりたいものになれている気がします。本音を言うと、今は会社をやっていますが、もうちょっとゲラを読みたいなと思いますね。経営者じゃなくて、プレイヤーとして働きたいなと。

    宮木:私は、向いてないと10年続かなかったと思いますね。(小説家は)そういう職業だと思います。2016年の5月でデビューから10年になったんですが、やってこられたことに我ながらすごいなと思ってます。今はほぼ毎日「やっぱり働きたくねえな~」と思いながらやってますけど、10年前までは小説家になれなきゃ死ぬと思いながら暮らしていて、念願の小説家になって。それで10年できたってことは、向いてたんだろうなって思います。

    ――本日はありがとうございました!

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